第1話 ー死亡ー
※この作品は自殺を推奨するお話ではありません
第1話 ー死亡ー
グチュリと水音が1回。
ナイフは私のお腹に沈んでいく。
昔の人は切腹で死んだらしいけど、この現代に、これだけで死ねるのかな。
そんなバカなことを考えていると、段々と目が霞んできた。
あぁ、意外と死ねるもんだな。
それが最後に思ったこと。
目が覚めたとき、私はびしょ濡れだった。
お腹から流れたのであろう血と、私が死んでいる間に降り始めたと思われる雨。
服には穴が空いているのに、私のお腹には傷一つついてなくて。
また、失敗したのだと悟る。
今回は後片付けはしなくてよさそうだと、雨で薄く広がる血を眺めて考える。
あまり長居をするのはまずいだろう。
私はひとまず家へ帰ることにした。
歩くこと数十分。
林の奥にひっそりと隠れるように私の家はある。
私はまだ学生だけれど、親元を離れて暮らしている。
この家は祖母の家だったらしい。
今はいない私の祖母。
彼女はどうやって死んでいったのだろう。
やはり、老いて衰弱していったのだろうか。
それならば、私は老いるまで死ぬことは出来ないのだろうか。
それは困る。
私は死にたいのだ。頭がおかしいと思われるかも知れないけれど、死にたいのだ。
いつか、私でも死ねる時が来るのだろうか。
今日はもう遅い。
また明日、死のう。
次は何が良いだろう。学校の屋上から飛び降りてみようか。
いや、それはダメだ。
それだと目立ちすぎてしまう。
確実に死ねる確証がない以上、この生き返ってしまう不気味な体は怖がられるだろう。
それに、死に至る傷は治るようだけれど、すり傷などの直接死に至らない傷は治らないようだ。
きっと飛び降りたらすり傷だらけになってしまうだろうから、飛び降りはやめよう。
考えては訂正して、考えては訂正しての繰り返し。
いつの間にか時計の針は12時を回っていた。
明日また考えることにしよう。
そうきりをつけて、微睡みの中に落ちていった。
後は、微かな寝息が響くだけ。
第1話 ー死亡ー です。
主人公である少女の特異体質である、死に至る傷が消えることの説明回のようなお話です。
少女がなぜこうなったか、これからどうなるかは、
まだ続いていく物語の中で明らかになるでしょう。
拙い文章におつきあいありがとうございました。
良ければコメントなど、よろしくお願いします(*´∀`)