表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
h.o's.O.way  作者: 鈴木真心
Chapter 3
19/33

3─2 sideリザ

俺の下に組み敷かれたまま、ラジアちゃんは何度も、俺の名前を呼んだ。


ラジアちゃんはわかっていない。


そんな目で、そんな顔で、俺を呼ぶことがどういうことかをわかっていない。


俺が怒っている理由も、きっとわかっていないんだ。


わかって、ねえ、わかって。

伝わって、ねえ、お願いだから。


そうずっと思っていた。

なのに今は、何故かそれが逆に怖い。


──伝わって、結果、こういう行動に出られてしまったから。


怒っていた理由よりも、ラジアちゃんの取った行動の方が怖くて堪らなかった。


ねえ、どうして。

俺は近づけないのかな。

どうして、この距離は縮まらないのかな。

どうして、こんなことになるのかな。


そんな顔させたいわけじゃない。

違うんだ、違うんだよ。

どうして、どうしてどうしてどうしてどうして。


いつからか俺は欲張りになっていて、知らない内にラジアちゃんを困らせていたのかな。


ねえ。



「……愛してる」



ラジアちゃん。



「……愛してるんだ」



届かないとわかっていて、俺はラジアちゃんの肩に顔を埋めた。

届かないとわかっていて、ただそれを呟くしか出来ない。

伝わってしまえばこうなると知ってしまったのに、離れていこうとするのに、傍にいたいのに。


涙が出そうになる。

悲しくて、哀しくて、愛しくて。

それでも、諦めきれなくて。



「愛してる」



大好きじゃ足りない。



「愛してるよ、ラジア」



言葉だけじゃ足りない。



「……愛してる」



繋がるだけじゃ足りないんだ。


だから、お願い。



「……傍に、いさせてよ……」



置いていかないで。

きっと俺は、死んでしまうから。



「……うん」



思わず顔を上げれば、至近距離にラジアちゃんの優しい笑顔があった。



「──ラジア」

「……うん」

「……愛してる」

「……うん」



気がつけば、呼び捨てていた。

ラジアちゃんは、珍しく怒らなかった。


わかってる。

ラジアちゃんの「うん」は俺の言っていることを何となく理解しただけ。

受け止めてくれたわけでも、受け入れてくれただけでもない。

ただ『わかった』だけ。



「……ラジア、ちゃん」

「うん?」



少し動けば睫毛が触れてしまいそうな距離で、俺はその夜色の瞳を捉える。



「……ごめんね」

「何が」



何がって、色々。


ラジアちゃんの指が、俺の頬を撫でる。


まだ、きっと、俺の知らない何かをラジアちゃんは抱えていて。

俺の知らないところで、泣いているのかもしれない。

泣いてはいないかもしれないけれど。

それでも。



「傍にいたいんだ」



だから、囁かせて。

言葉だけでもいいから、囁かせて。


ラジアちゃんは、その綺麗な顔でただ、笑っていた。

頬を撫でていた手はいつの間にか止まっていて。

触れそうな睫毛を伏せて、そっと、口づけを交わした。





届かない想いを沢山囁けば、いつかそれは届くのかな。


傍にいたいとたくさん願えば、いつかそれは叶うのかな。


大好きだから。

大好きじゃ足りないから。

愛しい気持ちを込めて、その華奢な体を抱き締めた。





「ねえ、ラジアちゃん」

「何、まだ何かあるの」

「……したい」



瞬間、凄い勢いで吹っ飛ばされて、壁にめり込んだところで意識は途切れた。


俺、バカかもしれない。

それでもやっぱり、貴女しか見えない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ