三、都からの影
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ケルトの旋律を流しながら読むと、文字がより深く、世界へと染み込んでいきます。
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少年は、二日間歩いた。
地平線に、黒い塔が立ち上がる景色が見えた。影が這うように、空を通って広がっていく。
丘が険しくなってきた。王国が、近い。
人々の気配が、変わってきた。深く話さない。孤独。影が長い。何かが、涙を流させている。何かが、束縛している。
噂が、風に乗って流れていた。
「歌禁止。王が決めた」
少年は、旅人に会った。恐怖の目で震えている男だった。
「行くな」男は少年を止めた。「首都は危険だ」
「なぜですか」
「歌う者を、狩るんだ。誰でも。歌う者は、許されない」
男は荷物を抱えて、逃げるように去っていった。
「王が言ったんだ。歌が、世界を腐食すると」
「世界の織物を壊すと」
少年の心に、疑問が湧いた。
もしかして、王が正しいのだろうか。
歌が、本当に危険なのだろうか。それとも、自由なのだろうか。
答えは、まだ見えない。暗闇の中。
夜が来た。焚火を起こし、少年は星を見上げた。
「星が、少ない……」
呟く。いつから、こんなに少なかったのだろう。それとも、元々こうだったのだろうか。
森の夜空を思い出す。あの頃は、もっと星があった。いや、違う。あの頃も、すでに少なくなっていたのかもしれない。でも気づかなかった。一人だったから。
多分、王は正しい。歌は間違いかもしれない。
多分、危険だ。力が強すぎて、恐ろしい。
多分、沈黙は安全で、正しい。
でも。
心は、議論している。歌を信じている。愛している。
心が叫ぶ。進めと。
頭が叫ぶ。戻れと。
どちらが正しい答えなのか。
少年は理解した。もし足を止めたら、心も止まる。
最後の夜、門前で一人、静かに座った。
焚火の前で、運命を考える。その重さを。
森の歌が、遠く、遅く、響く。記憶の中で。
王国の沈黙が、重い。空気が緊迫している。
鳥の声は聞こえない。消滅している。
風の歌は、遠い彼方へ後退している。
何が待っているのだろう。扉の向こうに。
影が叩く。心を激しく圧迫する。
少年は気づいた。これが最後かもしれない。
森には、もう戻れないかもしれない。その覚悟。
でも、進まなければ、何も変わらない。
静けさは、平和だろうか。それとも、墓場だろうか。
夢を見た。
森が歌っていた。明るい幻想の中で。魔法使いたちが踊っていた。光の中で、躍動していた。
王国が崩れ、全てが正しく終結していた。
目覚めた。
まだ夜だった。静かな現実だった。
朝が来た。最後の日の決断。
王国の門が、目の前にある。どこから始まるのだろう。この疑問は。
歌を取り戻すことは、罪だろうか。正義だろうか。葛藤が、胸を締め付ける。
王が犯したものは、何なのか。それが原因なのか。
少年は立ち上がった。
荷物を詰めた。準備。
髪を結ぶ。準備完了の覚悟。
森の記憶を思い出す。朝の歌を。過去を。
今、王国へ。沈黙が鳴る場所へ。旅路が続く。
低音が響く。地面が震える。予兆。
影を恐れる。全ての恐怖を。
でも進む。真実は近い。確信している。
理由を知る。なぜ消えたのか。真実を。
少年は最後に、呟いた。
「森の歌を、守るために」
「たとえ一人でも、戦う」
引き返せない。それが自由だ。
都からの影が、今、門に立つ。最終地点。
歌が消えた。これは運命の試練。
誰も助けない。遅すぎる。絶望が迫る。
でも引き返せない。ここから先は、支配する独裁の領域。
遠くない。塔の頭上に迫る威圧。
王国が待つ。恐怖が満たす囁き。
入る。道が導いた場所へ。決着へ。
王国の壁は、真実の扉だ。
赤髪の少年は、門をくぐる。
影の中へ、消えていく姿。
でも、目に宿る光は消えない。
歌を取り戻す、その日まで。
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