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FOREST WIZARD~赤髪の少年魔法使いの物語~  作者: Lyric of Fantasy
第一章 世界は主音を失っている

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2/12

二、歌えない魔法使いたち

読む前に、まず再生してみてください。


この物語には、専用の音楽があります。

ケルトの旋律を流しながら読むと、文字がより深く、世界へと染み込んでいきます。


▶ BGMはこちら → [https://www.youtube.com/watch?v=nLcDQyHGrVY]

村の端に、煙が上がっていた。

少年がここに辿り着くまで、何ヶ月ぶりに人間の足で歩いたことだろう。いや、そもそも人間と会話をしたことがあっただろうか。記憶にない。

家々が煙を吐いている。疲れた調べが、どこからか響いてくる。音楽ではない。ただの音だ。

人が動いている。硬く、機械のように。

村人たちは歌わない。ただ唱えるように、言葉を発している。

広場に、魔法使いたちが並んでいた。一列に、整然と。彼らは呪文を唱えている。正しく、正確に。

でも、虚しいだけだった。

少年は立ち止まって、彼らを見つめた。言葉は正しい。発音も、文法も、全て正しい。でも、魂がない。

まるで歌が消えたように。

「正確な呪文は、意味のない波紋……」

少年は呟いた。森で学んだことを思い出しながら。魔法とは、言葉の正確さではない。想いの強さだ。歌なのだ。

「お前さん、旅の者かね」

声がした。振り向くと、老いた女性が立っていた。背中が曲がり、杖をついている。でも目は、まだ生きていた。


挿絵(By みてみん)


「はい」少年は答えた。「森から来ました」

「森から……」女性は目を細めた。「そうか。まだ歌が残っている場所から」

少年の心臓が高鳴った。

「あなたは、知っているんですか。何が起きているのか」

女性は首を振った。

「知っている。でも、止められなかった」彼女は広場の魔法使いたちを見た。「あの子たちを見てごらん。呪文を唱えている。正しく、完璧に。でもね」

彼女は深く溜息をついた。

「魔法が、死んでいる」

「なぜですか」

「忘れたからさ」

「何を?」

「旋律を」女性は言った。「昔は持っていたんだよ。みんな、自分の歌を。魔法使いは歌って呪文を紡いだ。それが魔法だった」

彼女は古い本を取り出した。灰色のページをめくる。そこには呪文が書かれていた。正しく並べられた言葉。

でもリズムがない。音楽が全くない。ルールだけ。

「いつから、こうなったんですか」

「三年前だよ」女性は答えた。「王国から、お触れが来た。歌を禁ずると」

少年は息を呑んだ。

「王国が?」

「そうさ。理由は分からない。ただ、歌うことが禁じられた。魔法使いたちは従った。従わざるを得なかった。そして……」

彼女は広場を見た。

「こうなった」

子供たちも、呪文を習っていた。毎日、毎日。完璧に、鐘のように響くように。

でも彼らの目は、死んでいた。誰も言わない闇の中で、歌が欠けている。魂の場所の深みで。

老人が近づいてきた。青い目で、少年を見つめる。

「昔は歌ったんだ」老人は囁いた。「魔法が育ったんだ」

「でも」少年は言った。「それは真実ではないと」

老人は首を横に振った。

「王国が恐れているんだ。自由な魔法を」


夜、少年は村の外れで野営した。焚火の前で、老婆が訪ねてきた。

「教えてあげよう」彼女は低く、真実を吐いた。「王国が恐れているのは、歌が育ちすぎることだ。予測不能だ。所有できない」

「魔法は野生だった」彼女は痛みを込めて言った。「風のように、雨のように」

「でも王国は、支配したかった。同じようにしたかった」

老婆は少年の目を見た。

「歌を奪えば、魂も奪う。それが王の選択だった」

焚火が、パチパチと音を立てた。

「どうすれば……」少年は尋ねた。「どうすれば、歌を取り戻せますか」

「王国に行きなさい」老婆は言った。「答えは、そこにある」

「でも危険です」

「もちろん」老婆は微笑んだ。悲しそうに。「でも、お前さんは行くだろう。赤い髪の少年よ。お前の目に、まだ火が宿っている」

少年は古い呪文を試してみた。声高く、歌うように。


挿絵(By みてみん)


一瞬、魔法使いたちが息を呑んだ。広場に集まった。

光が示した。何かの予感が。

でも光は一瞬で消えた。

人々は怖がるように逃げた。村人たちも、消えるように隠れた。

「止めろ!」

「危ない!」

「襲撃を招く!」

誰かが叫んだ。

「誰からの?」少年は尋ねた。

「王国から」

恐怖が、村を支配していた。完全に、徹底的に。

少年は理解した。

正しさが、間違いだった。

自由が、正義だった。

この物語の続きは、音楽の中にあります。


▶ [https://www.youtube.com/watch?v=nLcDQyHGrVY] ←流しながら読むのがおすすめ


気に入っていただけたら、チャンネル登録もぜひ。

新しい物語が公開されるたびに、音楽も一緒にお届けします。


▶ チャンネル登録はこちら → [https://www.youtube.com/@Lyric-of-Fantasy]

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