4層 いきなり殺意マシマシ脂(汗)マシマシぃ!
「ふふふーんふーん♪」
俺、八百枝南十六歳!
夢は聖剣を取り返すこと!
今はゴブリンスレイヤーやってます!
――というわけで4層に来て絶賛マッピング中なのだが、他の探索者があまり居ない。
何故か自衛隊員が巡回している。
もしかしたらここは自衛隊員の鍛錬向きの層で一般探索者はスルーするところなのかもしれない。
何が出るのやら。
「おっキタキター!」
なんとゴブリンが湧いたのだ。この層もゴブリンらしい…………あれ、三体居ない?
剣を持ったゴブリンと、杖を持ったゴブリンと、赤い帽子でナイフを持ったゴブリン。
ははーん?
もしかして:ピンチ?
いやいや、このゴブリンスレイヤーみなみ君にかかればこいつらなんて、しゅんころよしゅんころ。
「ギャア!」
「【グギィ】!」
剣を持った……長い。ソード、メイジ、レッドキャップでいいか。
ソードが距離を詰めて上段の構え。
その横から同時に着弾するように火の魔法と思われる拳大のそれが飛来した。
「頼むぞ突っ張り棒!」
もう名前なんて覚えていないので、突っ張り棒でソードの顔面を刺突して怯ませ、冷静に魔法を回避。
スマホを取り出し、ノンルックでカメラアプリを起動。
――待て、レッドキャップが見当たらないっ!
「あっっぶ!」
とりあえずこの手合いは背後をとりたがるし、首を狙ってくると思ったのでローリング回避。
ゲームのようにはいかず、ダンジョンの壁に衝突して背中が傷んだ。
急いでカメラを連打。
またの名をフラッシュ連打戦法。この左手の親指は死んでも止めねぇぞ!
露骨に嫌がるゴブリン、追撃に魔法が飛んでくるが狙いが雑で悠々回避。
先にレッドキャップに接近、する前に突っ張り棒をレッドキャップの顔面にシューッ!
超エキサイティン!
してからナイフで隙だらけの首を切った。
「てめぇの帽子を剥ぐ遊びは今度してやるからな!」
ヒヤッとさせやがって。
まったく、次はメイジだ。
俺は道の中央に流れる下水の向こう側にジャンプして、ソードから距離をとりつつメイジへ走る。
「おらおら! どこ狙ってんだノーコンゴブリン! そんなに俺のフラァッシュ(ねっとりボイス)が嫌か? おん?」
「グギャィ!!」
「近距離で魔法撃てる度胸持ってから出直してこい!」
そう言って俺はメイジを仕留めた。
最後はソードだ。
あいつ、最初はそこまで分析できなかったし、する余裕もなかったが、足が普通の棍棒ゴブリンより遅い。
逃げ回りながらゴブリンがスタミナ切れするのか試したくもあるが、正直その最中にまた三体も湧いたらダルすぎる。さっさと仕留めよう。
俺は敢えてソードの接近を許した。
フラッシュをやめ、ナイフを口にくわえてフライパンに持ち変える。
「クゲギッ!」
そして真っ直ぐ振り下ろした斬撃を、横に回り込むようなサイドステップで回避。そのままソードの剣にフライパンを思いっきり叩きつける。
――ゴーン!!!
と金属のぶつかり合うド派手な音を撒き散らした。
「グギォャ!!!?」
「耳が!!」
思ったよりうるさくて俺の鼓膜にもダメージが入ったが、攻撃を中断するわけにもいかない。
直ぐにソードの眼前でスマホを構えて、フラッシュ。
醜く短い悲鳴と同時に、フライパンを捨てて口にくわえていたナイフをペッしてキャッチ。
そのまま首を抉るように刺した。
薄黒い霧になって魔石が落ちた。
とりあえず危機は脱したようだ。
そそくさと魔石や、転がってるフライパンと突っ張り棒を回収した。
武器を新調しよう。うぅ、財布が……。
よし、こうなったら許さんぞゴブリンども。
モンスターは魔石の他に低確率で素材や、モンスターの使っていた物も落ちると、試験で出た。
ソードゴブリンから剣を取り上げるまでやってやらぁ!
――明日ね。うん、今日は無理。疲れたしフライパンも壊れたし、ナイフも限界が近いから。
明日は日曜日で、次の日学校もあるからあまり長居はできないが、狩れるだけ狩ってやろう。
俺は一度ゴブリンスレイヤーの名を返上し、明日の俺に預けて帰途についた。
◇
ダンジョン協会本部、買取カウンター。
俺は笑顔の可愛い受付の人に冷たい現実を突きつけられていた。
「はい、3538円です」
「……マジっすか?」
「マジです」
「マジっすかぁ……」
確かに解体ショーして遊んでてあまり数は狩れていないが、そもそも湧きも少ないのにこの収益か。しかも今日のゴブリン三兄弟のも合わせてこれだからなぁ……。
俺がクソスキルじゃなかったら、命の危機とか魔女のキ〇とか訪れなかっただろうからアレだけどさ。いや片方来てないけどね。
「あ、そういえば明日自衛隊の皆さんで12層に挑戦するらしいので、4層以降は潜らない方がいいですよ」
「自衛隊員さんがいないと何かあるんすか?」
「はい、4層以降は結構湧きが早いらしくて、一般開放されてしばらく、というか基本的に今後もですが間引きして安全を確保されているんだとか」
「へ、へぇ? 間引きですか(ソワソワ)」
「ですからよっぽどの強スキル持ちのパーティー以外は危ないので注意させていただいてるんです」
「まあ俺ソロですからね」
「はい。まあソロで4層のゴブリン三体を倒したという報告もありませんから、絶対に潜らないでくださいよ? というか協会の方でパーティー募集探してみましょうか?」
量り売りだからか、俺があの忌まわしき武装ゴブ集団を倒したことは分からないようだ。報告した方がいいのだろうか?
ま、いっか。まだ安定して勝てるとも限らないし、やってみろって言われて死んだら恥ずか死する。死んだ上に恥でも死ぬ。
そしてパーティーの方ももちろん。
「パーティーは大丈夫です。しばらくは一人でやってみますよ。安全第一で!」
「そうですか。本当に死なないでくださいよ? ただでさえ継続してダンジョンに潜る人って多くないんですから」
それにしても、この人暇なのだろうか?
時刻は23時半。この時間に出てくる探索者も少ないからかな。
えーと名前は“司條”さんか。名札を見てはいるものの……うん、ご立派で!
雰囲気大学生くらいなのだろうが、見た目はちんまりしていて、これが噂のロリ巨に――
「八百枝さん?」
「ひゃっ! はい!」
「……どこ見てました?」
「世界の真理を、少々」
「えぇ……? なんでそれ本当判定……?」
「ん? 判定?」
「オホンッ、こちらの話です。というわけなので、明日は自衛隊の方も出払うことになりますから、くれぐれも無茶しないでくださいね? お姉さんとの約束ですよ?」
司條さんはジーッとその明るい髪をまとめたお団子を揺らし……いや、揺れてないな。
ともかく疑うような目で小指を出してきた。
「はい! 俺のスペックでどうにもならないような無茶はしませんとも!」
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます」
「「指きった」!」
まったく、お子ちゃま扱いしおって。
しかし、俺は俺のスペックでどうにもならないような無茶はしないとは言ったが、どうにもならないこともない無茶はする。
間引きされてない武装ゴブどもの巣窟、剣を落とすまで終われまてんができる!
「ふふふ、ふはは……ふぅ。明日の準備しよっと」
「(色んな意味で大丈夫かなこの子?)」
俺はロリきょぬー受付嬢さんから、なぜかいちごミルク味の飴ちゃんを貰って帰るのだった。




