3層 半ライスさん、爆誕!
翌朝、少女が起きていた。しかも勝手に俺の漫画を読んでいる。
「おざぁーっす。てか、名前聞いてませんでしたね? 俺は八百枝 南です」
「……名前などない。もとより不要なものだ」
めんどくさいな。
適当にあだ名で呼ぼっと。
「じゃあ、ハインラスで。略してハインちゃん」
「……ハイン、か」
うん。適当に半ライスのアナグラム。世界の半分Tシャツ着てるもんだからつい思いついちゃって。
「さて、ハインちゃん! 我が友よ! 俺には大いなる野望がある!」
「や、野望だと?」
「ああ。(スキルを寄越した)神をぶっ飛ばし、誤った摂理を正さねばならぬのだ」
こういう手合いには同じノリでいったほうがいい。
「……そうか。貴様にもそのような野望があったとは」
「まーねー。というわけで、友よ。この家に長く居座らせるわけにもいかないのだー」
「あいわかった。では我も自身の復讐のため、準備を進めるとしよう。また友として、同志として語り合えることを楽しみにしている。さらばだ、ミナミ」
「おう、サラダバー」
何かよく分からないが帰ってくれたのでよし。
俺も身だしなみ整えてからホームセンター寄って昼くらいにダンジョンに入ろっと。
◇
というわけで昼のダンジョン。
早速ゴブリンと戯れるため、スライムとネズミは無視して3層です。
昨日できなかったマッピングしつつ、しばらくしてようやくゴブリンが湧いた。
「いくぜ、俺の新たな相棒ども! グングニル! バルムンク!」
俺はグングニル(突っ張り棒)を腰の新調したベルトから抜いて長さをマックスにした。
「ギュャア!」
棍棒片手に突っ込んでくるゴブリン。
振りかぶったタイミングに合わせて突っ張り棒で、リーチを活かして先制攻撃。
ゴブリンの予備動作を刺突でキャンセル。要するに棍棒を持つ手を突いて遅らせた。
「食らえ、バルムンクアターック!」
俺はバルムンク(鉄製フライパン)でゴブリンの顔面を真正面から殴った。
倒れ込んだのを見計らい、ゴブリンの両手を足で踏みつけて拘束。その隙にリュックから釘を取り出して、足に打ちつけ固定した。そしてもちろん手も。両手両足、オマケに腹をそれぞれ数本の釘で縫いつけた形である。
「へっへっへ……いい面すんじゃねぇか。“くっ殺”って言ったら解放してやってもいいぜー」
「グギッア!!」
「言えねえよな、ゴブリンだから。ヒャッホーイ! 生物の時間だぜ! 俺の未来の保健体育のためにも簡単に死ぬなよ!」
そういう訳でゴブリンの弱点を調べるため好き放題(語弊)させていただきました。あ、いただきましたって言っても食べる方じゃないよ?
そもそも丸かじりしか食べる方法ないし、不味そうだし。
「光と斬撃系に弱いっぽいな。ついでに首も人型らしく弱点と。おまけに耳と鼻も効くらしいな」
だからフライパンは武器として厳しいかもしれない。新品なのにもう凹んじゃったし。俺の3000円を返せ。
3000円の恨みによって遂に息絶えたくっ殺ゴブリン騎士の魔石を拾って、効率的な狩りを考える。マッピング自体はもうすぐ終わるし、ゴブリン以外出そうにないから次のを倒したら下の階に行こう。
そうして出くわしたゴブリン戦。
くっ殺ゴブリン騎士の敵討ちと言わんばかりの威勢で突撃してくる。よく考えたらさっきもこんな感じで突撃してた気もする。
「食らえ太〇拳! からのグングニル! えーと、ナイフ!」
スマホのライト機能で怯ませ、突っ張り棒で攻撃してくる手を横に逸らせ、そのまま距離を詰めて切れ味の鈍いサバイバルナイフで首を掻き切った。
ひるみ&安全確保&クリティカル弱点攻撃、我ながらゴブリン対策完璧である。
「カハハ! 何匹でもかかってこーい! 我、ゴブリンスレイヤーぞ?」
半ライスちゃんが感染ったのかもしれない。同志だからね、しょうがないよね。
このまま下の階へレッツラゴー!




