3層 痛感、これぞまさしくファンタジー。
「コホンッ、じゃあ私から改めて名乗るよ! 藤根 兎渡香、忘れないでね」
「矢園 雪奈です♪」
「蛇字丸 友」
順番に元気ポニテ、清楚、チビギャルだ。
「…………あ、はい。俺は八百枝 南っす」
「こっちは隣の席だから知ってるってのー! むすぅ……」
ごめん、全員名前個性的だからもう君の名前忘れたよ。
でも蛇字丸は覚えてる。なんたってカッコイイから。
「しっかし、あの八百枝がこんなだとは」
「蛇字丸さんあのって何、俺女子の間で腫れ物扱いされてる感じなの? どうなの蛇字丸さん」
「あんま苗字で呼ぶな! ダサいだろ!」
「なんでだ蛇字丸さん! 最高にクールだろうが! 蛇字丸さん!」
「殺す……!」
とは言いつつも顔を赤らめながら睨むだけの蛇字丸さん。そこに、蛇字丸さんのお供の清楚な方が先程の話に補足を入れてくれた。
「ちなみに八百枝君は無口でクールなので密かに人気あるのですよ。だから意外と……その、親しみやすい? 感じで驚いた、という意味なんです」
なるほど、「黙ってれば美人」の男版か。残念イケメン……いや、イケメンではないな。残念フツメンだ。…………ただの残念なヤツになってない?
まあいいや。モテようがモテまいが、今は如何ともし難いやむを得ぬ事情(忌まわしいスキル効果)があるからそれどころではないのだ。
「ふーむ、で、なんの話だっけ?」
「本題は終わったよ! という訳でこの大天才兎渡香ちゃんは素晴らしいアイデアを思いついたのでした! そう! 南っちも我らがパーティーに参加しないかね!」
ぱーてぃー?
…………仲間になれと誘われているのだろうか。わーお、無理無理。いきなり大して仲良くもないクラスメイトの女子三人と命を預け合うなんて、普通に無理。というか俺のスキルでは大した役に立てないので仲間を作らないと決めているのだ。
だから答えはノー、なのだが――
「今日だけお試しってことなら是非」
「ホント? よぉし! 気合い入れて正式加入まで引き入れるよ、雪ちゃん、友ちゃん!」
「おー」
「はぁ、今日だけならまぁ」
どうやら決まったようだ。
俺はなぜか嫌そうな表情の蛇字丸さんの肩に手を置いて笑いかけた。
「よろしく、蛇字丸さん」
「うぜぇ……」
何はともあれ、これは良い機会だ。他の人がどのようにダンジョンに潜るのか、どのような戦い方をするのか観察できる。
四人で喋りながら(距離感が掴めないのか、主に俺への質問とその深堀りばかりだが)、ネズミともなかなか出くわさないので、3層へ降りるのだった。
悪いが、仲間にはならないし、その技術は盗ませてもらおう。減るもんじゃないしいいよな。
――なんて考えは、彼女らのファンタジーバトルによって吹き飛んでしまった。
「……【聖女の旗】【攻勢聖域】」
「【五行拳・焔】!!」
蛇字丸さんが光の旗を出し、周囲に光のフィールドを展開、元気なポニテが炎を纏った拳で、3層のモンスターである、緑色の醜い人型化け物ことゴブリンさんを消し飛ばしてしまった。
多分だけどかなりのオーバーキルだろう。
「どうどう? 仲間になりたくなった!? ちなみに友ちゃんは最初からスキル二つ持ちですごい火力サポートしてるんだよ!」
ポニーテールを揺らしながら子犬のように駆け寄ってきた。悪いが俺は猫派だ。そんな可愛いドヤ顔見せられても動じることはない。
――なでなで。
「っ!!? ななななんで急に撫でて」
「うう……しくしく」
「しかも泣いてる!? ……いや涙出てないけど!」
「実家の亡くなったイッヌを思い出して…………うん、落ち着いた」
「急に落ち着くな!」
【平常運転】のせいか涙は出ないし、悲しい気持ちもそこまで大きくならなかった。
しかし、やはりというか、なんというか。
何で俺は【平常運転】なんてのを押し付けられたんだ。俺もファンタジーパワーでゴリ押ししたい。何が悲しくてスライムをティッシュで倒したり、ネズミの耳元で絶叫ボイスを聞かせてやらんといかんのか。まあ俺にとってはそれが効率的だからいいけどさ。
「なんか腹立ってきた」
「南っちの情緒が怖いよ……」
てかこの人なんでいきなり「南っち」呼びなんだろう。俺をた〇ごっちの仲間だと勘違いしているのだろうか。
「き、急に黙って何――」
「世界も広いな……色んな性癖の方がいらっしゃるようで」
「あらぬ誤解が生まれてる気がする……!」
「大丈夫大丈夫。異性を〇まごっち化してキュートアグレッションを強制的に活性化させる性癖もきっと変じゃないから」
「何を言ってるか分かんないけど、全部間違ってることだけは分かるよ!」
「あいつら楽しそうだな――っと追加一名様。雪奈任せた」
「ふふ、お任せを」
どうやらゴブリンがまた出たらしい。
今度は清楚さんが戦うらしい。彼女は背中にある弓をとり、何も無いところに左手を添えた。
そのままグイッと見えない何かを引いた。
「【零の矢】♪」
直後、ゴブリンの上半身は跡形もなく消し飛んだ。
なるほど、このパーティーは、蛇字丸さんがスキルで火力を上げてポニテワンコが殴って、おっかな清楚が見えない矢で後衛から援護する感じか。
そうなると俺は――
「どうでしょう? 八百枝君のお眼鏡にかなったでしょうか?」
「正式メンバーになるよね! ね!?」
「まだそいつの力見せてもらってないけど?」
「いいじゃん! 大丈夫、私達の戦闘を見て驚いてた通りすがりの人達と違って驚いてないってことは、南っちにとってもこれが普通ってことだよ!」
なんとも見当違いな推測に、俺はニコッと笑顔を向けた。
「皆さんの今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます」
仲間になると言うとでも思ったのか、喜びかけたまま、ポニテワンコは満面の笑みを固めてしまった。
――いや無理。
巻き込まれないように後ろの方で声援くらいしかできないだろ。
「そういうわけなんで。じゃあまた学校で」
これ、異性をフッたカウントに入るかな?
ふっ、モテる男は罪深いゼッ!




