13層 質問コーナー(殺戮)
そんなことをしていると、リザードマンの群れがこちらに接近しているのが見えた。
「どこに行こうというのかね」
――上位チャット(一部翻訳済み)同時接続数:256,113――
:向かってきてんのよ
:別にやつら逃げてないですよ、大佐
:草
――――
「三分間だけ待ってやる――おい、待つから! くそが! ノリ悪ぃな!」
ちょっとムカついたので転移して小回りの効くナイフ二本で連撃をお見舞いしてやった。目に。
「バルス! さあ、あのセリフを言え!」
「レアァ!」
「惜しい! ……そろそろ怒られそうだしやめとくか」
――上位チャット(一部翻訳済み)同時接続数:258,821――
:えぇ……
:初見です。キメてます?
:うわあ! 急に落ち着くな!
:もうこの人色んな意味でこわい
:スンッ( ˙꒳˙ )
:約25万人を置き去りにする男
:こ、これが人類最強!
:お遊び半分で狩られるリザードマン君に合掌ㅅ
――――
しっかしコメント速いなー。チラッと見ただけでは内容まで入ってこない。配信主の方で何か調整は……おっ、サイトの機能で、視聴者が質問を匿名で投げる機能がある。これを何も書いてない概要欄に置いてっと。
スマホのスペック的にマッピングできないし、一度質問コーナーしながら周回するか。やってることゲーム配信者と一緒だな。敬語は……まあいっか。こんなにいれば歳下もいるし。年功序列、大事!
「というわけで質問コーナーを概要欄に置いたんでよろ。質問集まる前に聞きたいんだけど、君たちこんな平日にどっから湧いたん? 俺何の告知も宣伝もしてないけど」
――上位チャット(一部翻訳済み)同時接続数:283,192――
:何が「というわけで」なのか
:質問機能パンクしない?
:ワイは掲示板から
:ダン協の公式アカウントが共有しとったぞ
:ダンジョン協会の投稿で
:SNSやれ
:協会本部のロビーのクソデカテレビで流されてんぞ
:我々は人の生活圏にある日本のダンジョンに注視しています。
:このサイトリアルタイム自動翻訳機能もあるし、色んな国の大使館の人が拡散してたぞ
ダンジョン協会【公式】:拡散させていただきました
:みんな質問してるのかコメント露骨に減ったな
:収益化したらすごいことになりそう
:ちくわ大明神
:平日……?
:ここ見てるやつは昼休憩かサボりかこっそり見てるかニートだろ
――――
「おー、公式さんだ。目印つけとこ。俺の出すやつは全部フリー素材だから好きに使ってくれていいんで。宣伝にでも注意喚起にでも」
俺のようなクソスキルのせいで苦境に立たされている人の役に少しでも立てれたら本望だ。
――上位チャット(一部翻訳済み)同時接続数:283,932――
:注意喚起……
:うん、注意喚起とかね
ダンジョン協会【公式】:ありがとうございます!
:これあれだ、最初の研修とかでダメな例の映像で流されるやつだ
:フリー素材ってことはさっきのやつで大佐のMAD作っても?
――――
「こうなったらやけくそだよなー。ネットのおもちゃから逆戻りはできないし」
てか許可しなくてもインターネットの連中はおもちゃにするし。デジタルタトゥーなんて、大佐欲の前では無力なのだ。
っと、ランダムで抽出された質問がやっと選出された。
「質問来たなー。ついでにリザードマンも。ほれ、バルスバルスー」
目潰ししつつ適用ボタンを押すとコメント欄に質問が全体にも見えるように表示された。
『パンツはトランクス派ですか、ボクサー派ですか。生着替えのファンアートを描きたいです』
「あんたマジかよ……」
――上位チャット(以下略)――
:草
:初手www
:もっと聞くことあるだろ笑
:うおw
:リアルな人間のファンアートとかあるんか(困惑)
:よりによってそれかい
:これ選んだ方の売れ行きが爆増するだろ、人類最強が穿いてますっつって
:えぇ……
:流石に困惑するよな
――――
「これじゃあブリーフに人権が無いみたいじゃないか! 俺は! 敢えてのノーパンだ!」
生着替えのファンアート? でノーパンなら流石に描けないだろう。ふふん、スケベな質問なんてするからだ。本当はボクサーなんだけどね。
――上位チャット(以下略)――
:ブリーフ草
:だめだこいつw
:はい猥褻物陳列罪
:やばいこの人の場合冗談もガチもありうる……
:ありがとうございます! モザイクで描きます!
――――
ん?
なんか質問主っぽいコメントあったような……気のせいか。よし次つぎー。ついでにリザードマンのおかわりもギッタンギッタンにして処理。
『何かキメてます?』
「強いて言うならスライム?」
――上位チャット(以下略)――
:でしょうね
:ど、どういうことだってばよ……
:知らない人は「スライム愛飲ニキ」で検索
:知ってた
:(尚毒)
――――
『学校は?』
「今日はサボ……あ、よく見たら通知欄に学校から着信が……コホンッ! 今日は……うーん、変な宗教の人に絡まれて登校を断念せざるを得ませんでしたまる」
――上位チャット(以下略)――
:今サボったって……
:ほんとにござるかぁ?
:あー、でも実際増えてるしな
:普段行ってるならええことやで
――――
『好きな女の子のタイプ!』
「昨今は色々厳しいから女の子限定はどうかと思うよそれはそれとして巨にゅ……優しい子」
――上位チャット(以下略)――
:おい
:きょにゅ……まで言ったらもう逃げ道は無いだろ
:勢いに草
:配慮〇
:φ(._. )メモメモ
――――
『SNSはやってますか? また、配信の予定等のスケジュールは決まっていますでしょうか』
「ないです、今後も。自分で見つけろください。あと生配信の頻度はそこまでです。そもカメラ普通に邪魔だし」
――上位チャット(以下略)――
:ソロだからなぁ
:戦場カメラマン、いけないかな
:実際ついていけるレベルならカメラマンとしてより探索者の方が向いてるだろうしなー
:毎秒配信して
:たまにはやってくれ
――――
「たまにはやるよ。お! ドロップゲッツ! しかもダブルやんけ……同じモンだけど」
質問に答えながら次々とリザードマンを亡きものにしていると、ヤツらの鱗が落ちた。
間違いなく素材系だろう。
「周回はこんなとこでいいかな。階段見つけ次第今日は終わりにしマッスル」
他愛ない質問から面接みたいな質問までテキトーに答えて小一時間。俺はついに――
カチッ。
「お?」
――上位チャット(以下略)――
:ん?
:今変な音しなかった?
:床、スイッチじゃない?
:わ、わわ……
――――
「罠だ!!」
ついに、罠を踏んだ。
そして足場が消失する――。




