8層 ネズミってリアルだとキモいよねって話
「酷い目に遭った」
まさかあんな高速でカッ飛ぶとは。
おかげで全身打撲してひと休みすることになった。すごろくじゃないんだから。
ともかく、親方のスキルでトンデモ武器になってるのは分かったので探索再開だ。振り回すには重すぎるから、今後の運用はジェット発動からの即停止でやらないとな。
【命の楔】を使った転移でこのクソデカ武器を貫通させるのもありだが、しばらく内部からの攻撃は縛ろうと思っている。
移動時間の短縮のために時短分の寿命が持ってかれるのはプラマイゼロだからいいが、攻撃に使うのはよくない。というか今後のことも考えると基本は移動でしか使わない方がいいだろう。
もちろんいざとなったら使うので縛りとは言えないんだけどね。
「お、第二村人発見。別の種類のモンスターが出るのは初だな」
今度は2層で出たネズミの巨大バージョンが出た。ビッグネズミと呼ぼう。ビッグマウスだと別の意味になるからな。
「しゃあ、初陣テイクツー!」
今回新たに作ってもらった“塵舞”以外にも、もう一つサブウェポンを用意してもらったのだ。
「そーい!」
俺は謎金属でコーティングされた相棒、突っ張り棒をネズミの眼球に突き刺した。
槍としての性能はないが、とにかく頑丈なので力任せに潰せた。
「トドメだ! “塵舞”! ……あれ、これ引けてるよな? ふん! そい! ……あっれー?」
レバーを引いているが、スカスカと空回りしているような音が出てジェットが機能していない。
「もういい! こうなりゃ撲殺じゃい!」
役たたずは地面に突き刺して名も無き突っ張り棒マークIIでボコボコにしてビッグネズミは討伐した。叫び声に過剰に反応していたし上の階層のネズミと弱点は同じらしい。
俺は魔石を回収し、ただの鉄塊となった役たたずを背負って黙々とマッピングを再開した。
またネズミと出くわしたのでこれもまた撲殺。
次はゴブリンキング軍団とも出くわしたが。鉄塊を無理やり振り回して蹴散らした。ヤツらの中央に転移してぐるっと遠心力パワーでやれば問題なく倒せたから探索は続ける。ちょっと重さで肩が外れたが、はめ直して少ししたら痛みも引いたのでヨシッ!
数回戦闘をこなしつつ、マッピングはつつがなく完了した。時刻は夕方ちょい前。
9層チラ見してから一旦親方のとこに転移して戻ってこようかな。本来なら入退出は記録しなきゃらしいけどバレなきゃセーフ。いちいちやってたらめんどくさいからね。
……そういえば協会に来るまで普通に徒歩だったな。人目のつかないところにマーキングしておこっと。
そんなこんなで下へ続く階段のところへやってきた。
「お?」
――地面に巻物が落ちている。
マッピング中は見てないので直近のものだろう。落し物か、はたまたダンジョンの隠された神秘か。とりあえず開けて読んでみるか。ダンジョン内で信書開封罪が適用されるかは不明だが、これもまた|バレなきゃ犯罪じゃない《バレセフ》だ。
巻物を開けると、そこから発生した薄黒い霧が俺の胸の中に入っていった。やがてモンスター討伐時のように巻物も消えていった。
「あ、ふーん。なるほどね」
【平常運転】
【命の楔】――【楔指定】【割り込み】
【罠作成】
確認してみると、なんかスキルが増えていた。
これあれだ、スキルを覚えるアイテムだ。
嫌な汗をかきながらダンジョンがもたらした幸運だと自分を納得させていると、焦った様子のそそっかしそうな自衛隊の人がキョロキョロしながら歩いてきた。
「すみません! そこの方!」
「ひょ、はい!」
「どこかで巻物のような物を見かけませんでした? 12層にあった謎のアイテムを預かっていたのですが紛失してしまいまして……」
「巻物スカー、へー、大変スネー」
「ものによっては減給らしくて……!」
「あ! あれじゃないっすか! よく漫画とかだとこういうパターンって少ししたらダンジョンが吸収してエネルギーに変えちゃう、みたいな……へへ」
頑張って目を逸らさないように口から出まかせで誤魔化す。
「なるほど……ゴミの吸収はありませんが、ダンジョンが用意したものは放置すると回収する可能性……ご協力感謝します! どちらにせよ報告しないと!」
「う、うす! 頑張ってつかーさい!」
……ふう、去ったか。
下手なモンスターより人の方が怖いな。人というより法律か。すまないねダンジョンくん。これ以上君に濡れ衣を被ってもらうことがないといいんだけど。
トラブルはあったが、色んな意味での拾い物は有効活用しないとな。
「というわけで先に検証タイム! ゴブリンさーん! ネズミさーん! 今行っくよーん!」




