8層 新品ピカピカニューオレー
「よしっ!」
新しい装備を新調し……あ、頭痛が痛い表現になってる。ともかく、ちょっと奮発してオシャレした自分を鏡で眺める。
焦げ茶のいい感じの髪をしたイケメンがいる。あ、俺か。
まあイケメンは言い過ぎとしてだ。黒いニットに白いパンツ、なんかいい感じの手触りの上着? ジャケットって言うんだっけ?
まあそんな感じの冬装備に身を包んだ俺は、何回かポーズを決めて満足し、家を出る。
背中には新たな武器を背負っている。
それ用のベルトをくれた親方には感謝しかない。ダンジョンの収入が増えたらたんまりご馳走を奢ろうと思う。武器をタダでくれたのだから出世払いというやつだ。
早くモンスターをこの新装備で蹴散らしたくて仕方ない。ルンルン気分でスキップしながら協会本部へ到着した。
「ふふふーんふーん♪」
「バカな化け物……!?」
「え?」
「あっ」
入った途端唐突な罵倒が俺を襲った。
昼だから今はダンジョン内にいる人が多いのか周囲には他に人も居ない。間違いなく俺に向けられた言葉だろう。
罵倒の主は眼鏡をかけた、いわゆるミディアムヘアの同い年くらいの女子だ。髪色も俺と似たような焦げ茶色で真面目さが窺える。俺と同じで!
「えっと、喧嘩のセール中ということでよろしいか?」
「なっ、違います! ちょっと、その……間違えただけです」
何を間違えたのだろう。
まぁでも、言葉を間違えて寝る前に反省するとかよく聞くしそういう類のミスかな。
じゃあ気にせずさっさとダンジョンに行こう。
「それじゃあ俺は今からダンジョンなんで。失礼しまーす」
「あの!」
「はい?」
「ありがとうございました!」
「あー、気にしないでください。俺は俺がやりたいように、好きに生きてるだけなんで」
「…………好きに生きてる……謙遜とは思いますがお優しいんですね! 本当に、ありがとうございました!」
「あっ、ウッス!」
そうして俺はそそくさとダンジョンへ入って7層へ転移した。
「やばいな……」
感銘を受けた空気に、おそらく無自覚の上目遣い。こんなの、こんなの――
「誰ですかって聞けるかっ!!」
焦げ茶のミディアム眼鏡女子……本当に記憶にない。よく分からずテキトーに返事したのが良かったかは分からないが、次会う時がきたらどうしよう。
「あれか? 実は忘れていた結婚の約束でもしてた幼少期の幼なじみとか?」
あるな。俺ってラブコメの主人公だったんだ!
ダンジョンでは電波も通じるので、早速海外にいる親に通話をかけた。
「あ、母さん。俺って昔引っ越す前に結婚の約束した幼なじみとかいたり――え、引っ越ししてない? じゃあお隣の幼なじみが引っ越したとか……幼なじみも存在しない? いやいや、漫画の読みすぎじゃないって。うん、うん。はいはいちゃんと食べてますよー。ほいじゃー」
そんなの居ないらしい(絶望)。
つまりはあれだ。あの人、新手のロマンス詐欺だ。ああいうのって少し年の食った人にやるもんだと思ってたけど意外だ。
「はぁつっかえ。覚悟しろよゴブリンども!」
精神的にふんだくられた気分になったので、この恨みはゴブリン集団に向けて――遭遇しなかったので8層へ降りた。
「親の顔より見た下水道。何が出るかな何が出るかな、何がでるかなジャジャジャジャーン」
例のごとくマッピング開始。
しばらくして敵と遭遇した。
これもまた親の顔より見たゴブリン集団。もっと親のゴブリン見ろ。……親のゴブリンって下ネタ?
「っと、昨日のこともあるし舐めプは厳禁だな」
ちゃんと敵の姿を確認。
ソードゴブリン……その他もろもろ総勢十体。イツメンにジェネラル、そしてその集団の最後尾に王冠を被ったやつがいた。
あいつはキングと呼ぼう。
「よっしゃ、背負ってて肩が凝ってきてたんだ。出番だぜ、相棒!」
俺は担いでいた武器を両手で構えた。
見た目は大剣。
片刃の刀身を支える真っ直ぐ伸びた管と、それに重なる管が数本、段差状に折れている。
「ジェットブースター付き銃大剣、銘は“塵舞”。一撃でどんな相手も仕留め、その場には塵が舞うのみ!」
俺はそれを頑張って横に向けてプルプルした腕で、起動レバーを引いた。
直後、ジェットが噴出。
そのままとんでもない速さで前方のゴブリン共をキングともどもまとめて真っ二つにし――
「ああああああああぁぁぁぁ!!!」
途中で止められず壁に激突してしまったのだった。




