7層 ケロッとして、漢談義。
「――はい、特に怪我はないですね」
「ほ、ほんとに本当ですか……?」
「貴女がそれを聞く意味は無いと思いますが」
「いえ、事情を聞いていたので絶対見えない部分で無理をしてると思っていたので……」
ここは協会本部の医務室。
下手な病院より大きいそこのお医者様に、保護者と一緒に来ていた。
あの後帰還してる間に怪我も治ったので、普通に買い取りカウンターに行ったら、大怪我していると自衛隊から連絡があったらしくドナドナされて今に至る。
かくいう俺は食いかかる司條さんをクールに宥める。
「まあまあ……もむもむ……元気なんですし良いじゃないですか……もむもむ……ほら、俺知り合いの聖域で回復されてたんできっとそれですよ……もむもむ……」
「食うな!」
「あ、欲しいんですか?」
「要りませんっ!!」
このポテチ美味しいのに。
協会本部は24時間営業のコンビニが探索者向けに格安であるのが嬉しい。
「あー、八百枝さん。お菓子は看護師さんがいるとこでは食べないでね。厳しいから」
「はーい」
「なんて報告すれば…………」
優しいお爺さん医者にもポテチをおすそ分けしつつ、大学生なのに社会人みたいな悩みを浮かべてる可哀想な司條さんに一応助け舟を出しておくことにした。
「真面目な話、俺のスキル、自己治癒が早くなる系の効果も内包されてるみたいなんで……もむもむ」
「ふむ、真面目な話、かすり傷のひとつも無いからそのまま報告すればいいでしょう……はむ、やはり美味しい」
「…………はあ。私もポテチください」
――こうして土曜の朝を迎えた。
無茶するなと再三の注意を受けて少ししょんぼりしながらも、俺は協会本部の武器防具を販売している所へ足を運んでみた。
どうやら今回のバフ盛りジェネラルの討伐報酬が自衛隊の報告を受けて出るみたいで、懐がホカホカ(予定)なので今こそファンタジー武器デビューの良い機会だ。
え? 防具? 今回が異例だっただけで、ソロで庇う場面なんて無いから要らんだろ。転移で避ければ万事OKってね。
「お邪魔しまーす」
早朝ということもあって店員さんはパッと見居ない。遠慮なく見て回ることに。
剣や槍、ナイフなどメジャーなものは専用のコーナーが設けられており、ショーケースに並べられている。衣装の細かいオサレなものからシンプルなもの、なんか呪われそうなものまで色々ある。
見てるだけで日が暮れそうなレパートリーでワクワクする内なる男の子を抑えつつ――いや、無理だからはしゃごう。他にお客さんもいないし、店員さんも表には居ないからね。
一瞬触れた状態で転移させたらとか思ったりしたが、俺は極々善良な一般市民なのでスキルの悪用はしない。
「ほー、わー、おー……やばい全部欲しい。完全武装ミナミくんになりたい。でもうーん……」
分身スキルを習得したらソードミナミとかで軍隊を作りたい。いや、戦隊モノみたいな感じのノリもありかも。
ああでもないこうでもないと、イカした武器を見てそれを使う自分に思いを馳せているとじっと見定めるような視線を感じた。視線の先を辿ると、そこには鋭い眼光でこちらを睨んでいる(ように見える)六十代くらいのお爺さんがいた。
何か気に障ることでもしたかと記憶を巡らすも、心当たりはない。というかたぶん初対面だ。こんな頑固な職人みたいな仏頂面のご老人なんて――職人?
言われてみれば(誰も言ってない)気難しい武器職人っぽい。いや、絶対そうだ間違いない。
「そこのお前、ここの武器はどうだ」
どんなキャッチーな話しかけ方をしようか考えていると、意外なことに向こうから接触してきた。
俺は一瞬適当なお世辞を考えるも、素直な感想しか思いつかなかった。別にここの武器を褒めたからといってご老人が喜ぶとは限らないし。
「少し足りない、って感じですかね」
「ほう?」
続けろ言わんばかりの眼光、長男じゃなかったらチビってたね。怒っているようには俺には見えないが、普通に怖い顔だ。人を殺してそうな目ってやつだ。
「性能は素人なんで知りませんけど、遊び心がないというか……外見は凝ってるけど使い道が似たようなものばかりでロマンが無いというか……無い!」
「…………そうかそうか。ここの武器の九割は儂が作ったモンだ」
「え゛っ」
「だからこそ、気に入った。ここの連中は面白くもねぇ量産品を欲しがりやがる。軍もだ。お前、名前は?」
お、おお……?
「八百枝南っす」
「南、家に来い。今からお前だけの特注品を作ってやる」
よくわかんないけどこれがコネってやつですか。
ミナミは新たなコネを手に入れた!
◇
「ハッ、いいねぇ。男を取り戻すための戦いってわけか」
「そうっすね……まったくもって不本意ながら!」
なんやかんや話が盛り上がり、武器を作ってくれている作業中に事情やら今日のことやらを語り尽くした。やっぱり下の話だからご老人――改め浩三親方の昔話とかも聞けて楽しいひと時だった。
「っと、できたぞ。お前さんの新しい相棒どもだ」
「こ、これは……!!」
――そうして最強の新武器を手に、俺は話し込んでいたせいで真上に登った真昼の太陽に向かって歩き出すのだった。
「あ、それと今更だが服、ちゃんと着たほうがいいぞ。ただでさえお前さんは無理を通す性質なんだからな」
「あっはい」
そういえばクソ強ジェネラルくんの致死級ビンタを食らって服がボロッボロの穴だらけだったんだ。……ユニ〇ロ行くか。




