6層 これが成長、ですか(ドヤァ)
「やーい、ざーこざーこ」
特段語ることもなく、ゴブリンの群れを掃討した俺は魔石を拾ってから、放り投げた剣も拾った。
……いや、使いこなせないとかじゃなくて、重くて集団戦には向かなかったから、途中でヤケクソで投げただけだから。からから。
というわけでこいつは封印だ。俺にはもっとスマートな武器の方が似合う。
無駄な時間のせいで本当に無駄に時間がかかったが、出てくるモンスターは4層のバリエーションの中から5体というのは分かった。さっさと次の層へ――
俺が一歩進むと同時に、目の前と後ろでゴブリンが湧いた。
「グギャギャ!」
「ギィィャ!」
――以下略。
総勢10体のゴブリンが俺を囲うように臨戦態勢に入った。
「おいおいスターを囲いたくなる気持ちは分かるが、お生憎様俺の性癖はノーマルだ。ゴブリンハーレムは……願い下げだボケッッ!!」
使えない剣を真正面に全力投擲。
避けたことでできた穴を全力疾走で包囲網から脱出。突っ張り棒とナイフを構えた。
ガ行しか喋れないゴブリンの囀りに顔をしかめながらも、相手はたかがゴブリンの群れ。
コマンダーの支援を受けたメイジやアーチャーの攻撃が飛んでくるも、ソードの正面に移動することでフレンドリーファイア。
視線を外したタイミングで背後をとったダブルレッドキャップを、ノンルックで突っ張り棒を二回突いて宙に浮かせた。一歩下がって二つのボールを相手のゴールにシュー!
突撃してくるシールドとソードを楽々回避して首だけ頂戴しておく。
速度を落としたところで魔法と矢が発射されたので急加速。まずはコマンダーから殺した。
そして近くのメイジとアーチャーで構成された遠距離攻撃部隊をシメる。
「意外となんとかなるもんだなー。これが成長ってやつか――っ!?」
いつも通り薄黒い霧が霧散したと思ったら、急に俺の胸の奥で何かが熱くなった。その熱はすぐに治まったものの、変化が起こったのだけは確信できた。レベルアップ的なやつじゃない。あれはジワジワとくるタイプだからだ。
それなら、と思い無心になる。
【平常運転】
【命の楔】――【楔指定】【割り込み】
「お、おおおおお!!!!! ふぅ、落ち着いた」
どうやら新しいスキルが手に入ったらしい。
なんでかは当然知らない。俺が知らないだけ説があるので、この場でチェック。
ダンジョン内でネット繋がるの便利過ぎる――っと、あった。どうやら個人差はあるものの、一定量あの薄黒い霧を取り込むと発現するらしい。というか地味なレベルアップも霧による強化らしい。そういう分析できるスキル持ち複数人による検証らしく、信憑性は高いみたいだ。
ま、特別な条件とかではないならなんでもいい。今まで通りやるとして、新しいスキルの試運転だ!
長男の問題児と違って常時発動するタイプではないのか、特に今のところ変化はない。
「【命の楔】」
…………特に何も起こらない。
となると、そこから派生する感じだったあの二つが内包されたスキルということだろうか?
「【楔指定】」
試しにそう言ってみると、注視していた手元に白い縁取りの赤いV字が出現した。
特に動くことなく空中で固定されている。触れないようだ。
色んな角度で見てみるも、何故か正面から見ているような形に見える。
「【割り込み】」
すると、景色が急に切り替わり、俺は宙に投げ出されていた。慌てて着地。
それほど高くなかったからよかったが、さっきの位置――あのV字が足の底にくるように転移した?
V字は消えていない。試しに消えないか心の中で試すとすんなり消えた。
「【楔指定】」
今度はその場に指定する感じで楔を残してみた。
スキルってイメージが大事なのだろう。それからいくつか検証してある程度の概要が掴めた。
これは座標を指定してそこに転移できるスキルだ。しかも座標は保存しっぱなしで上限も特に無さそうだった。
そして転移の際も座標の所にどの向きで足が来るかイメージすれば、天井に張りつくような向きで転移できる(着地は怖かったので転移で地面に戻った)。
そして、これは感覚なのだが、スキルの字面からして転移の際に少量寿命か何かを消費しているようだった。本当に僅かなものだったが、変動はするらしく、おそらく元の場所と転移先の地点の直線距離分支払っているものと考えられる。
それも俺の歩行速度を基準に。
つまるところ、寿命を先払いすることで今の若いひと時を有効活用できるというわけだ。
階層間でも使えたし、これは今後の探索が捗る!
いやー、勝ったなガハハ!
風呂食ってくる!




