4層 物欲センサーとかいうこの世の悪
「ハァハァ……おかしいだろクソ」
体力は少し止まったら一瞬で回復した。たぶん【平常運転】の効果だろう。ちなみに盾持ちのシールドゴブリン(仮称)も居たが大して使いこなせておらず、回り込んで首チョンパで余裕だった。
まあそれはいい。
問題はドロップだ。
あれから約三時間に近いマラソンをして、結局魔石がいっぱい、ドロップはアーチャーの弓だけである。
なぜだ、百近い数倒して回ったというのに、今のところドロップ率は1%。……あれ、下手なソシャゲのガチャより良心的か?
いやいや、最高レアリティの累計で1%は結構クソか。危ない危ない、騙されるところだった。
「くそ、許さんぞソードゴブリン!」
俺がこの世の不条理に嘆いていると、遠くの方でゴブリンどもの呻き声が聞こえた。3層から続く階段の方向からだ。俺の最高レアリティが待ってる!
猛ダッシュで駆け抜け――ゴブリンが薄黒い霧になっている場面に出くわした。地面には無骨な剣が転がっている。
……俺はそれを倒したであろう探索者に向けて、全身全霊のDOGEZAをお見舞いした。
「弓と! 交換! していただけないでしょうか!」
図々しいのも承知で魂からの土下座を披露した。
ソードゴブリンが落とさないのが悪い。これ、土下座しようという考えがあるということは、俺の平常運転に土下座が入っているということだろうか。俺のスキルは自分の使い手のことをなんだと思っているのだろうか。
絶対わからせてやるからな。
「南っち?」
「あ、蛇字丸さんと愉快な仲間たち」
土下座したままチラッと見てみると、同級生ズだった。まさかまたダンジョン内で会うとは。
「もしかして、この剣が欲しいのですか?」
「弓と交換つっていっても雪奈の弓の方が明らか高性能だしな――」
「じゃあじゃあ! 南っちにこれあげるから仲間になるってのはどう!」
「じゃあいいや」
「そこまで!?」
まあ何日か周回してれば落ちるだろ。
「というかなんでそこまで俺を勧誘してんすか? 宗教勧誘?」
「違っ……!」
「男避けが欲しいらしいんです。女三人でやってると、何度も声をかけられるので」
「まあ実際鬱陶しいからな。八百枝も別ベクトルでウザイけど」
なるへそー。男避けか。果たして俺に、まともなスキルを持った探索者相手にその重役を果たせるのだろうか。否、無理。俺にそんな甲斐性を期待しないで欲しい。
「尚更無理。俺にはどうしても果たさなければならない使命がある。それに君らを巻き込むつもりはない。嫌なら探索者辞めればいい(テキトー)」
「むうぅ!! 嫌なこと言う! 私達だって絶対にダンジョンに潜らなきゃいけない理由があるもん!」
ポニテワンコが吠える。意外と切実な理由がありそうだ。
「そうなんすか?」
「はい。兎渡香さんは、病気を治すポーションがあると信じて、友さんも理由は聞かされていませんがあるみたいですよ? 私は面白そうだからお手伝いしているだけですが♪」
ほーん。君ら、主人公か何かかな?
ますますお近付きになりたくないな。俺の下世話な理由とは天と地ほどの差があっていたたまれない。
「だから、南っちに来て、欲しいって……わがままなのは分かってるけど……でも!」
「ま、じゃあ男避けとか関係なく、シンプルに強くなってパワーで近寄らせないくらいになればいいんじゃない? 絡んできたら顔面凹ませてやればいいでしょ」
「脳筋すぎない!? でも、そっか。強くて誰も寄せ付けないようになれば、細かいこともオールオーケーってことか!」
「そーそー、てなわけで筋トレ行ってらっしゃーい」
「はーい! ……いや筋トレはしないけど! ってもう居ない!?」
どうやら交換には失敗したようなのでさっさと撤収。俺は諦めて次の階層へ進むのだった。
5層への階段の手前で、新たにゴブリンが湧いた。ソード、メイジ、レッドキャップだ。初戦のリベンジマッチアップ。
俺はこの数時間で完全にヤツらの動きを見切ったので、ナイフをメイジの喉元へ投擲。
そのままメイジはお陀仏。
ソードに接敵し、その斬撃の軌道から更に一歩踏み込んで、敢えてレッドキャップから目を逸らす。
そのままスライディングでソードの股下をくぐり抜け、俺の背後に現れたレッドキャップがソードによって真っ二つにされるのを確認。肉包丁を抜いて、ソードが構え直す前に首を掻き切った。
「圧倒的完封! ざまぁみろ! ……ん?」
魔石の傍らに、無骨な剣が落ちていた。
ソードゴブリンのドロップアイテムである。
「――――物欲センサーfu〇kkkkk!!!!」
欲しい時だけ落ちず、延々と走り回ったあのトレイン狩りの時間を返せ!
物欲センサー許すまじ!
おのれソードゴブリン!
次会ったらめっためたにぶちのめす!
憤慨しつつも、あまり本気では怒れないので、すぐに落ち着いて剣と魔石を回収。5層へ下った。




