7話
鷹司大和という男は、日本中の小学1年生の中で1番身分が高いと言っても過言では無い人間である。
この令和の時代に身分などを意識したくないが、上流階級にいけばいくほど身分というのは色濃く残っている。
私も院瀬見家の長女として上流階級の中ではそこそこの立ち位置を約束されている立場だが、そんなのはこの鷹司大和という男が吹けば飛ぶくらいには、この男の立場は格上だ。
誰がそんな男と積極的に関わりたいものか。
ただでさえ何もしなくても院瀬見家は没落の危機なんだから。
いくら顔が良くても、私はもう少し穏やかそうな男性がタイプだなあ
例えば今流行りの俳優、吉川亮とか……
「おい、院瀬見」
ああそうだ、現実逃避をしている場合では無い。
そのクソ面倒くさい男に私は公衆の面前で呼び止められてるんだった。
ここは黎明学園初等部で、私達はまだ7歳。
だが、だからこそ一言一句何も間違えてはいけないのだ。
「はい、いかがいたしましたか?鷹司様」
「一条について、俺はよろしく言われる筋合いは無い」
……えーーぐい、何故??
どういうこと?既に2人は仲が悪いの?
飛鳥様と鷹司が不仲だと、いずれは鷹司家が一条家を滅ぼすことになり、ひいては院瀬見家の危機が━━━━━
いけない、軌道修正しないと!
「お二方は生まれてまもない頃から親交があると伺っておりますわ。私よりも鷹司様の方が、飛鳥様と過ごされた時間も、これからお過ごしになる時間も長いと思っての発言でしたが、なにかお気に障った様でしたら申し訳ございません」
一息で言い切った。
鷹司は何か言いたげにもごもごしている。
コイツはなにがそんなに気に入らないのだろう。
一条家と鷹司家はこの学年の中では唯一対等とも言えるお2人なのに。
お貴族様の世界は分からないなあ。
あれ、でも確か私の記憶が正しければこの2人、以前は……
「とにかく、アイツとはあまり仲が良くないんだ。じゃあ」
やっと口を開いたと思えばそれだけだけ言い残し、執行部に消えていく鷹司。
やっぱり不仲なのね、7歳の時点で既に……
でも仲が悪いにしては嫌ってるようには見えなかったけど。
やっぱり私の記憶違いかな、原作でもそんな設定はなかった気がするし。
まあいいや、帰ろ帰ろ!え?フラグ?ってなんですか?知らない知らない。
「こうして2人で話すのは初めてだね、一条さん」
茶色に透ける髪を揺らしながら湊流星は言う。
「湊くんはいつもたくさんの女の子とお話してらっしゃるから」
一条飛鳥は困っていた。
(そもそも執行部に全く顔を出していなかったのも、舞衣ちゃんがいないから行きたくなかったのに)
仲のいい人以外の、それも男の子ともなると何を話せばいいか分からない。
「あはは、確かに黎明の女の子たちは明るい子が多くていいよね。日本の女の子は大人しい子が多いのかと思ってたよ、一条さんみたいな」
これは何を言いたいのかしら。
みんなみんな、言葉の裏に何を隠しているのか分からないわ。
一条飛鳥なんて、肩書きだけこんなに大層で困るのよ。
家族以外で、一条という名前に関係なく唯一本音で話してくれるのは舞衣ちゃんだけだわ。
いや、あと1人いたかしら。
なんにしても困るわ。
今日、いつになったら帰れるのかしら……
飛鳥様の苦悩など知らない私はそそくさと帰宅。
やっと長い一日が終わり一刻も早くふかふかのベッドにダイブしたいところだが、生憎この家は敷地が広すぎる、門扉から玄関までこんなに歩く家なんて庶民には考えられないよ!
我が院瀬見邸は旧華族の邸宅にしては珍しくヨーロピアンな造りで、一条邸とは対称的な雰囲気を漂わせている。
それもそのはず、院瀬見の現当主が住むこの家は代々受け継がれた院瀬見本邸とは別邸なのである。
本邸は旧華族の邸宅らしいお屋敷という感じなのだが、普通に使い勝手が悪いのでお父様が結婚を機に別邸を建設したらしい。
重厚な玄関の扉を運転手に開けてもらいやっとお家に到着。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「まいちゃん!おかえりー!」
お手伝いさんの挨拶に会釈で返し、弟の飛び込みを右足で踏ん張り耐える。
はあ、今日もよく頑張ったわ私。
飛鳥様の尻拭いって大変なのね……




