3話
入学式が始まり、新入生代表の挨拶になった。
初等部にもそんなものがあるのか、初等部の入学試験は内容的にはごく簡単なもので、家柄を重視されていると聞いた。
つまりこの新入生代表はほぼ家格の高さで選ばれているということだ。
私はてっきりこの学年で1番大きな家は一条家だと思っていたのだが、飛鳥様は席を立つ様子はない。
え、まさか忘れてるとかじゃないよね?
私は隣に座る、今にも寝落ちしそうなのをなんとか堪えて変な顔になっている飛鳥様の横顔を眺める。
流石にこのポンコツ飛鳥様でも新入生代表挨拶を忘れるほどじゃないはず…
などと考えていた瞬間コツ、と鳴り響く音。
壇上に立つのはとても小学一年生とは思えないオーラを漂わせた男の子。
凛とした顔に、黎明の品格を象徴するライトグレーの制服がよく似合っている。
その瞬間、原作の内容が頭に流れ込んできた。
うわ、待ってあれは、そうだ居たわそんなやつ!!!
僕らのwinter storyにでてくる主要キャラ
『鷹司大和』!!
どうして今まで忘れてたんだろう、いくら飛鳥様がポンコツとはいえたった一人で一条家を破滅させるほどやらかすのは現実的じゃない。
あいつが一条家を破滅に追いやったんじゃん!!
うわー!超重大なことを忘れてた、2人はなんで仲悪くなったんだっけ?
原作を最後に読んでからかなり経つから記憶も曖昧になってきちゃった…
鷹司大和とは、鷹司家の長男であり、長い歴史と伝統ある一族で一条家と同じく明治時代には公爵位を授かっていたらしい。
そんな鷹司家の御曹司が同学年にいるとなれば、飛鳥様を差し置いて新入生代表になるのは納得…
って冷静に分析してる場合じゃない!
アイツと関わるといずれは一条家没落、ひいては院瀬見家も巻き添えをくらってしまう!
いやー!そんなの絶対嫌!!
飛鳥様、アイツに関わっては行けませんよ!
ひいっ、白目むいてる!
飛鳥様、起きてください、重要な式ですよ。
懇意にしている家の親族も参加しているんですから、一条家の看板を背負ったつもりで起きてくださいまし!
「んぇ、もうランチの時間ですか?」
もう!!このポンコツお嬢!!
ヨダレを静かに拭いてる飛鳥様を、壇上の鷹司が一瞬目を向けた気がした。
まずい、飛鳥様がろくに話を聞いてなかったのがバレたか。
飛鳥様、新入生代表の挨拶はそろそろ終わります。
あとは学校生活の説明だけなので我慢してください、頭をカクンとさせないで!
ここ黎明学園には、独特の組織がある。
『明成会』
卒業後に黎明の学生たちが、所属しているそれぞれの会の仲間たちと自主的に集まり活動する組織で、まあ簡単に言えば同窓会組織みたいなものだ。
ただ、一般的な同窓会組織と違うのはこれが在学中に組まれるということ。
そして無数の明成会があるということ。
飛鳥様、きいてますか?
例えば黎明で1番ポピュラーなのは同期明成会かな。
同期明成会は学年全員が強制的に入会している。
飛鳥様、きいてください。
そしてこの無数の明成会を取りまとめている組織が「黎明連合明成会」。
黎明連合明成会の現会長は、森グループの現社長、さらに前総理大臣の弟でもある森会長という方だ。
詳しいことはよく分からないが、正真正銘この日本そのものを動かせるほどの権力と肩書きを持っている。
飛鳥様、寝ないでください。大事なところです。
そしてこの黎明連合明成会の執行部というのが、選び抜かれた黎明の在校生のみが入会できる部である。
飛鳥様、貴方がそこに入るんですよ飛鳥様。
「はい、今日のランチは鉄板焼きにしましょう。」
このスーパーポンコツお嬢め!!
さては何も聞いていないな!?
執行部に入るのは、将来この日本をまさに文字通り背負うような生徒達が入会する。
まあつまり、実家の影響力が関係している。
もちろん飛鳥様は一条財閥の直系御息女なので入会条件を満たしている。
飛鳥様あしが開いてしまってます。
執行部員がそんな格好で居眠りしないで。
院瀬見家の私はおそらくギリギリ入会条件に届いていないだろう。
飛鳥様は私がいない執行部でちゃんとボロ出さずに過ごせるだろうか。
不安だ、不安すぎる…
ポンコツ令嬢の尻拭いはまだ始まったばかりだ。




