敵意
「いったぁ!!」
がれきの山で止まったレイトは叫びながら体を起こした。
(とっさに身体強化魔法を発動出来て良かった。この世界に来たばっかりの時だったら今ので死んでたかも。)
自身の成長を少し喜び、目の前の式神に集中するレイト。式神は真っ直ぐ彼に突っ込んできた!
「ガゥ!!」
《アイスランス!!》
その動きに合わせるように氷の槍を打ち出し、式神の体を貫く。一撃で式神は動かなくなってしまった。
「?結構弱い。前に遺跡で戦った時はこんなもんじゃなかったような。」
「「「バァウ!!!」」」
そう言った瞬間どこからともなく式神が現れ、レイトを取り囲むように飛び掛かってきた!
「やば!」
《アイスランス》
氷の槍を持ち、式神の攻撃をかわしながら一体一体確実に仕留めていく。式神達の攻撃に連携性は無く、彼でも無傷で殲滅することが出来た。
「ふう。やっぱり弱いな。二人を追わないと。」
ガラッ
レイトが王宮に向かって歩き出した時、後ろから何かが崩れる音がした。警戒して振り向いた視線の先には
「・・・」
何体かの龍人族がいた。がれきの中で身を寄せ合って隠れていたようだが、レイトの戦いの衝撃で外から見えるようになったようだ。奥の方には子供もいるようだ。
「大丈夫ですか!?」
「来るな!!」
近づこうとしたレイトを口から炎を出しながら威嚇をして止める龍人族。
「えっ?」
「また人間がこの混乱を招いたのか!何故俺達の国を狙うんだ!!」
「いや、ちが。」
「俺達の国は俺達が守る!!行くぞ!!」
「ちょ、ちょっと待って!」
レイトの叫びも虚しく龍人族達が襲い掛かる!その攻撃方法は爪と口からの炎のブレスでそれぞれが別々に襲い掛かってくるのでレイトも何とか防げている。
「ど、どうする。」
だがレイトの顔には不安の色があった。反撃が全くできずにいるのだ。
(何とか落ち着いて欲しいけど、手加減なんて出来ないし。あの傷。下手したら殺しちゃうかも・・・。)
彼の目は龍人族達の体にある傷だった。固そうな鱗に切り傷がいくつもついている。それが原因か動きも鈍い。だからこそレイトが受けきれているのだが、弱弱しい体に反撃も出来ていない。
「うぅ。」
明確な敵意。それも魔獣や式神といった物言わぬ敵ではなく守るべき一般魔族に向けられる敵意にレイトは困惑していた。反撃をしても良いのか、倒された方が丸く収まるのではないか。この世界で叩くと決めた決意が揺らいでいく。その思考は体の動きにも現れてくる。
「あっつ!!」
龍人族のブレスが腕を焦がしたのだ。それを皮切りに氷の盾は砕かれ始め爪での攻撃も当たるようになり、遂にはレイトは動きを止めてしまった。
「はぁはぁ。」
片膝をつき下を向いて息を荒げているレイト。それを見下ろしている龍人族達の息も荒い。
「ようやく動かなくなったな。」
「どうする?殺すか?」
「・・・そうだな。こいつを殺せばこの襲撃もおさまるかも。」
「待って!!」
レイトの前に小さな影が割って入った。
「カンア!出てくるなと言っただろう!」
「このお兄ちゃんは悪くないよ!前もカンアを守ってくれたもん!」
前もという言葉にレイトは少女を見る。
(由佳莉さんと戦った時にいた、子供?)
特徴的な鱗の色で辛うじて覚えていたのだ。
「皆おかしいよ!このお兄ちゃんを倒しても解決するわけじゃないでしょう!?」
「人間は我々に不幸をもたらす!!ならばここで殺しておくのが一番だ!!」
レイトを殺そうとする声はどんどんと大きくなっていく。その声に押しつぶされているのか動けるくらいになってもレイトは動こうとしなかった。
(人間は不幸を、もたらす?なら、おれは、どうすれば・・・。)
「ウォオン!!!」
レイトの思考に暗い影がかかった時、喧騒につられたのか式神がレイトの後ろから飛び出してきて、彼の目の前の少女に飛び掛かった!
「カンア!!」
「え?」
レイトを殺そうとしていた者が爪を構えて走り出した。しかし式神の方が速くその牙が彼女に突き刺さる!!
ガブ!!ドシュ!!
両者の攻撃はほぼ同時に敵に命中した。
「お兄ちゃん!」
彼女を庇ったレイトに突き刺さったのだ。




