お互いの目的
「痛ってぇ。」
煙で見えないが横でインフィさんの声がする。俺も腰を打ったようで痛みがある。
「いたた、何が起きたんだ?」
「見えなかったのか?奥から出てきたやつが床を壊したんだ。詠唱もモーションも無しで床を壊すほどの魔法を放つとは思わなかったがな。」
「な、なるほど。皆が警戒してたのはあの人だったのか。マスターとランシュウさんはどこ?」
「落ちたときに分断されたみてぇだな。」
「ってことは。」
上を見上げても登れそうにない。前方にある奥に続く通路を見る。
「あそこに行く必要があると。」
「ああ、どうせ向こうも行けるところに行くだろ。」
「そうですね。じゃあ行きましょうか。」
そう言って二人で一緒に歩く。
「それにしてもこの妨害は何なんでしょうね。よっぽど見せたくないものがあるのかな?」
「・・・・・・。」
「あの犬の大群は凄かったですね。」
「・・・・・・。」
「お二人は何で遺跡をまわっているんですか?」
「・・・・・・。」
何を話しかけても反応なく前に進み続けるインフィさん。さっきも怒られたし、嫌われてるのかな。
ズルッ
「ゴフッ!」
足が滑り転ぶ。
「いたた。」
起き上がろうとするも
「?」
腕に力が入らない。
「あ、れ?」
前を向くこともできず倒れる。
「」
意識が
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「」
さっきとは違い仰向けに寝ているのが分かる。
「起きたか。」
横から声をかけられた。
「インフィさん。」
「はぁ。何で助けちまったんだか。」
呆れたように息を吐く。起き上がって周りを見ると先ほどの犬が何体か倒れている。
「助けてくれたんですか?」
「あっ?そうだよ、悪いか?」
「い、いえ。ありがとうございます。」
「ふん。お前が倒れただけなら置いていこうとしたんだがな。あの穴から何匹か犬っころが落ちてきたんだ。食われても困るから仕方なくな。」
「そうだったんですか。」
何気なくお腹の穴が空いたところを撫でる。
「お前やっぱりおかしいな。」
「え?」
「腹にそんな風穴が空いて、治って直ぐにこんな遺跡に来るなんてな。その傷が治ったのは最近なんだろ?」
「治ったというか、穴が空いたのが一か月前くらいで直ぐにふさがりはしたんですよね。」
「・・・なんだそりゃ。バカみてえな回復力だな。人間ってのは皆そうなのか?」
呆れているというか少し興味を持たれたようだ。
「さ、流石に皆ではないと思います。」
この世界の人間は知らないけど、再生能力は無いだろう。
「この遺跡の中にそんなバケモンみたいになれる魔導書があればいいんだけどな。」
「魔導書?それを探して遺跡巡りをしてるんですか?」
「魔導書も知らないのか。魔導書っていうのは魔法が詰め込まれた本らしい。それに触れるだけで魔導書に詰め込まれている魔法が使えるようになれるんだと。」
「へぇ、そんな本が。・・・ん?らしい?」
「まだ見たことないんだよ。ランシュウの生まれ里で見た歴史書で書いてあっただけなんだよ。」
「そ、それで探してるんですか?あるかどうかも分からないのに?」
「ああ、悪いか?」
「悪くないですけど、何でそんなにそれが欲しいんですか?」
「決まってるだろ、魔法を使わせたいんだよ。」
「使、わせたい?」
「ランシュウはエルフ族だ。エルフ族は他の魔族に比べて魔法を扱うのがうまい。中には色々な属性を使いこなすやつもいるそうだ。」
それを聞いて前の修行の時のメイガスさんを思い出した。確かに色んな魔法を使っていた。
「だがあいつは魔法が使えない。生まれつきの体質らしい。そんなんで里のもんにも色々と言われて追い出されたんだと。だからあいつに凄い魔法を使わせてその連中を見返してやるんだよ。」
「へぇ。」
「!何で全部言っちまってるんだ。」
我に返ったインフィさんは動く準備をし始めた。
「ランシュウさんの事、大事なんですね。」
「・・・。」
「俺もマスターの為になることをしたいんですよね。今まで迷惑かけっぱなしで。今回だってなんか怒らせちゃったみたいですし。」
情けなくなり頬を掻く。
「そうじゃねえと思うがな。」
「え?」
インフィさんのぼそっと言ったことは聞こえなかった。
「なんでもねぇ。とにかくお前の主人を怒らすにしても、悲しませるにしても再開しなくちゃ出来ねえ。行くぞ。」
インフィさんが歩き始める。その向こうには何匹かの犬がやってきている。
「また?でもあの奥から来たってことは。」
立ち上がり氷の槍を出して彼の横に立つ。
「あの奥にさっきのやつがいるんだろ。」
彼も大剣を担ぎ、戦闘状態に入った。
「なら!」
「ぶっ飛ばす!」
犬が飛び掛かってきたのを合図に二人で走り出す!




