遺跡とは
「宣言は格好良かったんですけどね。」
「はい。ごめんなさい。」
あの女との遭遇から一月ほどたった。俺達はディスブル国の図書館にいた。あの後俺達は直ぐにアルムン国を出た。人間に対してヘイトが高まっていたところで俺が中庭を壊してしまったのだから当然と言えば当然。一応今後の支援と連携を約束してきたそう。帰ってきてからは殆ど眠っていた。お腹に穴が空いたから当然だが、いつの間にかふさがり痛みもほとんどなくなっている。この世界の医療は凄まじい。
「本当はシルビアさんにも会いたかったのですが、流石にあの後では無理でした。色々と落ち着いたらまた会いに行こうと思っています。」
「そうですな。シルビア様の容態次第がよろしいかと。さて、では我々は今後のことを考えましょうか。」
「はい!」
メイガスさんに励まされ声に元気が出た。
「あなたの話ではその女がユカリさんをそそのかしたのでしょう?どんな容姿?」
「人間だと思います。長身で銀色の長髪くらいしか見えなかったんですが。」
「・・・それだけ?」
無表情だが呆れているのが分かる。
「はい、ごめんなさい・・・。」
さっきまでの元気が無くなるのが分かる。
「ではその女のことは今後に期待ということで。とりあえず古代の魔獣について捜索をしましょうか。」
「そうですね。今のところ新しい情報は古き魔物エキドナ。そしてその魔力の拡散をしているエンシェントラフレシア。この二つですね。この図書館にそれらの情報はありましたか?」
「エンシェントラフレシアの具体的な情報がありました。古い情報でしたが、今の地形と照らしあわれて過去に群生していた地が判明しました。」
そういいつつメイガスさんはライブラリーキューブから大きな地図を取り出した。
「この辺りです。」
「えーっと?」
「ここが我々の城です。そしてここがアルムン国。こちらがレイト様が召喚された砦ですね。」
この世界の地図を初めて見た俺にメイガスさんが優しく教えてくれた。
「ありがとうございます。こう見ると本当に町と町、国と国が離れてるなぁ。」
「様々な場所に小さな町や村はありますが、この国のような大きな居住地は少ないですな。元の世界ではこのような地図ではないのですかな?」
「いやまあ、こんな感じの場所もあるんですけど俺がいた場所は人間がものすごくいて、この城下町に住んでいる数よりも多かったですね。」
「なんと、それは想像も出来ませんな。」
「この辺りは前にあの二人組と会った付近ですね。」
俺とメイガスさんの元の世界談義をマスターが終わらせた。
「はっ!し、失礼いたしました。二人組とは?」
「レイトと私が出会ったエルフとオークの二人組です。覚えていますか?」
「ああ確か、ランシュウさんとインフィさんでしたっけ?」
「ええ。その二人と出会ったのがこのあたりだったはずです。あの時は何をしていたかはぐらかされましたが、もしまだこの辺りにいたならば。」
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「何か関係があると思っていたのですが。」
「やぁ!」
「まさか、本当にいるとは。」
「・・・。」
メイガスさんが示した場所の近くの森の中。お互いに予想外であろう会合が生まれた。
「お久しぶり、人間君!また会えたね!」
「お久しぶりです・・・。」
「おお、やっぱり人間の反応は新鮮だね!しかも目には持っていなかった剣?も持っているし!ほらほらインフィ君もちゃんと挨拶しなきゃ。」
「・・・よぉ。」
「どうも。」
「よく挨拶できたね!そちらのお姫様とは大違いだ。」
「あなたたちの目的は何ですか?」
ランシュウさんの明るい雰囲気を壊すようにマスターが冷たい態度で問い詰める。
「相当な時間が経っているにもかかわらず、このあたりにいたということは何か目的があるのでしょう?」
「ええ、もちろん。この辺りに古き魔物を祀った遺跡があると聞いてやってきたのです。しかし、せっかく苦労して見つけたのに入れず途方に暮れていたのですよ。」
「入れなかった?」
「はい。ご興味があれば案内しますが?」
「・・・・・・。」
マスターは少し悩んだが、
「案内してください。」
案内をお願いした。
「では行こうかねぇ。」
「おい、いいのか?」
「もちろん。我々では入れなかったからねぇ。もしお姫様が開けてくれたら万々歳じゃないか。」
「・・・わかった。」
二人が歩き始めたのでそれについていく。
「マスター、何で遺跡に行こうとしたんですか?」
「この辺りがエンシェントラフレシアの群生地だったことを考えると彼らが言う遺跡はおそらくエキドナの遺跡でしょう。それであれば何かしらの情報が得られる可能性が高いんです。」
「なるほど。・・・遺跡って何があるんですか?」
「色々です。信仰対象の壁画やその時の手記などがあったりします。たまに何かが封印されていることもありますね。」
「封印!」
封印という聞き馴染みのない言葉に少しテンションが上がり前の二人についていき、洞窟のような入口に古く大きな石扉がある場所に着いた。
「ここですか。」
「ええ、ここがその遺跡なのは間違いないんだけど、中に入れないんですよねぇ。」
ランシュウさんが扉に近づくと
ほわぁん
手の前に白い霧のようなものが出てその行く手を塞いだ。
「僕たちじゃこの白いのを突破できなくてねぇ。途方に暮れていたってわけ。」
「会った場所からあまり離れていませんでしたが、そんなに長い間見つけられなかったのですか?」
「いえいえ、つい少し前はここには岩肌しかなかったんですよ。あれは四日くらい前かな?」
「五日前だ。」
「そうそう、五日前に急にこの扉が現れたんですよ。前に調べたところに出てきて驚いたなぁ。」
「なるほど?あなた方はよっぽど遺跡に興味があるようで。」
また冷たい視線を向けたマスターだったがランシュウさんはニコニコと躱している。
「それはそうと、この封印を解除してみましょうか。」
「ああ、やはり解除できるのですね!」
「前に別の遺跡で解除したことがあるのでおそらく解除可能です。」
そう言ってマスターが前に進み霧に手を当てた。集中しているのが分かる。暫く時間が過ぎたところで
「・・・どういうこと?」
手を放し驚いた声を出した。
「どうしたんですか?」
「この遺跡の封印、最新の封印魔法が使われている。」
「最新の?遺跡って凄い古いんじゃ?」
「もちろんそうです。通常遺跡の封印魔法にはその時代の古い魔法が使われています。しかしこの封印は私が見たことも聞いたこともない魔法が使われている。」
「はぁ?そんなことありえないだろ。」
「ええ、ありえないことが起きています。・・・少し懐かしいような魔力が感じられますが私では解除は不可能です。」
「ふぅむ。ということは誰かがこの遺跡に入った後に新たに封印をかけたんですかねぇ?」
「その可能性もありますが、何のために・・・。」
三人とも難しい顔をして黙ってしまった。俺が考えている以上に異常事態が起きているようだ。
「こんな古そうなのに。」
独り言をつぶやき扉に近づく。
「魔法って難しい。」
扉に手を触れようとする。霧に阻まれ、石とは違う感触が来る。
パキィン
事はなく、霧は起きずスムーズに石の扉に触れることが出来て乾いた音が鳴った。
「はっ?」
ごごごごご
後ろでインフィさんが不思議な声を出しているのが聞こえた。後ろを振り向く間もなく目の前の扉が開き始めた。唐突すぎて開ききるまで動くことが出来なかったのは俺だけではなかった。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「何してんだ、お前?」
「俺にも、さっぱり。」




