使い魔は戦いを始めた
どぉぉん!!
魔獣の突進はサリヤには当たらず横にずれて後ろの大木に激突した!レイトの横からの奇襲により向きが少しずれたのだ。
「ぎゃおぉぉぉぉう!!!」
魔獣は大木にぶつかり、息を整えている。レイトの突撃は相手の向きを変えることには成功したが傷をつけるには至らなかったようだ。
「はぁ、はぁ。」
レイトはサリヤの横に立ち、追撃をせず魔獣を見つめていた。
(・・・。)
彼の氷の槍を持つ右手が震えていることにサリヤは気付いていた。追撃を行わないのではない。体が動かないのだ。
「すぅーー、はぁーー。」
深呼吸をしても手の震えは止まらない。しかし魔獣の方は止まり続けるわけではなかった。
「ぐるるる。」
痛みに耐えながら突進の構えをとっている。その目は怒りに震えているようだ。しかし、レイトはまだ、
「落ち着いて。」
動いたのはサリヤだった。レイトの手に自身の手を触れさせ落ち着くよう促す。
「あなたが覚悟をしてくれた事はわかった。だから後は私に任せて。」
そう言いながら立ち上がろうとするサリヤ。
「・・・いや。」
添えられた手を震える左手で包み込み立ち上がるのを止めるレイト。
「あいつは俺が倒す!」
レイトの手の震えは止まっていた。
「・・・わかった。任せる。」
サリヤが手を離し、レイトは一歩前に出た。
(あいつが動いていたら倒せない。突進を止めなきゃならない。でもアイスシールドじゃあ押し切られる。なら!)
「いくぞ!!」
「ぶぉぉぉぉ!!!」
レイトと魔獣が同時に前に出る!魔獣は自らの血をまき散らしながら突進を仕掛けてきており、その血は地面に落ちると同時に爆発を起こしている!半分程近づいた時にレイトも動いた。
《氷よ壁となれ アイスウォール!》
左手を地面に叩きつけ目の前に氷の壁を生成する!
ドン!ドォォン!!
氷の盾よりも厚い壁だったが魔獣がぶつかった瞬間、爆発が起こり壁が粉々に砕け散った!が、レイトは焦っていなかった。
《凍って包め アイスラップ!》
砕けて舞っている氷がそれぞれ繋がり魔獣の頭に纏わりつき、繋がった端の氷が周囲の地面や木に繋がり魔獣の頭を固定する!
「どぉりゃあ!!」
すかさず槍を頭に突き立てる!!身体強化魔法を使い精一杯の力を込めた一撃だった。しかし、
「ごぉぉぉぉ!!」
少しは刺さったが厚い皮に阻まれ体内まで届かない!痛みに暴れ、纏わりついている氷を壊そうとする魔獣だったがレイトの方が早かった。
「もう、いっちょう!!!」
槍から手を離し拳に氷を纏い槍を殴る!二度目の衝撃で、槍は魔獣の体内に突き刺さった!それでも絶命せず暴れようとする魔獣にレイトは叫ぶ。
《アイスランス・ダブル!!》
拳に纏っていた氷が槍を通り魔獣の頭に入る。そして
バギィィィン!!
頭の中で更に進み、巨大な氷の槍が魔獣を貫いた。正確には頭の中で氷の槍が生成されたのだ。魔獣はうめき声をあげることなくその場で動かなくなった。が次の瞬間
バァァン!
魔獣の体が爆発を起こし跡形も無くなった。
「はぁはぁ。」
満身創痍のレイトは息を切らせて魔獣がいた場所を見つめていたが、
ぱん。
と手を合わせて魔獣に祈りをささげた。




