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心の声に従え

ガッ!!と氷の盾で雷の魔法を受け止める!一瞬受け止めて勢いを殺すことはできたが、直ぐに壊され近くの地面に落ちる!


「うぉぁ!」


俺と狼人は同じ方向に吹き飛ばされた!何とか体制を立て直し巨狼を見ると再び魔法を放とうとしている!


「待ちなさい!!」


狼王の視界の外から魔具を持ったマスターがいつの間にか接近していた!魔具を狼王に突き刺す!


「がぁぁぁぁ!!!」


先ほどまでの魔法の槍とは違い一点集中の槍が狼王の肌に突き刺さる!対して狼王は頭の上に雷のボールを出し、周囲をまとめて攻撃する!その攻撃はレイトだけではなくサリヤにも牙を向ける!


「マスター!!」


「私は気にしないで自分のことを守りなさい!!」


その言葉の意味を考える間もなく、魔法が飛んでくる!


《アイスシールド!!》


それを再び氷の盾で防御する。一応後ろの狼人も守るべく大きな盾をイメージして出した。


「・・・あんた。」


と後ろから問いかけが来た。


「な、なんですか?今ちょっと忙しいんですけど!」


と言ったものの、狼から追撃が来ない。というか俺を睨みつけて止まっている。


「?攻撃をやめた?」


「あんた、本当に人間なのか。」


「え?何が?」


「人間は邪悪なものだろう?魔族に対して憎悪と憤怒を持っていて、魔族を見たとたんに殺しに来るのだろう?何故守る?」


「人間ってそんなに悪いイメージなんですか!?」


「いや、前は、あれ?ルプス様から聞いた話では、いやしかし、前はそんなことは。」


何か信じられないものを見たような、考え事をしているような顔をしている。


「記憶がおかしくなっている?」


そんな様子の彼を見てマスターも何かを考え出したその時。


「おぉぉぉぉ。」


狼がうずくまり始めた。


「え?どうしたの?」


今までになく苦しそうだったので近づこうと一歩前に出ると、


「よるな!!」


いきなり狼から言葉が発せられた!先ほどまでのうめき声や遠吠えとは違い、ちゃんとした言葉だった。


「ルプス様!!」


後ろの狼人から必死な声が聞こえる。


「ザーガ・・・逃げろ・・・」


少しづつ言葉を発していく狼。何かに耐えているようにも見える。


「私は・・・狂気におちいって、いる


このまま、では・・・お前達を」


言葉を発する度に口の中が見えるのだが、目の前にいるレイトには妙なものが見えた。


(なんだ、あれ。)


口の中に人影のようなものがある。


(人影?狼っぽい?あれが狼王なのか?)


良く見えないが舌の根元あたりに何かがいる。


「ルプス様を残していけません!!」


「ザー、ガ。みな、を・・・がぁぁぁぁぁぁ!!!」


また天に向かって咆哮をする狼。今の会話のうちにマスターがこちらに来ていた。


「今のうちになんとか外に出ますよ。」


「まだルプス様がおられる!そこにおられるのだ!!」


「あの狼王を抑えることは今の私達では難しいのです。私達が脱出した後に外から一斉攻撃をしてダメージを与えましょう。」


「しかし、それでは、ルプス様が・・・。」


「もはや致命傷をあたえずに落ち着かせるのは無理です。」


「・・・。」


「助けたいのなら止めはしませんがおひとりでどうぞ。」


マスターの言ってることはわかる。俺がここにいても役に立たないばかりか足を引っ張ってしまう。・・でもあの狼の顔を見たら、


「レイト。」


「え?あ、はい。」


「呆けてないで外側に行きますよ。」


「でもあの狼が。」


「あなたもですか?先程まで自分を殺そうとした相手を助けたいと?」


「・・・。」


「傷をつけることも出来なく、助ける方法がわからなくても?」


マスターからじっと見つめられる。周りの喧騒が嘘のように静かな時間が二人の間に流れる。


「はい。」


マスターの目を見て言う。


「マスターの助けがあろうとなかろうと助けたいです。」


助けなきゃと心が叫んだ気がした。


「・・・。」


マスターも俺を見返す。


「はぁ。」


何かを諦らめたように溜め息をつき、


「わかりました。出来ることはしてみましょう。」


俺の希望を受け入れてくれた。


「ありがとうございます。」


「礼はいりませんから、打開策を考えてください。」


クールにお礼を言われたが、その返しには力がこもっていた。


「はい!!」


改めてマスターと一緒に狼を見る。


初めて同じ方向を向いた気がした。

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