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敵は外からやってくる

「今日は合同で修行をやっていくぞ!!」


次の日の修行はラセツさんの大声での号令で始まった。城の中の大きな修練場には様々な魔族が入っていた。壇上にいるラセツさんの近くで話を聞いている俺の近くにはアイリスさん達、マスター、そしてメイガスさんがいる。


「皆!一昨日、昨日とご苦労だった!今日はお互いに思う存分死力を尽くし、修行に励むといい!」


修行で死力を尽くすのか。その後に横にいるドルファスさんが続いた。


「治療の心配はするな。こちらの医療班のミールが全て治す。」


そういうドルファスさんの指差す方にはミールさんが笑顔で立っていた。俺に向けてたあの悪意ある笑顔ではなく大人な顔で。どうやら俺が思う以上に優秀で、俺が思う以上に俺の扱いは酷いらしい。


「よし!では各自分かれて修行を、」


と言いかけたところで急にハリスさんが壇上にあがり、ドルファスさんに何やら耳打ちをした。ハリスさんの表情から察するに良い事ではなさそうだけど。


「本当か?」


少し驚き、確認をするドルファスさん。頷くハリスさんを見て、


「ご苦労。すぐに動くぞ。ラセツ殿。お力をお貸しいただきたい。」


二人の間でこそこそ話があり、


「あいわかった。喜んで力を貸そう。皆の者聞けい!」


先程の和やかな声とは違い緊張感のある声に変わったラセツさんの号令に魔族達も引き締まった。


「隣国のオフルス国がこの国の領土に攻め込んで来ていると連絡が入った!相手の規模はこれまでにないほど多勢のようで既に国境付近の村がやられたようだ。友好国としてディスブル国と共にこれを撃退する!迅速に支度をし出陣せよ!」


「「「はっ!!!」」」


その言葉の直ぐ後に修練場にいた魔族たちがそれぞれその場を出ていく。先ほどまでとは打って変わってかなりぴりついて、急いでいる雰囲気だ。


「オフルス国?」


「狼人族の国で、この国と敵対しています。今まで小競り合いはよくあったのですが、お父様達があそこまで焦るということは相当な戦力で攻めて来ているようですね。私たちも準備しましょう。」


「そうだね。」


アイリスさん達はラセツさんに続いて修練場を出ていく。


「・・・。」


何か考え込んでいるマスター。


「マスター?行かないんです?」


「あなたは残ってください。」


面と向かってはっきり言われた。


「な、何でですか?」


「まだあなたは昨日の話の力を手に入れてません。そしてこのような大規模な戦いでは、あなたを守り切ることが困難だと考えられます。」


「そう、すね。」


「まあ、すぐに帰ってきますから。メイガス。彼をお願いします。」


「かしこまりました。ご武運を。」


「はい。」


くるっと行ってしまうマスターを見て、少し嫌な予感がした。


「マスター。」


「?はい?」


マスターの目を見て言う。


「気を付けて。」


「・・・ふふ。はい、わかりました。」


少し笑みを浮かべて出ていくマスター。その後ろ姿には先ほど感じた嫌な予感は感じられなかった。


「皆さま行きましたね。」


「そうですねー。」


メイガスさんと二人で呟く。横目にメイガスさんを見ると見た目はおじいちゃんなのだが一つ体に芯が通っているというかしっかりと立っている印象を受ける。


「メイガスさんは行かなくてもいいんですか?」


「留守を守るのが執事の仕事ですので。」


「・・・執事さんだったのか。」


「ええ。」


漫画によくある教育係だと思ってた。いや、執事も見たことないけどさぁ。


「さて、どうしましょうか?」


「どうしましょう、って?」


「あなたのことをサリヤ様に任されましたので。したいことがあったら出来る限りのことはしますよ。」


「じゃあ、こう、戦闘訓練みたいなのも?」


「ふむ、この年よりでよければ相手いたしましょう。」


少し離れたところに立ってこちらを見てくる。


「とりあえず、出来ることをすべてしてもらっていいですぞ。絶対に負けませんので。」 


「そうっすよね。よろしくお願いします!」


今出せる全力を出そう!

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