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こちら側の戦い

インフィ 

140cm 

髪は無い緑色の肌 

筋肉質

身の丈以上の体験を斜めに背負っている


その場面から少し前。レイトは木の上にいる二人からの威圧感で動けずにいた。戦士のオーラというものだろう。


(・・・なんであんなに身軽なんだろう。)


というか漫画のように身軽に飛び跳ねる二人に驚いていた。


(魔族だから?この世界では人間も身軽なのかな?)


そういうことを考えた後に


(やっぱり日常の中に戦いがあるんだなぁ。)


目の前で戦いが行われていることにさらに驚いていた。アルムン国でも目の前で戦いが起きていたが、ここまではっきりと人同士の戦いを見たのは前の世界から考えても初めての経験だった。日本という戦争が身近になかった国で、さらにケンカなどとは無縁だった玲斗はその光景が物珍しく、そして怖かった。


(俺も戦いが日常になっていくのかな。)


玲斗にはまだ覚悟が出来ていなかった。戦いに入っていく覚悟が。二人を見ていると、何か話しているようだったが、レイトには聞こえなかった。声が聞こえるところまで進もうとしたところでサリヤが氷から飛び跳ねる。そこに目を向けたところで、レイトは後ろで何かが動いた気がした。


「・・・えっ?」


振り向くとそこには何か黒いものがレイトに向かってきていた!


「はっ!?」


とっさに氷を出せたのはサリヤとの鍛錬のおかげだろう。


「ど、どちらさま!?」


レイトが問いかけても返答はない。その襲撃者は小さかった。身長はレイトの半分ほど。小さいながらその肉体は筋肉隆々だった。体色は深い緑色で先程死んでいたオークを思わせる。その両手にはその身の丈以上の黒い大剣が握られていた。彼は追撃をしてくる様子がない。この間にサリヤから教わったことを思い出すレイト。


(まずは全身に魔力を巡らせて、身体強化魔法を使う。)


全身に冷たい魔力が流れるのを感じながら、身体強化魔法を発動させ、右手に氷の槍を作り持つ。この討伐に出る前にマスターから


「あなたはアイスランスを飛ばすことはまだ難しいみたいだから、持ったままにして魔力を注ぎ込みなさい。そうすればとりあえず壊れないはずだから。」


というアドバイスをもらったのでそうしてみている。ここまでの動作にたっぷり10秒はかかっているのだが相手が襲いかかってくることはなかった。その事を考えていると、


「あんた、なんか変だな。」


「・・・よく言われます。」


最近言われ始めました。


「あんた、俺より魔法使うの遅いな。」


「まあ・・・苦手なんで。」


最近魔法を使い始めたとは言わないでおこう。


「・・・俺と同じだな。」


「は、はぁ。」


「俺は魔法を使うのが苦手だった。魔法が苦手なオーク族の中でも苦手だった。」


(やっぱりオークは肉体派なのかな?)


「だけど、俺は生き残った。俺を馬鹿にしてたあいつらは魔獣になって死んだんだ。」


「死んだって、じゃあさっきの死体は。」


「ああ?この近くにあるのは俺がやったやつだ。魔獣になって襲ってきやがったからな。ランシュウには手を出さないように言って俺一人でやったんだな。あいつら、最後は正気に戻ったのか逃げまどってたぜ。」


「正気に戻った、ってなら助けてやればよかったじゃないですか。」


「あ?あいつらは俺を除け者にしてた。そんで魔獣になったんだ。死んで当然だろ。」


「死んで当然って。そんな・・・。」


そこでレイトは気付いた。この世界に来て、自分も死に遭遇しているということを。自分の身の為に何かを殺しているということを。


「・・・。」


そのことを考え始めたレイトは集中が切れてしまい、魔法を維持できなくなっていた。目は相手をにらみつけてはいるが、殺意はない。


「・・・お前が変なのはわかった。でもお前よりあっちのほうがやばそうだ。」


そういいながら振り返り、枝の上にいる二人を見る。枝の上にいるといっても飛び跳ねながら魔法の応酬をしている。


「とりあえず助けに行くか。」


枝の上に飛ぼうとした所に後ろから氷の槍が飛んでくる!


「ん?」


後ろを振り向かずに持っていた大剣を後ろに構えてそれを落とす。また振り返ると、そこには氷の槍の槍を右手に持ち、何かを覚悟した目をしたレイトがにらみつけていた。


「なんだお前・・・。」


「二対一はやらせられない!」


「・・・魔法は苦手で、戦いも苦手そうで黙ってろよ。」


見るからにイラついているオーク。


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