研究者
「マスター。」
「なんですか?」
「青い龍人族の人の話は何だったんです?話は終わったって言ってましたけど?」
「ここでする話ではありませんね。ついてきてください。」
マスターの後ろをついていくこと10分。この国の基準からみても少し大きい扉の前についた。
(そういえば、この世界にも時計ってあるんだな。当たり前にあるから不思議に思わなかったけど。)
マスターがノックをすると、赤い鱗の龍人族の人が出てきた。
「あー、サリヤさまー。どうもー。」
厳つい風貌とは裏腹にふわふわしたしゃべり方の人だ。
「彼女はトーラスさん。アルムン国の研究班の班長です。」
「はじめましてー。あなたが噂の人間さんですねー?」
「はい。玲斗です。よろしくお願いします。」
龍人族の人と初めて握手をしたけど、結構柔らかい。と思いつつ手を離そうとしても相手が離してくれない。
「にぎにぎ。」
「あのー」
「使い魔として召喚された人間さんなんてー。しかも短い間に二人もー。」
「はぁ。」
「こほん。トーラスさん。」
握手を続けようとするトーラスさんを止めるマスター。
「血の解析が進んだと連絡を受けたのですが。」
「あぁー、そうでしたー。」
握手を解いて中に招き入れられる。中はそこまで広くなかった。というか物が乱雑に置かれていて、部屋の大きさ以下の広さに感じる。
「研究班なのに一人部屋なんですね。」
「はいー。一応班長なのでー、特別待遇ですー。」
「すごいんですね。」
「いやー、好きなことをしているだけなのでー。」
「はぁ。トーラスさん。」
「はーい。来てもらったのはー、血の解析がちょっとだけー、進んだからですー。これをどうぞー。」
トーラスさんから渡されたのは小さな水晶だった。
「???」
横を見るとマスターの水晶が板のように変わっていた。
「え?」
呆けているとトーラスさんが俺の手ごと握ってきた。
「すいませんー。これは《マジックシート》って言ってー、魔力を込めると紙みたいになるんですー。」
トーラスさんの手から何か圧、多分魔力が流れてきたと思ったら、水晶が板に変わり、文字や図形が書かれていた。
「おお!」
「これはトーラスさんが開発したものなんですよ。紙に代わるものとして期待の一品です。」
「それほどでもー。でー、解析結果なんですけどー。」
二人がマジックシートに目を向けたので見てみる。が、
(読めない・・・)
そういえば何度かこの世界の文字を目にしたけど、全くわかんなかったな。英語とかそういう問題じゃなくて、象形文字みたいというか、俺からしたら記号みたいというか。
(あれ?じゃあ何で言葉は同じなんだ?)
「読めますか?」
唸っていると横から声をかけられる。
「あっ、マスターすいません。読めないです。」
「記憶喪失ですからね。しかたないです。」
「あー、やっぱり人間が使い魔になると記憶喪失になるんですねー。」
「というとユカリさんも?」
「はいー。そのようでー。」
あの二人、というかシルビアさんもマスターと同じことを考えていたのかな?
「これを見ると、魔力が混ざっていたのですか?」
「はいー。ゼルシムさんはー、純粋な龍人族なんですけどー。他の魔力が混じってたんですよー。」
「・・・そんなことが・・・」
「純粋な龍人族は100%龍人族の魔力なんですよねー、もちろんですけどー。でもゼルシムさんには他の魔力が入ってんですよー。」
「・・・。」
「あのー、」
わけがわからなくなってきたので、手を挙げることにした。
「はいー?」
「魔力ってそんなにわかりやすいんですか?」
「わかりやすくはないですけどー、ちょっと分析すれば魔力の配分はわかるんですー。」
「へー。」
「でもどうやって混じったのかはまだ不明ですー。何かしらの混入魔法でも使わなきゃ他の魔族の魔力は入らないんですよねー。でも彼がそんなことされた経歴なんてないしー、わからないことだらけですー。ひとまず今は任務歴とー、外出歴を調べてるとこですー。」
「何か分かったら連絡いたしますー。」
「お願いします。では。」
「ご足労いただきありがとうございましたー。」
パタパタと手を降ってくるトーラスさん。なんか可愛いな。
トーラス
180cm
黒い鱗黒目
似合わない白衣を着ている




