魔獣、そして母親
「大丈夫?」
ウォルトが出た後、龍人族の皆も部屋から出て行った。
「なんとか。」
出ていく前にもらった水を飲み、レイトは一息つくことができた。
「この世界では人が爆発するのが普通なんです?」
レイトとしては今思い出しても吐きそうになるほど最悪な光景だった。漫画や映画のフィクションとはまったく違う現実を実感したのだ。
「まさか。あんたからみれば変な世界でも、急に爆発することなってないわよ。」
「ですよね。しかも魔獣みたいになるなんて。ウォルトさんがいなかったらどうなっていたことか。」
「・・・そうね。ウォルトもそうだけどあなたもよ。」
「え?」
「とっさに魔法を発動してみんなを守ったじゃない。よくやってくれたわ。よく魔法を発動できたわね。」
「何故か発動出来て・・・。」
「ちょっと見せて。」
サリヤが拳をレイトの腹に当てる。
「順応してる・・・。」
「順応?それって前に言ってたような?」
「ええ、この世界に順応してると言ったほうがいいかもね。自分で魔力を作り出す事が出来ているってこと。」
「はい??何で?いきなり?」
「わかんない。全く、あなたが来てからわからないことだらけ。」
椅子に座りなおすサリヤ。その雰囲気は嬉しそうだった。
「多分私と同じ氷魔法を使ったことで、急激に魔力に慣れたんでしょうね。体が冷たいのも無くなったんじゃない?」
「あっ、そういえば確かに。マスターと同じ魔法だったから順応が早まったんですかね?」
「だからわかんないわよ。帰ったらメイガスと話さなきゃ。」
魔力の割合も増やせるかもとブツブツ言ってるサリヤを見ながらもう一つの疑問を口に出すレイト。
「一応確認ですけど、あんな風に魔獣になることなんてあるんです?」
「・・・あるわけないでしょ。」
それまでとは打って変わって神妙な面持ちになるサリヤ。
「ただでさえよくわかってない魔獣よ?」
「・・・。」
「今回の事が異例だったのか、どうかもわかんないの。」
「・・・。」
「彼の血で何かわかれば・・・何?」
「え?」
「なんか言いたいことでもあるの?」
レイトはサリヤの感の良さに驚きながら返す。
「あるっちゃありますけど、」
「言いにくいこと?」
「はい。」
「言いなさいよ。」
「でも、」
「使い魔と主人は殆どずっと一緒にいるのよ?変な勘繰りあいとかしたくないの。」
「はぁ、じゃあ。」
気合を入れて言葉を出すレイト。
「マスターは魔獣になる事について何か知ってるんじゃないですか?」
「・・・何で?」
「さっき、血が残っていて良かったって言ってたんで。前に血が残らなかった事象を知っているのかなって。」
サリヤの顔は全く変わらない。
「爆発したのは凄い驚きましたけど、人が爆発したら血が残るくらいは俺でもわかりますよ?」
思い出して気持ち悪くなるのを抑えて言葉を続けるレイト。
「でもあの言葉を言ったってことは、」
「血が残らなかった事例を知っているから、ってことね。」
ふぅ、と一息ついて、
「あんた、すごい考察力ね。」
「親友のお陰です。」
レイトは元の世界の幼馴染の考えを読み取る技術が生きたなと考えていた。
「そうね。何から話そう。」
少しの沈黙があり、
「・・・ここからの話は他の人にはしないでね。お父様と一緒に、秘密にしていることだから。」
「了解です。」
「一年くらい前、魔獣が出始めた時期に、目の前で魔獣になった人がいたの。・・・その人は、」
「私のお母さん。」
「お母さん!?」
「そう。そして、」
サリヤは右の袖をつかんで、
「私の右腕を消し飛ばしたのも、お母さん。」
「け、消し飛ばした?切り落とされたとかじゃなくて?」
「切られて、消し飛ばされたの。切られただけならうちの医者がつけられるからね。」
と言いながらマスターは右袖をまくる。マスターの右腕は肩と肘の中間あたりで、なくなっていた。
「うぉ・・・。」
そりゃあ、無いのはわかってたけど、じかに見るとやっぱすげえな。
「ずっと長袖を着ていたから見たことはなかったでしょ?」
「そりゃあ、まあ。」
「こうなったのは、一年位前。魔獣が出始めた時くらいだったの。」




