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エキドナの夢

パキパキパキ


エキドナを貫いた氷の槍はシルビアのブレスを凍らせて止まった。


ドシィン


エキドナの巨体が力なく後ろに倒れた。背にあるはずの針は砕け、蔦は萎れ枯れている。


⦅ワタクシの、ゆめが⦆


エキドナの口からは小さくかすれた声しか出ていない。空を見上げて動けていない。


⦅王になる、ゆめが⦆


「・・・・・・」


いつの間にか顔の横にレイトが歩いてきていた。その体には戦う力は残っていない。


⦅にんげんなんかに こわされるなんて⦆


「・・・夢なんてぶつけ合うもんじゃないでしょ。」


⦅ええ?⦆


エキドナの顔がゆっくりとレイトに向いた。


「夢は自分だけの物。自分だけが見るもの。それを相手にぶつけて戦うのは違うよ。」


⦅・・・っは。⦆


レイトが目を見て言ってきたことを噛み締め、また空を見上げるエキドナ。


⦅そお、かもねぇ ゆめをたたかいにもちこんだときに、ワタクシのゆめはかなえられないのがきまったのかもねぇ⦆


「・・・」


⦅ワタクシの、ゆめ⦆


口から小さいオネイロスが生み出されゆっくりと浮かんでいく。


⦅そらを、とびたかったのよねぇ⦆


レイトの目線まで浮かび上がったそれは、シャボン玉のように弾けてしまった。


⦅・・・⦆


それを見届けたエキドナは目を閉じた。


「これからは自分だけの夢をずっと見れるよ。」


レイトの声は幼い子供にかけるように優しかった。


「レイトさん!!」


レイトの後ろ、凍ったブレスの横から銀色の龍が顔を出した。その顔には疲れの色が見えている。


「大丈夫ですか!?」


それでもレイトの心配をして近づいてくる。


「シルビアさん。うぉ。」


回転しようとしたレイトだったが足がもつれ転んでしまう。


「あっ!」


腕を伸ばしそれを受け止めたシルビア。彼女の大きな爪にレイトが捕まった。


「ありがとう、ございます。」


爪を持って起き上がろうとするも力が入らず手にもたれてしまう。


「い、いえ!」


最初は驚いた顔だったが段々と安心している表情に変わっていくシルビア。視線を倒れているエキドナに向けた。


「倒せたんですか?」


「はい。シルビアさんのおかげです。ありがとうございました。」


「い、いえ!レイトさんのひらめきと力が無ければ倒せませんでした!それに私を夢から覚ましてくれて、私こそお礼を言わないと!!」


「ははは。」


言葉を返そうとするレイトだったが、力が入らないのか言葉が出ない。


「レイト!!」


そこにサリヤやドルファス。ゼール、周囲の兵士が集まってきた。


「大丈夫!?」


サリヤは一直線にレイトに向かって行き、シルビアがゆっくりと彼の体を地面に寝かせサリヤが受け止めた。


「なんとか。」


レイトの小さい笑顔を見たサリヤは安心したように表情を緩めた。


「倒せたのですか・・・?」


ゼールが恐る恐る聞く。


「はい。」


レイトのその言葉を聞いた兵士達は


「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


歓喜の声をあげた。


「それは、良かった・・・。」


ゼールも安堵の表情をしている。


「気を緩めるな!まだ式神の残党処理と住民の救助があるだろう!散れ!」


お祝いムードの中ドルファスが活を入れた。


「「「!!はっ!!」」」」


緊張感を取り戻した兵士達はそれぞれ散らばっていく。エキドナとの戦いで怪我をしている者もいるがその足取りは軽い。


「お父様!!」


「おお、シルビア!・・・龍になれたのだな。」


「はい!!」


「そうか。龍に変身できるようになって、エキドナと戦って、無事に帰ってきてくれた。嬉しい事尽くしだ・・・。」


龍の姿のままシルビアがゼールに近づいた。親子それぞれとても嬉しそうだ。


「お父様。私お母様の最後を夢の中で思い出したんです。」


「あれは、お前のせいでは。」


「私がお母様を刺したのは事実です。その事実からずっと目を背けていました。でもお母様の最後の言葉を思い出したんです。生きてほしいって。私は嫌な事から逃げて、覚えていなければいけない事から逃げていました。でもこれからは逃げません!お母様やユカリさんの事を背負って生きていきます!大きな龍にもなれましたから!!」


少し涙を流しながらもそう宣言したシルビア。その目には迷いは全くなかった。


「・・・そうか。では一緒に背負って生きて行こう。家族なのだから。」


「はい!!」


「シルビアさんが龍に変身できるなんて、あなたあの中で何をしたんですか?」


「まあ、色々と。」


サリヤに抱えられているレイトは濁して答えている。頬を搔こうとしたが、腕を動かすと激しい痛みが起きて全く動かせないでいた。


「まあ、今回の戦いで一番の功労者はあなたでしょうね。シルビアさんをエキドナから救い出しただけでなく、そのエキドナを倒してしまったのですから。」


「シルビアさんの、おかげですよ。」


段々と全身に痛みが広がってきて苦痛の表情を浮かべるレイト。


「レイト。」


「あっ、はい。」


だがドルファスからの言葉には直ぐに反応している。


「ご苦労だった。今回の勝利はお前の活躍のおかげだ。」


「あっ、ありがとうございます。」


「だが、お前はいつのまにあの剣術を習得していたんだ?」


「え?」


「エキドナの蔦に絡めとられ持ち上げられた時、蔦を切り裂いたであろう?」


「そういえばあの固い蔦をいとも簡単に切り裂いていましたね。」


「えーーっと。」


必死に思い出すもレイトの頭の中にはその瞬間は全く記憶されていない。


「すいません。全然覚えていなくて。」


「え?」


「・・・そうか。」


レイトの答えを聞いたサリヤは不思議な表情を浮かべ、ドルファスは少し驚いているようだった。


「ひとまず休め。後の処理はやっておく。」


ドルファスは振り向いて歩き出し、直ぐに止まった。


「お前が無意識のうちに繰り出したあの剣術。あれはミナが習得していた剣術とそっくりだった。」


「「え?」」


今度は驚きの声が重なる。


「・・・お前の中でも何かが起きているのかもな。」


言い残すとドルファスは歩いて行ってしまった。

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