夢を叶える側
蔦がレイトの顔を狙った瞬間、レイトの頭の中ではゆっくりと時間が流れていた。
(怪我を治すと体が小さくなった。こいつを倒すには二方向から攻撃を当て続けて魔力を使い果たさせるしかない・・・。)
レイトの頭の中では後ろからや死角からの強襲で傷を負ったエキドナが思い出されていた。
(あいつの鉄壁の防御は一方向からの攻撃だけに限られるんだ。だから意識外からの攻撃で傷を負った・・・。)
蔦がレイトの眼前に迫る!サリヤやシルビアが助けようと近づいてくるが全く間に合わない。
(皆に、伝えなきゃ・・・。)
レイトの頭の中には生き残る選択肢は無い。何とか伝えようと考えるが、方法が全く思いつかない。視界の端には走りこんできているサリヤが見えている。
(サリヤ・・・。ごめん・・・。)
レイトが諦めてしまった。その時
『死なれると困るのよねぇ。』
聞いた事のある女性の声が頭の中に響いた。
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蔦がレイトに突き刺さろうとした瞬間、その場の誰もがレイトの死を確信した。だが
ズバァ!!!
レイトの右腕が急に動き出し腰の竹刀を振り回して三本の蔦を切り裂いたのだ!
⦅・・・え?⦆
「・・・なっ。」
「・・・。」
周囲の全員がその剣術に言葉を失った。レイトの戦闘能力を知っている者は未知の剣術に。知らない者も刃の無い剣で蔦を斬ったその剣術に。そしてドルファスだけが
「ばかな・・・。」
何かを呟いて驚いた。
「!!!」
飛んでいた意識が戻ったレイトも驚愕の顔を浮かべている。
(今のは・・・。いや!考えてる暇は無い!!)
そのままではエキドナに降りてしまいそうだったが、その剣術に驚いたエキドナが後ろに飛び避けた。
⦅なあにぃ。そんな奥の手があったのぉ?⦆
「さあね!!」
《アイスランス!!》
いつの間にか手に持たれていた竹刀に氷の槍を覆い被せる。
「行きます!!!」
大声をあげてエキドナに向かって槍を向ける!
⦅言わなくてもぉ、分かってるわよぉぉぉぉ!!!⦆
レイトを殺そうと蔦を地面に突き刺し楔にしてそれとは別の蔦を目の前に集中させ、自身よりも大きなオネイロスを作り出すエキドナ!だが、エキドナは気づいていない。
「はい!!!」
後ろにシルビアが降りてきたのを。
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「別の方向から二つの攻撃を同時に食らわせる?」
「はい。」
エイトがシルビアの背に乗っている時。エキドナの意識がサリヤやドルファスに向いているのを見てレイトが話し始めた。
「さっきのダースレイで意識外からの攻撃が有効なのが分かりました。でも今のマスター達の奇襲でこれからは全方位を意識するようになると思います。」
「じゃあもう意識外からの攻撃は通用しない?」
「はい。ですがおそらくあの防御能力は一方向からの攻撃しか防げないんですよ。だからさっきまでは意識外からの攻撃に弱かったんです。」
「なるほど!じゃあ別々の方向から攻撃を仕掛ければ良いんですね!」
「それも継続的な攻撃なら防御を違う方向に回せなくて倒せると思います。」
「継続的な、攻撃?」
「はい。シルビアさん。龍のブレスは撃てそうですか?」
「・・・正直撃ったことが無いので、分からないです。」
「・・・ですよね。」
声色の変化からシルビアの不安が伝わる。
「でも!それが必要なら絶対に撃ってみせます!レイトさんと一緒なら何でも出来る気がしますから!!」
声色が明るくなり、気分が高揚しているのが分かる。それを効いたレイトは笑顔を浮かべて
「信じてます。」
ぽんぽんと背を叩いた。
「俺が行きますって合図を送ったらエキドナを挟む位置に降りて来て下さい。一緒にあいつを倒しましょう。」
「はい!」
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(レイトさんは私を夢から覚まさせてくれて、信じてくれた!ここでその恩と信頼に答えないと生かしてくれたお母様に顔向け出来ない!!)
シルビアが覚悟を決めて降り立ち地面に踏ん張った!!
⦅死になさぁぁぁぁいいぃ!!!!⦆
エキドナがレイトに向かってオネイロスを撃ち出そうとする!
「シルビアさん!!」
「はい!!」
それを見たシルビアが口を大きく開ける!
(何度も夢に見た龍のブレスを撃つんだ!!)
「はあああああ!!!!!」
ドゴォ!!!
シルビアの口から水のブレスが放たれた!!それは一直線にエキドナに向かって行った!!
⦅なあにぃ!!??⦆
後ろからの急な攻撃に驚くエキドナ。
⦅こんなものでワタクシを倒せるとぉ!!⦆
蔦で踏ん張り、更にオネイロスを大きくしようとする。が
「あああああああああ!!!!!」
シルビアが更に魔力を籠めてブレスを大きくした!彼女の四肢は地面にめり込んでいる!
⦅ええぇ!!?⦆
その勢いにエキドナも驚き、その体が地面から離れ前に押し出された!!
⦅でも、そんな攻撃じゃワタクシに傷をつけることは出来ないのよぉ!!⦆
驚いた表情をしながら余裕の声を上げるエキドナだったが、自身のオネイロスで見えていなかった。
《アイスホールド!!》
レイトが自身と竹刀をしっかりと固定しているのを。
ガキィン!!!
レイトの竹刀の切っ先がオネイロスにぶつかり止まった!!更にブレスとオネイロスに挟まれエキドナの動きも止まった!
⦅まさか、これが策!!?⦆
「悪いかぁ!!!」
ガガガガガ!!!
少しずつオネイロスが削られていく!
⦅!!!ワタクシの、オネイロスがぁ!!⦆
削られていくのを認識したエキドナは残りの蔦をオネイロスの前に出し、むやみやたらに突き刺し始めた!
⦅お前ぇ!!とっとと、くたばりなさぁいぃ!!⦆
蔦はレイトの周囲の氷を壊していく!
「ぐぅぅ!!」
支えの氷が壊され徐々に押されていくレイトだったが、氷を継ぎ足し何とかその場に留まる!だがその体に掛かる負荷は大きく苦痛の表情を浮かべている。
ガキィン!ガキィン!!ザク!!!
⦅!そこにぃ!いるのねぇ!!⦆
氷を壊していた蔦がレイトの体に突き刺さる感触を得たエキドナは、その蔦を更に押し込もうとする!
「がは!!」
全力を込めて踏ん張っているレイトの口から血が噴き出した。それを皮切りに徐々にレイトが後退していく。
「ぐぅぅぅ・・・。」
蔦も徐々に体内に入り込んできて痛みが増してくる。外からと中からの痛みでレイトの瞼が閉じる。
(これは、やばい・・・。)
膝が折れそうになる。オネイロスにひびが入る音と共にレイトの氷にひびが入る音も聞こえる。
(せっかく、倒せるかもって、ところまで来たのに・・・。)
持っている竹刀も砕けそうになっているのが音と感触で分かる。
(・・・・・・もう。)
バキィ!!
竹刀が砕けた音がして、レイトの心が砕ける。
()
レイトの瞼の向こうで何かが光始めた。
(・・・)
目を開けると竹刀と、首に着けていた石のペンダントが光っている。
(・・・・・・)
その向こうから白いオネイロスが迫ってきているが、レイトの世界ではとてもスローに見え光の中に誰かが見える。
(・・・・・・ユカリ、さん。)
それは最後に見た顔。泣きながら、口から血を吐きながら、絶命する姿。
(・・・駄目だ)
思い出す。
(・・・生きなきゃ!)
夢を払いのけこの世界で生きると誓ったことを!
「ああああああああああ!!!」
目の前まで迫って生きていたオネイロスを両手で止める!!
⦅なぁ!?⦆
レイトを押しつぶしたと感じていたエキドナから驚愕の声が出た。
「ここで死んでぇ!ユカリさんのところにはぁ!!行けないんだよぉ!!!」
自身の体を凍らせる。蔦も凍り、体内に入ってくることは無くなった。
「ぬぅぅぅぅぅ!!」
自身の体でオネイロスを押しとどめているうちに背後に巨大な氷の槍を作っていく。周囲の氷を使って素早く作り出していて、槍には竹刀の破片も含まれている。
⦅人間ごときが!!ワタクシ以上の夢なんてないくせに!!!邪魔をするな!!!!⦆
少しずつだが押し戻されているエキドナが怒りの悲鳴を上げた!!
「俺の夢はぁ!!この世界で生きることだぁ!!!」
《アイスランス!!!》
氷の槍がオネイロスに突き刺さる!ひびが入っていたオネイロスはいとも簡単に砕け散り
ドシュ!!!
⦅がはぁぁ!!!⦆
エキドナの体を貫いた!!




