広がる夢
「シルビアさん!」
彼女を確認したサリヤからの呼びかけに応じる気配がないシルビア。
「シルビア!どうしてこんなところに!!」
ゼールも呼びかけるが応じない。
「貴様!シルビアに何をした!!」
⦅ワタクシは背中を押しただけよぉ。夢の世界に飛び込む背中をねぇ。⦆
「夢の世界に、飛び込む!?」
⦅そぉ。夢の世界はとっても甘美なのよぉ。思い描くすべてが叶えられるのぉ。彼女はいとも簡単に落ちてくれたわぁ。そして時間をかけて彼女だけの夢を作り上げてくれたのよぉ!!!⦆
エキドナは動けていないもののとても嬉しそうに語っている。シルビアはこのやり取りに加わろうとせず、ふらふらと揺れている。
「でも、シルビアさんを出してくるのが奥の手というのならば失敗だったようですね。」
《アイスホールド》
シルビアの足を氷で封じ込める。その氷が胴体や腕まで到達しても一切のリアクションは無く虚ろに前を向いているだけだ。
「彼女の動きは封じられました。状況は元に戻りましたよ。」
⦅そんなことないわぁ。言ったでしょぅ?時間があればってぇ。⦆
フワァ
突如シルビアの体の中からオネイロスが現れた。
「シルビアさん!!」
それは彼女を包み込むように球体に大きくなっている。
《ダースレイ》
ドルファスが魔法を放つも
パキィン!
乾いた音がして弾かれてしまう!シルビアを包み込んだ球体はゆっくりと浮かび始めた。
⦅普通の夢は叶えたら終わってしまうわよねぇ?ワタクシでも叶えられた夢からは力を得られないのよぉ。それにぃ、どんなに良い夢でもワタクシが食べる度にワタクシにもたらす力は減っていちゃうぁ。でも彼女は絶対に叶わない夢を見ているのよぉ。それがワタクシに無限の力をくれるのよぉ!!⦆
シルビアの向こうにいるエキドナの怪我は治っていき、背中からは針が生えて更に針から幾本もの蔦が生えていた。その大半は空に向かって伸びていき、内二本の蔦を床に刺しゆっくりと上がっていく。
「馬鹿な!!回復魔法を使っていないのに傷が消えていくなど!!」
⦅夢の力って素晴らしいわよねぇ。⦆
驚愕しているゼールをよそにシルビアを飲み込んだ球体は、ゆっくりと大きくなっていく。
⦅彼女の夢が完成すればワタクシに勝てる者はいなくなるぅ!夢が完成した時、この国を飲み込んで、ワタクシの王としての凱旋が始まるのよぉ!!!⦆
上に飛んだエキドナは玉座の間にいる面々を見渡す。
⦅ああ、大丈夫よぉ。貴方達はワタクシの凱旋には呼んでいないからねぇ。ここで永遠の夢を見ていなさぁい!!⦆
言い終わると同時に背中の針から蔦が幾本も生み出されサリヤ達に向かって行った!
《アイスウォール!!》
バキィン!!
サリヤはそれらを全て止めようとしたが数瞬で壁が破壊されてしまった!
「なっ!!」
《ダースアロー》
ドドドドド
彼女の後ろから凄まじい速度で黒い矢が飛んできて蔦を全て弾き飛ばした。更に幾本かの矢がエキドナに当たるが、傷は全くつかない。
⦅ふふふ。⦆
蔦をゆっくりと戻しながらエキドナは不敵に笑っている。その体に先ほどまでついていた傷は無い。
「傷が全て治るとは。貴様の夢の力は相当強いものだな。」
⦅ええ。抵抗しても無駄って分かってくれたぁ?彼女のオネイロスはどんどん大きくなっていずれこの国を覆いつくすでしょうねぇ。ここからその光景を目に刻むと良いわぁ!⦆
エキドナが手を横にやるとシルビアが入ったオネイロスがゆっくりと壁から出て行った。
「でも力の源がシルビアさんの夢ならシルビアさんを起こせば!!」
《アイスホールド!》
それを阻止しようと氷でオネイロスを止めようとするサリヤだったが
バキィ!!
オネイロスは一切止まることなく壁から出ていき、城下町の上空で止まった。
⦅それも無駄よぉ。ロンナであの使い魔が入った夢とはまるで違うのよぉ。あんな小手先の魔力操作じゃあ入れないぃ。鍵が無ければ入れないぃ。もし中に入れても彼女の下にはたどり着けないぃ。もうあのオネイロスが出来た時点でワタクシが王になることは決まっているのよぉ!!⦆
笑顔が無くならないエキドナ。オネイロスに入れないことは身をもって知っているサリヤが悔しそうにシルビアのオネイロスを見た時、何倍にも膨れ上がった球体の下に龍とその背中に何者かがいるのを見つけた。
「・・・レイト?」
龍の背中に乗ったレイトが球体に手を触れていたのだ。
⦅貴方の使い魔も思いあがったようねぇ。前は入れたから今回も入れると思っちゃたのかしらぁ?⦆
エキドナはそれを見て嘲笑うように吐き捨てる。レイトがオネイロスから手を離し、腰の竹刀を掲げると
「」
音も無く中に吸い込まれていった。




