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そして母になる

――そしてまた、高い壁に区切られた空間が現れた。


「ここが王族の居住棟。お前もこれからはここで暮らす」


「わぁ……近くで見るとさらに立派……」


 ――サーラさんからの事前情報によると、まず、王妃となる私にいわゆる姑的な存在はいない。ラビ陛下の生母は若くして亡くなったそうだし、ラビ陛下の兄弟たちがクーデターを企て捕まった時に、その母である他の妃たちも一緒に処刑されている(怖)。

 

 そのため現在ここにいるのは、陛下の側室が3名とその女官たち、それにとある高貴な血筋から迎えられたという養子。


 それとここに暮らしているわけではないが、陛下の家族として、例のクーデターに加わらなかった妹君・イルタニさんがいる。イルタニさんは隣の都市の神殿で女祭司(エーントゥ)を務めている。


 妹君が私のことをどう思っているかはわからない。だが側室の方々や養子は確実に私を敵視するだろう。


 側室の皆さんは首絞め被害にあっているだろうから、陛下のことを好いているかは謎だ。とはいえ、通ってこない女嫌いの陛下が突如正妻を迎えて帰ってきたらいい気はしないだろう。


 養子の立場からすると、正妻が子を産むことになれば自分の立場が危うくなる。私は邪魔な存在になるはずだ。


 つまりここにいる人はみんな敵とみて間違いない。

 

 拳に力をこめる。


 再び現れた立派な門をくぐると、男の子が2人と女性、その後ろに見るからにスタイルのいい女性が3人立っていて、陛下を見るなりみんな一斉に頭を下げた。さらにその後ろには多数の女性がいる。

 

「陛下の無事のお帰り、心よりお祝い申し上げます」


 みなさん息ぴったりにご挨拶。


「留守をよく守ってくれた。感謝する。面をあげよ」


「陛下の御心のままに」


 前列の人たちが顔を上げる。陛下は背の高い方の男の子に歩み寄った。


「少し背が伸びたか」


「はい!父上のご帰還、本当に嬉しいです」

 

「あぁ。……ノア、紹介する。第ニ王子のイルナだ」


 紹介されるなり、ニコッと微笑むイルナ王子。この子が養子の王子か!綺麗な褐色の肌にサファイア色の瞳。10代後半くらいだろうか。まだ幼さが残るものの、これまた美形な男の子だ。かわいい〜!


「お初にお目にかかります!」


「あ、王子……こちらこそよろしくお願いします」


「こんな可愛らしい方が母上になってくださるなんて、俺すっごく嬉しいです」


「母上」

 

 こんなおっきな息子を産んだ覚えはない。


「……隣は第三王子のヌマハ。第一王子はとある国に派遣している。俺たちの婚礼までには帰るだろう」


 イルナ王子の横にちょこんと立っていた小さな男の子、第三王子・ヌマハ王子。ピッカピカのランドセルが似合いそうなまだまだ幼い子供だ。それでも綺麗なサファイア色の瞳をキラキラさせて堂々としている。えらい。かわいい。


「ヌマハです。神より賜りまし母上、僕もお会いできて嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします」


「母上」

 

 いや、養子の王子3人もいるんかい。

 社畜女子、突如3児の母になる。


 全く敵意を感じさせない2人の王子の後ろに立つ、敵意が滲み出している3人の女性。側室の方々だろう。みんなそれぞれ眩いばかりの美しさを放っている。


 インスタで見た加工美女達がそのまま具現化したらこんな感じだろうか。パッと見笑顔だけど、チラチラ睨まれているのを感じる。


 でもその女性たちとは別に、穏やかな目を私に向けてくる方がいる。王子たちの隣にいた女性。陛下と同じエメラルド色の目だ。


「……兄上、お元気そうで安心しました。神に感謝申し上げます。そしてこちらが噂の……ラルサの神殿(ジックラト)で、神より賜りしノア様でいらっしゃいますね?」


「そうだ。お前も変わりないな。安心した。……ノア、妹のイルタニだ」


「イルタニです。どうぞよろしゅう……ノアお姉さま」


 品よく膝を曲げ、挨拶をするイルタニさん。

 お人形のように整った目鼻立ちにおっとりとした話し方。なんて可愛らしい方なのだろう。さすがラビ陛下の妹君だ。


「ノアです。どうぞよろしくお願いします」


 私も精一杯のエレガント挨拶をお返しする。

 ニッコリ微笑んだイルタニさんは、今度は私の後ろに目を向ける。

 

「……サーラも元気そうね」


「はい、陛下と神のお力で無事帰ってこれました。イルタニ様もお変わりなく。相変わらず美しいわ」


「うふふ。ありがとうサーラ」


 サーラさんとイルタニさんは目を合わせて微笑み合う。仲がいいのだろうか。

 

 私の疑問が見えたのか、陛下が小声で教えてくれる。


「……サーラは俺たちの遠い親戚だ。イルタニとは昔から仲がいい」


「え!サーラさんって王族の方だったんですか?!」


「正確には王族ではないが……サーラは俺の母の妹の夫の姉の娘だ」


「母の妹の夫の…………え、なんて??」


 遠。

 正月にも会わないよ、そんな遠い親戚……


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