アニーとロレインのここにいる意味
木の床に直接寝転んで、いつものようにアニーとロレインは就寝する。
道場の仕事着を寝間着にして、それぞれに粗末な薄い布団をかけて、自分の腕を枕にして、窓の外の月を並んで眺めていた。
「外食、楽しみだなっ」
アニーがロレインに話しかけた。
「肉、あるかな?」
ロレインは口まで布団に潜り、何も答えずに月を眺めている。
「元気ないなっ? いつものスマイルがないぞっ?」
「ねぇ、アニー……」
子どものように弱々しい声で、ロレインが言った。
「私たち……今、なんで日本にいるのかな」
「どうした? ホームシックかっ?」
「それはない」
楽しくない過去を思い出すような目をしてロレインが答える。
「でも……何を目的に私たち、ここにいるんだろう? って──」
「一応メイファンを殺す目的はあるぞっ」
「ふふふ……。メイファン殺したらあの肉まんが食べられなくなっちゃうよ? 大体基本的には仲良しなくせに」
「あいつとはなんていうか……似た者同士だからなっ」
「うん。二人とも壮絶な過去を背負っちゃってるもんね。私──自分の過去がわがままなもので申し訳ないくらい──」
「俺もメイファンほどじゃないぞっ。あいつ、産まれてすぐに捨てられてるし、色々迫害受けて来たみたいだからなっ」
「その上『気』を使う力があるのを知られてからは国家にいいように使われてるもんね」
「あいつは孤独で悪いやつだが、結構尊敬できるところもあるぞっ。面白いしなっ」
「ふふふ……。似た者同士を褒めたら自分のことも褒めてることになっちゃうよ?」
「そうだっ。俺は自分のことも尊敬しているっ」
「そうだよね。アニーはあんな過去があったのに明るくて、人なつっこくて……私も尊敬してるよ」
「ロレインのことも尊敬してるぞっ」
「ふふ……。私のどんなところを?」
「辛い道場のルールを守れるじゃないかっ」
「あはは。肉まん、食べちゃったけど?」
「あれはシローに幻滅してのヤケ食いだろっ?」
「うん……。でも、シロたん、大好き」
「目的……か」
アニーはごろんと上を向くと、楽しそうに呟いた。
「俺たちがここにいる目的……。なんだろなっ?」
「強くなることかな?」
ロレインは答えを求めるように、アニーに聞いた。
「強くなって、パパやバスタードさんが復活しても勝てるように──。世界を守るため?」
「どーでもいいっ!」
アニーは手足を伸ばして、キャッキャと笑った。
「生きてればいいんだっ。生きるのは楽しいぞっ!」
「ふふ……。私たち、清貧な生活してるから、少しのことでも楽しめるもんね」
「生きるのは楽しいんだっ。意味なんかいらんっ」
「ふふ……。アニーって、動物みたい」




