〇日目「エビ揉め」6
100日毎日小説チャレンジ、六日目です。
今回は短めです。ちゃんと寝るため。
「『挑戦してみろ』って言ったって……」
悪友の思わぬ提案にエイトは困った。そもそも彼にとって創作はもう終わった話、随分昔にすっぱり決別したのだ。今更蒸し返されても困惑でしかない。
そもそもなんでそんな事、と意味不明な言動のジョーを暫く訝しんで、ふと気が付く。
単にエイトを心配しての事なのだと。
……いつのまにか十年以上か。何だかんだ、長い付き合いだしな。
偶然ネットの隅で知り合い、お互いオタクという事もあってか気が合い交流を続けて。
いつの間にやら、家族を除けば人生で一番の付き合いは彼になっていた。
けれど、
「そんな事言っても仕事があるだろ。書く時間なんてねーって」
「いーや、あるね。いっつもお前十九時ぐらいにはぶいちゃに来てんだろ。定時ダッシュで退勤して、帰宅して直ぐだっけ? そっから考えたら飯と風呂の時間考えたって五時間ぐらいはあんだろ?」
「まあ五時間くらいは……って、おい。さり気なく人の睡眠時間削ったな?」
「ちょっとだ、ちょっと」
「中年のHPの低さ舐めんなよ」
「しゃーなしだな。じゃあ四時間で勘弁しといてやる」
確かにジョーの言う通りだった。
エイトが当時を振り返ると、記憶が定かなら調子の良い時には毎時一〇〇〇字書いていた。仮に本調子じゃないと考えても四時間なら概ね一日二〇〇〇字は固く、短いエピソードが十分書ける字数だ、と算盤を弾く。もっとも何を書くか決まっている時という前提はあるが。
「応援するぜ」
零と一で紡がれた無機質なネットワーク越しにもアバターじゃない、ゲームの向こう側の自分を見つめ返してくる。やれない事はない、と。どこまでも真っすぐな声からそう信じていそうな無謀な青臭さを感じてエイトは苦々しく顔をしかめる。
信じてもらえるのは無論有難い事だ。そこに疑いはない。普段だったら純粋に嬉しいはずだ。
でも現実は巻き戻せないのを彼は知っていた。
どうやったってあの頃の根拠のない自信に従っていた馬鹿な自分には戻れないんだ、と薄暗い気持ちがこみ上げてくるのを感じる。
「もう三十七だぞ」
「知ってる」
「何年も書いてねーんだぞ」
「いいじゃねーか。復帰すれば」
「いい加減、遅すぎるだろ」
「年齢なんて関係ないだろ。小説を書くのも、挑戦するのも」
次は (6.5/7) になります。刻みます。その間に次の章の準備を……
リアクションありがとうございます。はじめて見ましたb
リアクションを使って、先の展開をファン投票するみたいな使い方ありそうだなと思いました。(昔マガジンの漫画で投票で登場頻度が決まるのがありましたね)
あとエピソードタイトルの「初日」がいずれ「0日目」になるかもしれません(作中ではまだ100日チャレンジが始まってないため)
おやすみなさい。