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〇日目「エビ揉め」4

100日毎日小説チャレンジ、四日目です。

可愛い新キャラ登場です。美少女アバターだからきっとかわいいはず。書いてないけど

「「「「《解放(リリース)》!」」」」


 三人の発したキーワードを合図に世界が鼓動を始めた。モンスターの様に蠢く木々が一行を招き入れるかのように左右に分かれ、躊躇なく先へと進むと次は地割れが発生。天変地異の連続を潜り抜けていけば最後は視界を奪う霧が立ち込める空間。

 小さな冒険を経てやがて彼らが辿り着いたのは、月夜が美しい秘湯であった。

 現実であればむせかえるような硫黄臭に満ちた癒しの空間だろう。

 

 ワールドギミック。

 今エイト達がいるワールドは彼らの物好きな友人が趣味で作製したのだが、その彼がワールドに組み込んだ遊び要素の一つがこのワールドギミックなのだ。

 それを偶然見つけて以来、エイト達はこの秘湯でコソコソとある集会を楽しんでいた。


「全員準備はいいか!」

「「「おう!」」」


 天然の湯舟を前に、一斉に脱衣を始める美少女アバター達――ただし男だ。

 

「今週もお疲れ様! KP!」

「「「KP!!!!」」」


 カシュ――

 全身に装着したトラッカーやカメラによるトラッキング、あるいは独自のモーションによって乾杯(けー・ぴー)と片手で虚無を持ち上げて、顔の前に傾けて喉を鳴らしていく一行。

 そう、酒盛りである。

 毎週金曜日の夜。温泉に相応しい衣装を各々用意して互いのアバターやくだらない話を肴にアルコールを流し込む。いつから始めたのかもはや酔いで誰も覚えていないが、いつしかこれがエイト達の週末恒例行事となっていた。

 ちなみにマナーとして全裸を暗黙のルールで禁止しているため、彼らの服装は水着、スク水、タオル、ほどんど裸の何かとなっている。


「それが例の《新作》でげすか?」

「いいエロ布だろ? へへ、どうよ」

「なんというか……少し動いただけで色々見えそうでげすな……」

「実際結構ヤバいぜ」

「ほう? どうヤバいのか是非堪能させてはくれまいか?」

「ハン、見せるかっつーの。ってか、ここ以外じゃ着る機会ないくらいにはやばいぜ。まあお前らに見せるつもりもねーけど」

「そ、そんなぁ……お慈悲ー!」

「無念……」

「っけ。変態どもめ。おっそうだ。こんなポーズなんてどうよ♡」


 グラビアアイドルよろしく胸を強調したり尻を突きだしたりと様々なポーズを取り出すジョー。

 ユーザー名・ゲスは何故か疲れたような声で、ノブはどこか苦しそうに息を荒げた。


「……ふぅ。辛抱たまらんでげすな」

「ヌゥ……なんという卑猥さだ……」

「卑猥とは失礼な。俺様というダイヤがこの完璧なアバターとエロ布を纏ってんだ。芸術だろ」

「あっはい」

「はて? 余計なモノが何やら混じっているような……」


 不満そうにジョーは彼らをどこからともなく取り出した刀の錆にし、被害者達は楽しそうに奇声を上げていく。

 一方、そんな三人の様子を肴に湯の中で静かに少しずつ飲んでいるエイトだったが、ジョーが今度はエイトの方へと『エロ布』を見せびらかすために温泉へと入ってきた。


「なあ、お前はどうよ。これ」

「……」


 エイトは言葉が出ない。

 何故なら上から屈んで話しかけられているせいで彼には筆舌に尽くしがたい眺めが見えていたのだ。場所が違えば見えてはいけないものが見えていただろうが、幸い湯気のおかげで親友の貞節は守られているという際どい状態。それを本人が全く気にしていないのが致命的だった。

 少し悩んでエイトは大人しく性欲をオブラートに包む。

 

「似合ってる」

「だろ!?」

「ああ。他の人にはここまで着こなせないだろ」

「かかかっ――さすが話が分かるぜ。お前はよ!」


 エイトの横へと並んで湯に浸かり、強引に肩を組んで笑うジョー。彼の胸元にできた三角形の泉から目を逸らしつつ、エイトは手元の酒を一口飲んだ。他の参加者も温泉に飛び込んで来て。

 今日も彼らの酒宴が開幕するのだった。

 

「そういえばもう見たかー? うみやお先生の《清ァカ》イラスト。いやマジし●いわ。うぃっく」

「わかる……」

「この心に沁みるエロさが本当たまんねーんだよ……あー。俺のウイ、早く空から降ってきてくれ……」

「待ちなされ。《清ァカ》といえばミーモネル先生は外せぬ。この前の利便屋のスケベブックなんて激シ●で(せがれ)が枯れ申した」

「わかる……」

「いつも容赦ない展開だが……このスピード感とシチュ。そして清渓川よりも透き通った彼女たちの愛情がどうしようもなく拙者に刺さるのだよ……」

「それな♡ やっぱミーモネル先生は鉄板だよなー。いつもドチャシ●だし」

「待つでげす。エロは《清ァカ》だけじゃあありゃーせん。ささっ、どうぞこのURLをお納めください」

「お! 《ほにょれぇぶ》の船長とは。貴様いいセンスだ!」

「……フォローしておくか」

「姑息な、デカパイ仮面めっ……! ……ヌッ!」

「ははは。こやつめ」

「ぐび……」

 

 最近の話題の中心はソーシャルゲーム《清らァーカイブ》や人気バーチャルライバーに関するエロ語り・性癖語り。時には作品や仕事の愚痴、匿名でのSNSですら言いづらい過激な話など。

 彼らはこの密会をそういう捌け口として利用していた。


「で。そういうお前はどうなんだよエイト」

「……なんだ?」

「なんだじゃねーよ。酒飲むといっつも澄まして全肯定オタクになりやがって。ああん?」

「いや……別に……俺は何でもいい訳じゃ……」

「だったらてめぇもさっさと大親友の俺様に最新の推しを開示しろつってんだよ」


 皆が見守る中、確かに黙ってばかりも悪いか、と思いながら虚無の缶を煽った。下品にゲップを吐いて得た失笑をバックに虚空を眺め、いの一番に夜空に浮かんだものを呟いた。


「《おにみゃあ》……」

「ほお! 《お兄ちゃんはおしみゃあ》でげすか!?」

「うむ、わかるぞ。拙者も《おにみゃあ》は好物だ。あのテンポとノリの良さに作者の性癖が節々に滲み出た展開。言ってみればあそこはロリと姉の満漢全席よ。その上、二次創作ではみはりの薬の力で様々な都合のいい作品も楽しめて一石二鳥」

「いや、みはりは妹で……」

「くぅ~~~~! このロリコンどもめ!」

「いや、俺はロリコンじゃなくてTS百合が……」

「ド変態どもの未来に、KP!」

「「KP!!!!」」

「まあ、いいか……」

本当は次でこの初日が完成する予定だったのですが、この話がちょうどいい長さになったので(話がまだ長くなりそうなので)ここで一旦切って、後2話で初日が終わります。

あと評価ありがとうございました。嬉しいです。励みになります。

おやすみなさい。

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