一日目「ラブコメ回と磔刑」6②
100日毎日小説チャレンジ、8日目です!
時間がなくて、昨日書ききれなかった部分を投稿!
これで、アン・ズーが間違えてエイトをこのワールドに招待した、という説はなくなった訳だが、
「うーん……」
それでもエイトは自信のなさから、彼女の後ろをついていきながらも余計に悩んでしまう。
「だったら……どうして、僕なんですか? まだ知り合ったばっかりなのに……」
それに彼女は大人気イベントキャストで、自分は何でもない《VRCh@er》。
いくら知り合いとはいえ彼女からデート――勿論冗談だろうが――に誘われるような心当たりがエイトには全くなかった。
アン・ズーは振り向いて、首を傾げる彼に同調して尋ねる。少し小馬鹿にしたように薄笑いで、
「なんでだろうね?」
「う~~~~~~~~ん……」
「何でだと思う?」
「う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん…………」
腕を組んで見上げるエイト。脳裏に幾つかの可能性が浮かんでは消えてを繰り返していくのだが、
「…………分かりません」
「ふふっ。なーいしょ。教えてあーげないっ!」
情けなく降参するが結局アン・ズーは意味深な表情のままで何も教えなかった。エイトを試しているつもりだろうか。
エイトは立ち止まって、暫く本格的に悩んでみる事にした。
「うーん。ありそうなのは……――」
本命、ただの暇つぶし。この時間に呼べば来そうなのがエイトだけだった。
対抗、実は頼み事。何か面倒ごとを引き受けてほしくて、何でもないエイトに頼もうとしている。
単穴、意外にもお金目当て。持ち前の愛嬌で、エイトが女性に弱いのを良いことにプレゼントを強請る。
大穴、本当はエイトの事が大好き。彼の隠された男らしさに惚れて一気に勝負しに来た。
「いやいやいや……流石にそれはちょっと。ありえないありえない……」
エイトはあまりの恥ずかしさに赤面。最後の可能性をすぐに頭から追い出そうと手を振り払っていると、突然目の前にスロットマシンの如く高速回転するカラフルな何かが――
「うわぁっ!?」
思わず現実でもひっくり返るエイト。それはエイトの顔面に当たると一度高く空を舞って、それから地上を数回跳ねて転がる。
正体は浜辺によく似合うビーチボールだった。このワールドに最初から用意されていたオブジェクトなんだろう、とエイトは手に取る。
「こらー! もっとあたしとのデートを楽しめ~~~~!!!」
一人の世界に入っていたエイトに「全くもう!」とアン・ズーは愛嬌豊かに怒る。
エイトはパスを求める彼女に「ご、ごめん!」と投げ返すと、
「そ、れ、と! まずあたしに、何か言う事ない、のっ!?」
「何か……? 何かって、何!?」
ビーチボールと一緒に疑問を投げられて困惑しながらアン・ズーに再び投げ返す。
そんなエイトに対して大ヒントとばかりにワンピースの裾を摘まんで自慢げに一回転。アン・ズーが全身を見せながら、
「ふふふ、どう? 似合ってる?」
「うっ……」
「――か~ら~の~~……てやっ!」
可愛すぎる。
自分の可愛らしさを完全に理解した動きだ、とエイトは面食らって、ついでに戻ってきたボールも受け取り損ねた。
追いかけて拾いながらも頭の中には「可愛い」「似合ってる」のセリフが大渋滞。けれどあまりにも直接的すぎてエイトに言えるわけもなく。結局「う」とか「あ」とか呻きながら、
「う、うす……!」
「あはは。ありがと」
なんとか彼が絞り出した拙い誉め言葉とへなちょこボールを、アン・ズーは嫌な顔一つせず百パーセントの笑顔で受け止めた。
「これでもあたしとのデート券は一時間二万なんだから。折角二人っきりなのに一人で悩んでるだけなんて損だよっ」
「な、なるほど……」
「だから今夜だけは小説の事は忘れて、あたしに浮気していいんだからね。なーんて……」
そこまで言ったアン・ズーは微笑んだまま徐々に顔を赤くして、
「やば、恥っず……。ちょっと頭冷やしてくる!!!」
そう言って大海原に向かって走って静かに沈んでいき、残されたエイトが束の間にほっと息を着くのだった。
※単穴:競馬の予想をする時に三番目につける評価。一番が本命、二番目が対抗、そして単穴です!
いつもたくさん読んでいただき、ありがとうございます!
アン・ズー、かわいすぎんだろ・・・って思いながら書いたパート6です!
数日前のパート5から、話の展開・まとめ方に悩んでいたので、なんとか書けていったん休憩。。。
それから評価ありがとうございます。
単純に嬉しいですし、読んでくれる人がいるんだーって思えるのが心の栄養です。
ではまた明日!




