一日目「ラブコメ回と磔刑」4③
100日毎日小説チャレンジ、3日目です。
今週も頑張っていきましょう!
残り三時間。
それを知らせる鐘の音のようにエイトの腹の虫が空と鳴った。
「あー……………………腹が減ったなー……………………」
机に突っ伏しながらエイトはワールドに設置された時計を横目に呟いた。
思えば昼から何も食べていないエイトだが、だからと言って十分二十分の時間すら惜しい。進捗が芳しくない状態では夕食に逃げ出せなかったのだ。
「はぁーーーー……………………もう駄目かもー」
結局エイトにはジョー達が帰ってから『天啓』や『閃き』は訪れなかった。
一割。
それが今書いている第一話の現在の進捗だった。もっとも完全に手が止まっていていくら待っても完成しないという意味では、実際の進捗は限りなくゼロに近い。
いくら待っても完成しない――すなわち、完成させるには明らかにキーパーツが欠けていた――のだが、
「いや分からん……全然分からん……。どうしたらいいんだ……?」
もしこれが漫画だったら口から魂が出てるかもしれない、と妄想する程度の精神的余裕はある様だが。
途中、何か糸口が掴めればと手元に積んでいたラブコメライトノベルに手が伸びかけるが鉄の意思で断念。このように決してサボっていた訳ではなく、時間以外にも経験も足りず、展開を切り開けないでいた。
「僕ってこんなに話作り下手だったっけ……そういえば話を考えていた時はいつもユミィがいたっけ……」
唐突に相棒・ユミィが恋しくなってまた溜息が出てしまう。
ふとエイトはゆっくりと顔を上げた。気分転換に原稿ではなく《VRCh@》のメニュー画面を開き、溜まっていた通知を整理し始めた。所属しているグループのイベントのお知らせがいくつかあったがそんな暇もないので消去。いくつかその工程を繰り返していると珍しい物が残る。
「アン・ズーさん……?」
それは彼女からのフレンド登録だった。
おそらく昼間会った時に送られていたのだろうが、ジョーに怒ったり、ユミィに会ったり、ずっとプロットに集中していたりでエイトも気にする余裕がなく気付けないでいた。
「まあ……アン・ズーさんならいいか……」
そう呟いて気楽に承認。
もし普段のエイトであれば通知を見た時点で驚き咳き込み、緊張して承認ボタンも中々押せなかっただろうが、今日の彼にはそんな元気はないようで。それを本人も自覚して自嘲気味に失笑していると、更なる通知がやってきた。
見慣れない青い手紙のマーク。
「……? 何だっけ、これ」
飲み物を一口含んでからそこに触れて、
「っ――――――――!?!?!?」
吹き出した。
咳き込んだ。
奇声を上げた。
「っげっほ、っげほ、っげっっほ…………は、――ハアアアアアアアアアア!?」
一旦落ち着いて現実のモニターを拭いた。
それからエイトはもう一度目を疑いながら確認した。
招待が来たのだ。
送り主は、アン・ズーである。
《VRCh@》ではワールドのインスタンスを作る際に入れるユーザーの設定が可能で、例えば知らない人でも誰でも入れるような設定から、自分のフレンドしか入れないようにもできる。時には誰も入れないインスタンスだって用意できるのだ。
さて誰も入れない場所に誰が入るのかといえば、正に招待されたフレンドである。
「僕が……? 何で……?」
つまり――他にも誰か呼ばれている可能性もあるが――アン・ズーの秘密の場所へエイトが呼ばれた訳で。
端的に言えば、彼女からエイトへの遊びの誘いなのである。
何もメッセージが添えられていない意味深な招待状を凝視するエイト。
「アン・ズーさんって確か……かなり大人気のイベントの、大人気キャストさん、なんだよね……?」
以前会った時に彼女はそう自称していたが、実際に軽くSNSで検索をしてエイトも完全に理解した。
『えぇ……どんだけ人気あるの……?』
彼女の参加するイベント《ポカポカ温泉『まっぴるま』》はあまりの人気に参加したい人が多すぎて相当な倍率になっているらしい。カキランが以前『リクイン戦争』と呼んでいたのも頷ける。
とはいえ、そんな人から自分に招待が来るのは流石に、とエイト。
「誤送信、かな……?」
大人気キャストから友人繋がりでフレンドになった自分への招待、冷静に考えてみてもあり得ない。しかし疑ってはみたものの真偽の程は行ってみないと分からないのも確かだ。
戸惑いながらもエイトは好奇心の塊に抗えず、作業を中断して彼女の元へと向かうのだった。
いつもたくさん読んでいただき、ありがとうございます。
休日なのに話をかくのに圧迫されて、やる事が、多すぎる・・・!
そんな中で捻りだした一話です。
ではまた明日。




