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一日目「ラブコメ回と磔刑」2

100日毎日小説チャレンジ、12日目です。

日付変更7分前、ギリギリセーフ。

 ユミィがいない間に《VRCh@(ぶいあーるちゃあっと)》というオンラインゲームを始めた事。

 そのゲームの友達・ジョーから小説の『100日チャレンジ』を勧められた事。

 ジョーにしぶとく説得されて始める事にしたが、カキランやアン・ズーといった友人知人にも広められて退路を断たれた事。


「そのジョーってやつなかなかの悪人ね……。本当に友達? そう思ってるのアンタだけなんじゃないの?」

「確かに悪ふざけが好きなやつだけど……でもあくまで僕のためにやったんだと思うよ」

 

 挑発的に哀れみを込めるユミィに対しエイトは「まさか」と笑ってそう言った。

 確かに友人のエイトから見ても非常識でたちが悪い男だ。それでも付き合いの長さから彼の優しい性根を信じていた、


「……きっと。…………多分」


 信じているはずだったのだが。段々と本当に信じられるか怪しくなってくるエイトだった。


「信じ切れてないじゃない……ほんと馬鹿なお人好しね。いやただの能天気なだけね」

「良いやつなんだけどなー……一応は」


 ユミィは呆れ顔をすまし顔に切り替えて、


「まあいいわ、実際に書くのは私じゃなくてアンタだもの。友達選びを間違えた自分を恨む事ね」


 素っ気ない態度で的確にエイトに当てつけて気分を高めつつ、ユミィは上機嫌で本題に触れる。

 

「それにしても『100日チャレンジ』――100日間書き続ける挑戦、ね。ふふっ、面白そうな事考えるじゃない」

「書く側からしたらちょっとした地獄にしか見えないけどねー……」

「あらいいじゃない、地獄でも。怠け癖のアンタにはぴったりだわ。ま、アンタじゃどうせ二週間も持たないだろうけど」

「いや流石に二週間は――」


 そこまで言ってエイトは、過去の経験からその先の言葉を飲み込む。


「……まあ頑張ってみるよ」

「ええ。精々足掻くことね」

「本当に毎日足掻いてばかりになりそうな予感……」

「しっかり苦しみ抜いて最高の駄作を完成させなさい」

「100日もかけて過去一の駄作……――うぅ……想像しただけで気が滅入りそうだ……」


 とはいえかつての相棒で空想上の幼馴染が応援――とは思えない態度だがエイトが考えるに高飛車の彼女なりに励ま――していると思えば悪くはない。


「ところでカキランとアンだったかしら?」

「んー? ああ、そうそう。《VRCh@》の中での僕の友達と知り合ったばかりの人ね」

「どんなやつなの?」

「なんか珍しいね、ユミィが創作以外の事を聞いてくるの。やっぱ気になる?」

「そりゃ興味あるわよ。あなたの創作仲間――じゃあなかったわね、もう何年もずーーっと書いてないんだから」

「うっ……定期的に刺すなよ……。まあ、間違ってないよ。少なくとも二人が何か作ってるって話は聞いた事ないかなー」

「教えなさいよ。私の知らない間にアンタにできた友達の話」

「そうだなー……」


 確かに二人はたった今再会したばかりだ。いきなりもう一度手を合わせようとした所で彼らには見た目以上のギャップがあるだろう。なにせ十五年だ。長い間眠っていたユフィにとって今のエイトは、あまりにも知らない事が多い。見えない隔たりが阻んでいてもおかしくない。

 ならその溝を埋めるためにも色々話すのも必要かもしれない。エイトは彼女の考えを汲み取り、説明し始める。


「そうだなー……カキランちゃんは僕の《VRCh@》での師匠みたいな感じかなー……」

「師匠?」

「そうそう。いわゆる私淑(ししゅく)みたいな」

「有名人なの?」

「いや、本当にただのフレンドだよ」

「ふうん。じゃあその人の生き様を見て勝手に慕ってるのね」

「そういう事。その人が《VRCh@》で遊んでるのを見て、僕も始めたんだ。実際に《VRCh@》の事を教わった事もあるけど、彼の楽しそうな姿やキャストさんへの姿勢が――」

「彼……?」


 《VRCh@》を全力で楽しむ友人の逞しく愛らしい姿を思い出しつつ饒舌に喋っていたエイトだが怪訝な顔のユミィを見て一時中断。


「――ん? どうした?」

「…………男なの?」

「ああ、そうだよ」

「『ちゃん』って付けてるし、アンタから可愛い子を見るような劣情を感じたからてっきり……」

「劣情って……カキランちゃんは小さくて可愛い妖精さんだし、『ちゃん』付けは正しいぞ。でも歴とした男だね」

「…………くっ。紛らわしいのよ」


 ユミィが思わず消え入りそうな声で呟く。エイトによく聞こえなかったようで、


「何か言った?」

「うっさい、○ねって言ったのよ」

「えぇ……ひっど……」

「まあ妖精? の事はよく分かったからいいわ。要はアンタを《VRCh@》に引きずり込んだ諸悪の根源って訳ね」

『ですわっ!?』

「まあ…………語弊はあるけど間違ってはないかー…………」

『エイトさん!?』


 エイトの耳に聞こえた困惑するフレンドの幻聴はさておき、ユミィは次の話へ移る。


「じゃあどうせアンも男なのね」

「あー、いや、アンさんは女性だよ。僕の耳が保証する」

「『耳が保証』……? どういう意味よ……」

「《VRCh@》だと美少女に見えて男だったり、女性だと思ったら男だったりなんて日常茶飯事だからな……」

「男ばっかりじゃない……どんなゲームなのよ……」


 理解に苦しんでいるユミィを他所にエイトは、


「別にいいだろ、男でも。可愛ければ」

「はぁ……どうやら私の知らない間にアンタ、ゲームのしすぎて頭がおかしくなったみたいね。これがゲーム脳ってやつなのかしら……」

「失礼な。まあともかく、アンさんは女性なんだよ。しかもすっごいんだ。なんていうか、魔性っていうか……」

「……ふーん」

「しかもさ。めちゃくちゃ僕の事応援してくれるんだよ。百日書ききったらお祝いしようって言ってくれてさ」

「…………」

「あ! そういえば『小説楽しみにしてる』って言ってくれてたんだった! これってもう実質、ファン一号ってことでいいんだよな!?」


 唐突に目の前から、ヒビが入る音がした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

ユミィ、お前は本当に可愛いやつだよ……

ところでプロットに「ユミィが御機嫌ナナメになる」って書いておいて、その理由が何も書いてないの、やめようね? 本当に大変だった

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