一日目「ラブコメ回と磔刑」1.5
100日毎日小説チャレンジ、11日目です。
1.5という事で半分ぐらいの量です。
「何年ぶりかしらね」
「確か、最後に投稿したのが働き始めた頃だったから……十五年ぐらい前かな」
新卒一年目、エイトは仕事に追われてばかりだったと思い出す。実家で睡眠を削りながらゲームをするか、疲れて何もせず床に着くかの二択の生活をしていた。
「ゲームするか仕事するかで忙しくて、なんとか短い話を書き上げたんだっけか」
「私に頭叩かれながらね」
「懐かしい……本当に。何も変わってないんだな……」
「……アンタは変わったわね」
そう言ってユミィは机から降りる。エイトの前に立って背伸びをしつつ、
「背はあまり変わらないのね」
「そりゃあ、あの頃はもうとっくに伸びきってたし」
「でも顔はすっかり大人ね。ふふっ、目の下にクマなんか作っちゃって。不細工」
「うるせーよ。苦労したんだ、色々」
「あら? 髪もこんなに薄かったかしら?」
「苦労したの!!」
エイトはキャビネットに乗って上から覗き込むユミィをあしらう様に手を振って、ユミィは軽々躱して宙返り。それから部屋の様子をぐるりと見て回っていく。
「部屋の雰囲気もだいぶ違うわね。家具も買い替えて」
「まず部屋が違うんだよ。仕事がこっちの方で、実家からだと遠いから引っ越したんだ」
お世辞にも綺麗なんて言えない、そこら中に埃が積もり散らかった惨状を目にしてユミィは眉根を寄せながら感想。
「きっっったないわね……」
「い、忙しいんだよ」
「嘘ばっかりな所は変わらない、と」
「……悪い」
「そういえば前の部屋も汚かったかしら。ろくに掃除しない性格なのも変わらないのね」
「確かに数か月はしてない様な……」
「しなさいよ、ゲームばっかりしてないで」
気恥ずかしさから頬を掻くエイト。
元よりエイトは自分の部屋に友人知人を招く事なんてないので開き直ってさぼっていたのだが、せめて少しくらい綺麗にしてからユミィを呼べばよかったと後悔し始めた。
ちなみに数か月前の掃除では単に机の上を軽く拭いただけという粗末なものである。
ユミィは一通り見て回って、エイトの方へ振り替える。
「ちょっと。なにぼーっと突っ立ってるの?」
「へ?」
「まさか今のアンタが私と対等に話せると思ってるの?」
さも当然の様に彼女はそう言って、フローリングを指差して笑顔で三文字呟いた。
「せ・い・ざ♡」
彼女が座布団や布団の上に座らせるような甘さを持ち合わせてるはずもなく、エイトは冬のフローリング特有の硬さと冷たさから地味な二重苦を味わう羽目になる。その真意は「とりあえず色々と反省しなさい」なのだろう、と彼は推測する。なお彼の予想ではこの後ユミィの説教も加わって三重苦になる見込みだ。
「はい……なんでしょうか……」
「それで?」
「……?」
「だから、なんでまた書き始めたのかって聞いてんのよ」
予想外の質問にエイトは意外そうに目を丸くした。
「てっきり、また何か怒られるのかと……」
「あらそう…………そんなに怒られたいならご希望に応えてあげるけど?」
「いやいやいや。滅相もない」
「はぁ……全く。一度ペンを折ってきっぱり止めたアンタがまた書くって事はどうせ何かくだらない理由があるんでしょ? 私が聞いてあげるって言ってるのよ」
「……ふっ、ふふっ」
「な、何よ?」
「いや、もしかしてユミィって、僕が創作始めるのが実は嬉し――」
そこまで言った所で、亜音速の刃が彼女の杖から解き放たれてエイトの耳元を掠めた。
常人には回避不能な超高速の魔法、それがユミィの得意技の一つだという事は彼もよく知っている。
「……何か言ったかしら?」
「は……はい……喜んで説明させていただきます……」
気持ち悪い汗を全身に感じながらエイトは掻い摘んで説明を始めた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ユミィを通して高飛車キャラに対する愛が伝わったら嬉しいです。




