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メタバースマルチバース 〜ユニバースディ〜  作者: 硝酸塩硫化水素
神々の遊び

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ep60 ハート(I apologize)

「なんじゃあこりゃあぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ……でちッ」


「どうしたんですか、ヘスティさん。急に大きな声を出して……流石に耳が痛いです」


 転移門(ゲート)がある場所に案内される筈のヘスティは、巨大なあるモノを見付けてしまった。かーらーの、大絶叫である。

 その声量を測っていれば軽く120デシベルは突破したであろう。拠って……隣にいたディアの耳はキーンを通り越してゴオォォォォォと猛る潮騒の如く鳴り響く耳鳴りが乱反射の反響を以っており……ごほん……要は、何も聞こえなくなっていたという事である。


「女神ウラノ・スィンゲルさまが完全支配された、魔導工学が発達してるあの惑星(世界)でも、これほどのモノは見た事がないのでちッ!これは、声を大にして……いえ、最大にして「いいモノだッ!!」とわたくしの心が叫んでいるのでちッ!!――でも、誰かに届けるワケではないのでちッ。きゃはッ♡」


 ヘスティが見たモノとは、それ即ち、グランドデストロイヤーこと“ランデス”である。ヘスティは一目見た瞬間から“ランデス”の虜になってしまったようで、自身のピンキーピンクの瞳ばかりか、ヘッドドレスの髑髏達まで目をハートに輝かせていた。

(※多少の誇張表現があった模様です。ご容赦下さい。また、わかり辛い表情があった事も重ねてお詫び申し上げます)


「ディアさま……これ……」


「えっ?なんですかヘスティさん。わたし、まだ耳がゴォって鳴ってて、よく聞こえな……」


「これ……いや、この(かた)さまは、幾らで売って頂けますでちかーーーーーーーッ!でちかーーーーーッ!でちかーーーッ!でちかーッ!」


 再びの大絶叫。広大な倉庫区画に木霊する守銭奴(ヘスティ)の声量MAXの声が残響に反響を伴った事に因って、再びディアの耳はご愁傷さまな感じになっていた……。


(※ディアの耳が復旧するまで暫くお待ち下さい。ぺこり……)


……

………


「えっと、ヘスティさんはランデスくんが欲しいのですか?」


「この方さまは、「ランデスくん」さまというお名前なのでございますでちて?あぁッ!なんて尊いお名前なのでちッ!尊い実に尊いのでち!尊みが過ぎて、わたくしのお目々がハートになり過ぎて、視界がぐにゃりぐにゃりと歪んでいるのでちッ!――はッ!これが恋でちて?恋は盲目というでちが、ぐにゃりぐにゃりと歪むのが盲目というやつなのでちて?」


 支離滅裂とはこの事なのだろう。好きだの恋だのをサッパリ理解していないディアはただただ呆然として言葉も出ない様子だが、ヘスティはヘスティで頭をグワングワンと揺らしながら一人大地震を味わっている様子だ。支離滅裂を通り越して混沌(カオス)とでも言うべきかも知れない。


「金貨……千、いや、三千枚出しますでち。どうでちて?」


「えっ?いや、だから……」


「これ程の優雅な佇まい、尊みの溢れるこのご尊顔とお御名……金貨三千枚では少な過ぎ……なのでちた。金貨五千……いや、金貨一万枚出しますでちッ!もってけドロボーーーーーッ!!ドロボーーーッ!!ドロボーッ!!」


「いや、ですからッ!話しを聞いて下さいヘスティさんッ」


「なッ……なんでちと?金貨一万枚でも足りな……はッ!そうでちね、わたくしとした事がとんだ()()()()()()()()のでち」


「良かった、分かってくれたんですね、ヘスティさ……」


「このランデスくんさまは、この店の持ち物なのでちね!それならば、おかみさまに……」


「残念ながら、ソレは「魔の酒場亭」のモンじゃないよ。ソレはれっきとしたディアの()()()さ。まったく、(倉庫区画)から叫び声が聞こえたから、エンリのヤツが依り代を取り戻しに来たのかと思って焦ったぜ。まったく、人騒がせなッ!!」


 斯くして……ヘスティプレゼンツに拠る怒涛の価格交渉は実現せず、しかも仕舞いには“ランデス”が召喚獣と知らされたのである。その絶望は如何程のモノであっただろうか……。

 だがディアにとってはエレ()()()()であった事に間違いは無い――


_____



「これで調整は終わったのでち。たった今からこちらの転移門(ゲート)とわたくしの家にある転移門(ゲート)は繋がったのでち。まだこちらからの一方通行でちが……」


「さすがにランデスをアンタの家の中までは送れないだろうが、その惑星(世界)なら座標軸は分かってる。だから転移門(ゲート)を使ってアンタの惑星(世界)に行く事は出来る。なんならディアにアンタの家まで送らせようか?依り代(エンジェリアオルタ)もある事だしねぇ」


「いいんでちて?でちが……」


「今回は()()()()()()()()ってヤツで、タダで送ってあげるさね。気に入ったら次からは料金をもらうから、()()()()()()


 「おかみ」からの想定外の提案にヘスティは目を輝かせていた。「タダより高いモノは無い」なんて言われるが、「おかみ」の打算を喩えるならば「タダより怖いモノは無い」かも知れない。

 これはランデスを気に入っているヘスティに対する営業の一環であり、これから()()()()と儲けさせてもらおうとする意思がそこにあるのだから……。

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