表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタバースマルチバース 〜ユニバースディ〜  作者: 硝酸塩硫化水素
アフターストーリー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

532/534

ep524 英雄(Family ties)

 「超暴走(ハイパースタンピード)」の発生から、まるまる二昼夜が経過した。魔力がある以上、疲れ知らずで戦い続けたユーベンブロイだったが、身体に疲労はなくてもパーツに負荷は残る。

 如何に優秀な魔力製素体(ホムンクルス)と雖も、過剰過ぎる負荷は想定していないし、されていない。


 それでもユーベンブロイはアメリアを守る為に必死に戦い、戦い抜く事に成功していた。

 そう、エンリ・ルールブレイカーに因って一点に集められたこの惑星(ハリスト)の「陸獣(おかけもの)」の群れを、たった一人のユーベンブロイが自身の力と、ツクヨミから授かった加護(ブレス)の力だけで切り拓いたのである――



「はぁ……はぁ……はぁ……終わっ……た」


 ユーベンブロイは最後の一匹を狩り取ると、その場に仰向けに倒れた。周囲にはクロック峡谷や東方の大陸で築いた躯の山を遥かに超える死骸の大地が広がっていた。


 流石にこの山を放置すれば二次被害を巻き起こしてしまうかもしれないが、今はもう何もしたくなかった。魔力製素体(ホムンクルス)の身体だからこそ、疲れも痛みも感じこそしないが、完全に限界(キャパシティ)は超えていた。

 それでも戦い抜けたのは偏に、精神が肉体を凌駕したからだと言える。だが、戦う相手がいなくなってしまえば、凌駕した精神が肉体に襲い掛かるのは明白だった。

 故に、その身体からパーツは外れ、パーツは崩れ、パーツは光となって消えていく。


「残念だなぁ……最後にママ(アメリア)を一目見たかった。いや、一目だけと言わず、ママ(アメリア)が幸せになるその日まで……ううん、幸せになって笑顔でいつまでもいてくれるように、いつまででも見守っていたかったなぁ……」


 ユーベンブロイの身体は朽ちていく。限界の限界を超えて、更にその超えた限界の極限にまで達した身体は、その内に取り込み過ぎた魔力と(エネルギー塊)の莫大過ぎる量が原因で、内部から崩壊を招いてしまった事になる――



「わたしを呼びましたかぁ?」


「――ッ?! (アメ)……(リア)?」


 ユーベンブロイは酷く驚いていた。ココは貧村手前とは言っても、森を挟んだ場所(平原)。夜が明けたとは言っても、アメリアが森を抜けて更には死骸の山を登ってここ(目の前)まで来る事は皆無だと考えていたからだ。


「やっと会えましたね。あの日、助けてもらったお礼をちゃんと言えてなかったので、今まで凄く心苦しかったんです」


 驚天動地の衝撃だったと言える。あの日の記憶は消したハズだった。その方が良いから……と、良かれと思って全て忘れさせたハズだった。だけど、アメリアは「あの日のお礼」と言っている。これが驚かずにはいられないユーベンブロイだった。


「わたし、()()()夢を見るんです。実はわたしには子供がいて、だけどその子と離れ離れになった先で、わたしはその子から教えてもらったクルマに乗って色んな場所に行く夢です。変ですよね?分かってます。人を好きになる気持ちが分からないんだから、わたしは変なんです。だから、今まで誰にも話してません。貴方が初めてです。あ……れ?わたし……何を言ってるんでしょう?本当に変ですね」


 ユーベンブロイは何も言葉を発せずにいた。ユーベンブロイの記憶に残る、共に旅をしたアメリア(ディア)はあの日、ワケも分からないままに死んだ。

 今、目の前にいるアメリアは自分の事を知らないハズのアメリアで、自分の母親だったアメリアじゃない。

 でも……()()()()()、このアメリアを護ると誓った。このアメリアはボクを知らないままに幸せになるんだ……と、ボクを知らず、苦い記憶も全部かなぐり捨てて幸せになって欲しかった。


 それなのに……だ。ユーベンブロイの瞳からは気付けば涙が溢れていた。知らないハズのアメリアが、ボク(ユーベンブロイ)を知っていて、更にはボク(ランデス)の事まで知っているなんて、()()()()()()()()()――



「貴方はいつも、わたしの傍にいてくれてましたよね?わたしをいつも見守ってくれてましたよね?わたし、分かるんです。知ってたんです」


 ユーベンブロイの瞳から流れる涙は止まらない。止まりようがない。止まれるハズがない。それと同時に、こんな別れになってしまう事が酷く悔しかった。


 アメリアを「ママ」と呼べる可能性が既に残されていなくても、愛を知らなかったタカミヤに愛の尊さを教えてくれたのはアメリアだった。

 逆に、恋とも愛とも無縁のアメリアに対して何も返せなかった事が無念で仕方がなかった。


 アメリアはユーベンブロイに対して母親と名乗る事を禁止された事であの日、完全に愛を知る機会を失った。だからこそ、ユーベンブロイはせめてアメリアを守り抜く事でその恩を返そうと考えていた。


 それなのに……だ。この世界線では完全なる他人だからこそ、陰ながらの恩返しだったハズなのに、全て知られていただなんて、考えた事は疎か想像だにすらしていない。

 逆に知られていたならば、伝えたい事がある。話したい事がある。だが溢れるのは言葉ではなく、涙だけだった。

 止まりようのない涙だけが二人だけでいられる時間を費やしていく。流していく。浪費していく。


(アメ)……(リア)……ボクの名前を……呼んで欲しい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ