ep520 愚策(Hyper Stampede)
この惑星は一つの超大陸から成立している。そしてその超大陸には幾つもの国があるが、「ハリスト神聖ラウニムス帝国」が全ての頂に立つ“宗主国”として君臨していた。
拠って、この惑星が「ハリスト」と言う名だと「高位高次元生命体」の情報網に挙がるほど、強大な帝国だったのは言うまでもない。
特筆すべき事実や事案がなければ、数多の惑星が渦巻くこの「箱庭」に於いて、単一の惑星如きが、その情報網に挙がる事はない。だがそうならざるを得ない事実があった。
それがこの惑星の大半を占める「人間」である「天使種」だ。
拠って情報網に挙がるや否や「高位高次元生命体」は、その稀な依り代を欲したのである。
これがハリスト崩壊の序章となる――
その中でもとびっきりのレアモノを手に入れたのがエンリ・ルールブレイカーであり、そんな依り代を手に入れたモンだからエンリが有する様々な悪感情は、他の「高位高次元生命体」に「天使種」の依り代が渡る事を善しとしなかった。
それに因って発生したのがハリスト滅亡というシナリオと言えるだろう。それは偏に「堕天使種」というレアモノが持つ特異な能力と、エンリが有する残虐性が混じり合ったコトで生み出された「超暴走」という“結果”である。
この「超暴走」の発生地点は超大陸の北側。規模は数十万にも及ぶ超大型の「獣」の群れだ。これは二期目の「テラ・アルバフォーミング」と同程度の群れと言えるが、群れを構成しているのは多種多様な「獣」である。
それが濁流となって進軍を開始した。
その侵攻ルートの中にはアメリアのいる貧村も含まれている。そして一度濁流に呑まれれば誰一人として生き残る術は無い。
だからこそユーベンブロイは数十万の群れに対して、たった一人で立ち向かったのである。
しかしユーベンブロイに策は無い。一人で堰き止めようにも濁流を相手にするのは無謀と言う名の愚策でしかない。ユーベントロイヤーであれば「魔法もどき」を使い一網打尽に出来た可能性は残るが、無い物ねだりをしたところで意味はない。
だからこそあるのは、決死の覚悟とアメリアに対する想いだけだった――
一方でこの「超暴走」の首謀者たるエンリは、群れの到着を今か今かと待ち侘びていた。だが待てど暮らせど「獣」達の咆哮は疎か砂塵の一つも見えやしない。
「これなら「超暴走」ではなく、超大陸の端々から複数の「大暴走」を起こさせて丁寧に丁寧に殺し尽くさせた挙句に、この地に集結させた方が良かったか?」などと考えるようになった頃、遂に痺れを切らした。
斯くして侵攻ルートとして設定した順路を逆走し発生地点近くでたった一人奮戦し、「超暴走」を半壊させ押し留めているユーベンブロイを発見するに至る――
「へぇ!こりゃあ凄い!こんなところに英雄サマがいたなんて!ワタシと同じ「高位高次元生命体」でもない「人間」如きが、たった一人で挑んでるだなんて、ワタシとしてはビックリ仰天だぁッ!」
――ギリッ
「エンリ・ルールブレイカアァァァァァァァァッ!」
戦いは熾烈を極めていた。それでも無策のユーベンブロイが出来る事はたった一つだけだった。それは全力で「超暴走」を止める事。そうすれば痺れを切らした首謀者がこの場にやって来ると考えたからだ。
拠ってそれこそが「無策の策」であり「大博打」とも言える愚策だった。ただ、そんな大それた「賭け」はこれで二度目である。二度目ともなると案外慣れっこになったりもするモノだ。
ただこの愚策が功を奏したのは言うまでもない。そして一番の功労者は「カレラである」とユーベンブロイは言うだろう。
それは偏にカレラが創った魔力製素体が非常に優秀だったからだ。
※造型だけは除く
ユーベンブロイが依り代として使っている魔力製素体は、魔力さえあれば不眠不休でも性能を維持出来る。そして目の前にはその魔力が大量にある。だからこそ、たった一人で大立ち回りを演じる事が出来た。
更にはツクヨミから授かった加護に依って、倒した「獣」は自分の戦力となる。それらが上手く噛み合った結果、愚策は転化し妙策として働き、見事にエンリを釣り上げるという結果を齎したのである。
「ワタシを知ってる?! 今までに出会った「人間」で生きてるのは誰もいないハズなんだけどなぁ。おっかしいなぁ。まぁ、どこでワタシを知ったか知らないけど取り零すのはワタシの主義に反するし、せっかくだからワタシが自ら相手をしてあげようじゃないか!」
エンリを止められれば「超暴走」は収まる。そうすればアメリアの笑顔も幸福も守られる。
ユーベンブロイがエンリと相対するのはこれで二度目となるが、前回はユーベントロイヤーの圧倒的な力があればこそエンリと戦わずして勝つ事が出来た。
だが今回はエンリの依り代が強力で、こちらはグランドデストロイヤーを失っている。疲れはないが群れの動向には意識を向けておく必要がある。
非常に厄介な戦いの幕が開こうとしていた――




