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メタバースマルチバース 〜ユニバースディ〜  作者: 硝酸塩硫化水素
おわり

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525/534

ep517 魔術回路(Turning point)

 アメリアを救う方法(タイミング)は幾つかある。だからどのタイミング(時間軸)にユーベンブロイが跳躍するかが一番のキーポイントであり、そしてそれは同時にアメリアにとってのターニングポイントになるだろう。


 「真なる魔法」を使って過去に跳べるのは一度きり。しかしその一方で、再び同じ「魔法」が使えるかは未知数だ。それは偏に、膨大な魔力を練り上げ行使する以上、術者の身体もしくは、術者の魔術回路またはその両方が破壊される可能性を秘めていると言えるからである。

 また「魔法」が成功しても()()()()()()、「時間の逆説(タイムパラドックス)」や「根底からの転換(パラダイムシフト)」が起こる可能性は否めない。そうなると再び「魔法」を使って元の時代に帰って来れる保証はないし、最悪の場合ユーベンブロイがその時間軸で消滅する可能性すらある。

 どちらにせよ、ユーベンブロイにとって不都合になり得る結果を齎す可能性は、大いにあり過ぎると言っても過言ではない。


 それに過去の時間軸でタカミヤが使った「(いびつ)な魔法」ですら、全盛期のタカミヤを以ってしても制御に苦労させられたのを、ユーベンブロイになった今も覚えて(記憶して)いる。

 しかも今回は「真なる魔法」にすべく、「(いびつ)な魔法」の術式理論を弄り倒しているから余計に厄介だった――



 ユーベンブロイは「第四(マルチバース的思考)の天才」の所以たる思考回路と、ユーベントロイヤーになった事でランデスが元から有していた処理能力を加えた並列思考に依り、反復して反証を繰り返し、更にデバッグしたモノをデフラグし……と、それをひたすら繰り返して「()()()()()()()「真なる魔法」の術式理論を完成させた。

 要するに思考と身体を切り離し、それぞれ別の分野を同時に進行していた事になる。


 そんな状態で作成した術式だからこそ、長い年月を掛けて紡ぎ上げたモノと比べれば信頼性は非常に低いと言わざるを得ない。反証を繰り返してデバッグを繰り返したからこそ失敗は無いだろう。だが「失敗しない」と、「成功する」は同じような意味だが根本的には全くの別物だ。

 

 だからこそ、助けたアメリアが一番幸せになるタイミングを選ばなければならなかった。助けた結果のやり直しは出来ないのだから。

 拠って、その幸せに自分(ユーベンブロイ)がいない可能性すら考慮に入れざるを得なかった。


 これはぶっつけ本番の一発勝負。魔術を扱うモノがそんな楽観主義では本来ならば大成は無理だろうが、ユーベンブロイはカレラと出会って、今までに見た事がない魔術師(ウィザード)・カレラの奔放さに惹かれるところがあったのかもしれない。

 ※カレラは職業「ハンター」だが、タカミヤの世界線に於いて「ハンター」という職は存在しておらず、更にその世界線に於いて言えば、「魔術師(ウィザード)」とは神秘の体現者であり、その神秘は秘匿するモノとされている



 ――斯くして準備は整った。死屍累々の山の頂に立ち、ユーベントロイヤーは術式を展開する事にした――


 ――ツクヨミと別れ術式再構築と魔力収集に奔走し、気付けば一週間近く経過していた。

 頂から見える爛れた空は、既に見える範囲にまで迫って来ている。「あの空に呑まれた大地の下にある存在(モノ達)は一体どうなったのだろう?」……と、そんなコトを考える余裕はこの一週間一切無かった。

 いずれにせよ近い内にこの大陸の空も蒼い輝きを失い、あの赤黒さに併呑されるのは明白だろう。そしてそれを止める術は今やもう完全に失われている――


 ――無数の「獣」の屍の上に立ち、空を見上げるユーベンブロイは深い深い深呼吸の後、自身の魔術回路に集めた魔力を流し込み励起させていく。

 自身の身体の隅々、髪の毛の一本一本、細胞の一つ一つに至るまで魔力を流し、四肢の更に先、指先へと至る毛細血管一本一本にまで呼吸で取り込んだ酸素を流していく――



「オン、タカシハヤ、マカレヤマカレヨ」


 ツクヨミと別れてから初めて紡がれる音が、大気を振動させ声となって響いていく。そしてそれと同時に、膨大な魔力を流し込み循環させた魔術回路は一気に活性化していった。

 普段はいくら陰陽術を使おうと、励起させた魔術回路が浮かび上がる事などないが今回は違う。それはユーベントロイヤーの姿だからというワケでもない。


 魔術回路が焼き切れんばかりに膨張し、それが熱と光を発しユーベンブロイの身体の中から焼いていく。まだ「魔法」の詠唱すら始めていないのにこの有り様だ。体内に宿した膨大な魔力(オド)の制御だけで魔術回路が悲鳴を上げているのだろう。

 これが詠唱を始め、大気の魔力(マナ)と自身の魔力(オド)を共に練り上げて更に何倍もの魔力を魔術回路へと流すのだから、この程度で悲鳴を上げている魔術回路と自身の身体が保つ道理はない。


 しかしそれでも尚、悲鳴を上げようが泣き喚こうがムチを打ってでも詠唱を成立させなければ、今までの苦労が水の泡になるのは重々承知している。そしてそうなった時に、アメリアを救う手立ては完全に失われる。


 だからこそ叫び出したい衝動を必死に堪え、ゆっくりと確実に大気を振動させていったのである――

これにて章が終わります。

次回からは新たな章となります。


この物語も残すところあと数話ですが、最後までお付き合い頂けますよう、何卒宜しくお願い致します____○_(土下寝)


   硝酸塩硫化水素

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