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メタバースマルチバース 〜ユニバースディ〜  作者: 硝酸塩硫化水素
おわり

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ep510 一片(Headaches seed)

 料理の仕込みをさせたとして、「調味料の量を間違える」くらいなら「お可愛いこと」で済むだろうレベルだ。

 だが、「調味料の種類を間違えた挙句に、その量まで間違える」だったらどうなるだろう?教えている側は、額に青筋を浮かばせながらも「新人だから……」と、苦笑いで許してくれるかもしれない。


 では一連の流れを見せた上で、懇切丁寧に教えたとしよう。先ずは野菜の皮を剥いて見せ、その次に切り方を見せる。そして予め下拵えした調味料と和えておく。これが“仕込み”と呼ばれる前段階の調理だ。

 ※場合に拠っては下茹でしたり、適度な大きさにカットした肉や魚をタレに漬け込んでおく……といったコトも“仕込み”である事に違いはない。要するに、料理をスムーズに提供する為の時間対効果(タイパ)を稼ぐ為の行為である。 ――え?そんな説明をわざわざ注釈する必要はないって?おっと、それは失礼


 しかし……だ。皮を剥かせれば可食部位よりも廃棄部位が大きくなったり、切り方も不格好過ぎたり、下拵えした調味料がそもそも違っていたり、“和える”ハズが何故か“揚げる”に変わっていたりと、教えた甲斐と言うものが一切合切全て裏切られてしまうワケである。

 では「料理の仕込み以外ならいいか?」と問われれば、こちらもその類稀(たぐいまれ)なる運動音痴のセンスによって磨かれまくった結果を示してしまう。

 ※包丁捌きや調理方法の間違いが運動神経に依るか否かは議論の余地があるが、それはそれ。これはこれ


 要するにイシュ達は()()()()()()終わらせて、休憩する(サボる)為の時間その全てが灰燼に帰すだけでは飽き足らず、ロクになんの準備も出来ないまま夜営業(居酒屋)を開店させなければならないといった結論へと至る。


 そして給仕(ウェイトレス)の衣装に着替えたイシュタルは、ここでもその類稀なるセンス(運動音痴)本領を発揮した(牙を剥いた)。注文を間違えるくらいは()()()()()。料理を運べば客の前で(つまづ)き、その顔面にパイ投げするが如く。エールを運べば客の頭上から降り注いでみせる始末。

 ※注文間違いが運動音痴のせいというのは些か無理があると思うが、それもまたそれ。これもまたこれ


 いくらイシュやウルスラグを目当てに来ている客であっても、二人がフォローしたところでそれらの失敗を笑って許してくれる程、イシュタルがミスした回数は少なくなかった。

 イシュタルが運べば、食べ物だろうと飲み物だろうと、まともな姿を維持していない。そればかりか客の被害は甚大としか言いようがない。そしてそれ即ち、客の被害が甚大である以上、全ての責任は「魔の酒場亭」に帰結する事になる――



 だがその反面、イシュタルの見た目()()は良い。流石は「愛と美の女神」と言えるだろう。世のオトコというオトコ。オスというオス。男性という男性を軒並み虜にしてみせるだけの美貌の持ち主である事に変わりはない。そしてイシュに負けず劣らずの“SSS”ランクは、ウルスラグを凌駕し夜営業(居酒屋)に通い詰める野郎共のハートを鷲掴みに出来るスペックだ。

 だからこそアルカディア(ド変態)が完全に魅了され、ミレイアが嫉妬に狂ったのも分からなくもない。


 ……が、前述した壊滅的な運動神経の悪さ()()ならば、数度のミスもその下心丸出しの欲望が許すと言えなくもない。それは偏に「愛嬌」があれば……の話しだ。

 ※ウルスラグは置いておくとして、イシュもそこまでの愛嬌はない。かつては下心丸出しの視線やら言葉にウンザリしており、客を客と思えずディア以上の塩対応で接した事もある。だが、そう言った客達の多くは新たな性癖を目覚めさせてしまい、イシュを更なる困惑へと(いざな)った過去がある。その結果、適度な壁を設ける事で新たな患者の発生を抑え込んでいるとも言えるが、過去に発症した患者の多くは完治不可能となっている


 要するに外見の良さを払拭して有り余る程の内面の悪さが、イシュタルの評価をドン底に突き落としたと言っても過言ではない。そうそれは、「天上の女主人」としての矜持か、はたまた「神族(ガディア)」の自尊心か、それとも男にチヤホヤされまくって生きてきた驕りか……そのどれか、またはその全てが店に通う全ての客を見下していたのである――



 結論、「おかみ」の後悔先に立たずであるとしか言いようがない。


 「異界の神(イシュタル)」との戦闘を避ける事を優先し、情報を聞き出す事を目的とし、無理矢理「魔の酒場亭」の従業員にしたばっかりに、その全てが裏目に出てしまったという事になる。

 そしてこんなコトは、「経験則の天才(第一の天才)」である「おかみ」も経験した事のない、前代未聞な経験だったと言っても過言ではない。


 拠って、「おかみ」の頭痛のタネはその脳裏に深く埋め込まれ、ランデスの捜索方法を考えさせる余裕すら根こそぎ刈り取っていく程に、それ以外の思考を駆逐した。

 従って、ディアがいくら詰め寄ろうとも、「イシュタル問題」が失くならない限り、()()()()()()の一つも弾き出すのは難しい現状だったとしか言えないのだった。


 しかし、これもまだ()()である――

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