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メタバースマルチバース 〜ユニバースディ〜  作者: 硝酸塩硫化水素
おわり

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ep509 万遍の悔い(The Me)

「これはッ?! ツクヨミ様、一体アーレに何が起きてるって言うんですかッ!」


 ツクヨミに連れられてアーレへと戻ったユーベンブロイが見た光景。それは偏に今まさに空を割り、何かが生まれ落ち(現れ)ようとしている直前の如く、昏く赤黒く腫れた空だった――



「恐らくですが、全てはイシュタルが(くわだ)てたモノと言わざるを得ませんね。残念ながら……」


「イシュタル?メソポタミアの「天上の女主人」が、なんで箱庭(ジオラマ)に?それにかつての世界線ではイシュタルは関与していなかったハズです。メソポタミア勢の関与は多かった気がしますが」


 ユーベンブロイが知る限り、エレシュキガルにエンキ、更にエンリルはメソポタミア勢である。だが諸悪の根源はロプトであり、彼の神は北欧由来だ。そしてツクヨミもまた違う。

 三柱(さんにん)程度の関わり程度で「多い」との評価は、如何せん過大評価のような気がしなくもないが、それは「自分を中心とする関わりに於いて」という条件でなら成立する。

 まぁそもそも「異界の神」が、ここアーレを中心に()()()()()とも言えるが、ソレは物語の性質上()()()()()()()()

 だから、「どげんかせんといかん」と言われようとも「どげんにもならん」としか言いようがないだろう。


「私も他の「神域」のコトは詳しく分かりませんが、ロプトには手広く協力者(ツテ)がいたのでしょう。そしてメソポタミアは古い。古くからの神域は信仰を失えばその力は減ってしまうモノです。だからこそ、ロプトが目を付けた可能性はあります」


 「神族(ガディア)」は概念の塊である。そして人々の信仰が発明した“システム”でもある。従って、信仰が失われれば“存在(概念)”自体は変わらなくても“概念強度(カルマ・ファンタズム)”は低下する事になる。

 そうなれば「神族(ガディア)」の力は弱まり、信仰によって(自分達を)発明した人々を脅威から守れなくなる。そして更に信仰が弱まり……という負のスパイラルに囚われる事になり、最終的に“システム”は存在価値を失い、存在意義を問われた挙句に他の神域に統合される結果となってしまう。

 それは生を受けた生命体である「神族(ガディア)」としては避けたい話しとなる。


 ツクヨミは、信仰が減り力が弱まったメソポタミア勢に協力者を募ったからこそ、メソポタミアの「神族(ガディア)」が多いのだと言いたいのかもしれない。

 まぁ、「募った」と言うよりは、「口車に乗せられた」か、「(そそのか)された」が正解のような気もするが、それはこれ。これはこれ。


「ツクヨミ様、アレは一体なんなのですか?イシュタルは何を喚び出そうとしているというんですかッ!」


()()()()()()()()イシュタルはエンキから奪った「メー」を持っているハズです。もしかしたらそれを使って、この箱庭(ジオラマ)を手中に収めようと画策しているのかもしれません」


 エンキをかつて「知恵の神」()()()()()()()のが、「メー」という「智識の王冠」とされる。しかしそれはエンキの元から奪われ、イシュタルの元へと渡ったとされていた。


 だからこそツクヨミは、ソレ(「智識の王冠」)を使いイシュタルが全てを企んだのだと言いたいのだろう――



 空は不気味な色に染まり、ヒビ割れていく。そこからナニカが這い出てくる予兆こそ今はまだないが、何にせよ空を割ってナニカが召喚されるのであれば、アーレの被害は甚大なモノとなる。


「ツクヨミ様、詠唱を始めます。その間、ボクを守って頂けますか?」


 どうやら「ナニカが出て来てからでは間に合わない」……と、ユーベンブロイは考えたようだ。よって、ツクヨミの返答を待たずして詠唱を開始していく。

 そう、「魔法もどき」である――


_____



 ディアから詰め寄られた「おかみ」は、何も言い返す事が出来ないでいた。それは偏に、ランデスが星間移動(ワールドトラベル)を使わない限り、発見する方法がないからである。

 否、実際には、それ(星間移動)以外にも探す方法は考えられたが、費用対効果(コスパ)を鑑みると「おかみ」が動くハズもなかった。

 だからこそ、ディアに対して何も言い返せるハズもない。


 そして「おかみ」が、ランデス捜索に対して本気で動けないでいた理由の一つにイシュタルの存在がある事もまた、事実である。

 「おかみ」は、イシュタルの()()()()に頭を痛めていた……というワケが一片の欠片も無いハズもないが、そうではない。


 実際に一日夜営業(居酒屋)に出したワケだが、開店早々から……否、仕込み段階から粗相が過ぎたのだ。それは偏に「()()()()()()」のディアを遥かに凌ぐ、()()()()()()()()()()()を次々とオンパレードしたのだから、目も当てられない。

 それこそ「しくじり先生」ならぬ、しくじり過ぎた挙句の「ザコ師匠」。ひいては、「()()()()()()()の宝石箱やぁ」的展開だった。


 そんな展開に頭を痛めないハズもないが、それが“一片の欠片”であったとするならば、その全体には何があったのだろうと考える次第である。

 因って「おかみ」からすれば、イシュタルと関わった事により、「我が生涯に一片の悔いなし」改め、「我が生涯に万遍の悔いあり」に至ってしまったと言っても過言ではないのだろう――

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