ep508 鼻息(The Muttering)
「それで……さ、おかみさん。あたし達はどうすれば?」
「あ゛あ゛ん? ――あぁ、そうだったね。待機は解くから、終わってない店のクロージングと、仕込みをちゃっちゃと頼むよ」
完全にブラックな職場環境である。待機を命じられていたのはイシュとアマテラであり、二人は仕事の途中で待機を命じられたワケだ。従って、その仕事は誰もやってくれていない。
二人が「高位高次元生命体」だからこそ成り立つ「仕事」であり、これが「人間」ならば過労死しても可怪しくはないだろう。
※依り代の為に多少の休憩は必要
そして、イシュタルを接客した張本人であるディアはもう既に、トンズラしている事から、手伝ってもらう事も出来ない。
「あぁそうだイシュ。もう話しは終わったから、コイツも連れて仕事を教えておやり。暫くは同僚なんだから、しっかりと教えるんだよ!」
イシュとアマテラの二人なら、こなれた手付きでちゃっちゃと終わる仕事量だったとしても、そこに新人が加わり、教えながらとなるとそうはいかない。
だからこそイシュは、声にこそ出さなかったがエレに勝る事はない不機嫌そうな面構えで、「拒否犬」のようなしかめっ面をしていた。
……が、「おかみ」がその程度で動じる事はないし、譲歩することも無い。
斯くして「おかみ」は一息付くべく、自分の部屋へと戻っていった。「まったく、一見さんは本当に困るさね」……と、ブツブツ呟きながら。
――パタンッ
「さてと、どうしたモンかねぇ?」
「おかみ」は現状を整理していく。それは自身の持ち得る「経験則」に従って、今後の流れを効率化していく為である。
しかしながら、解せない事があるのも事実だった。それは偏に「異界の神」でありながら、超人種に勝てなかったイシュタルのコトである。
「異界の神」とはそもそも、この「箱庭」を創った、「創造神」と同格の存在だと考えている。それなのに「人間」である超人種に負けるとは、容易に納得し兼ねる。
だが逆に、アルカディアが「異界の神」を凌駕する程の力を持ってしまったのなら、それはそれで大問題であるとも言える。
だからこそ、どちらに転んでも非常に宜しくない。
だがしかし、ここで「おかみ」が一つ思い出したコトもあった。それは、アルカディアの「専用装備」をエレが持っていた事と、その際にイシュタルが話したとされる「転生者は預かった」というセリフである。
そして、先程までは「概ね合っている」と感じていたにも拘わらず、一人になった途端に突如として違和感が襲って来た、この謎現象にも頭を撚らなければならなくなっていた。
「厄介事は尽きないねぇ……。まったく、困ったモンさね。そして、アルカディアを探すのはこれでフリダシに戻っちまった。ランデスのヤツは、一体何処で油を売ってるコトやら。」
さて、この時のランデスは、ここより東方の大陸に於いて、「獣」狩りの真っ最中である。要するに、イシュタルの「魔の酒場亭」への来店は、急を要する事態ではないという結論になる。
まぁ実際にイシュタルが、アルカディアと戦って負けるのであれば、「魔の酒場亭」の面々が揃っている事を条件として考えた時に、脅威にはなり得ない可能性がある事は分かってもらえたと思われる。
従って、逼迫した状況はこれから巻き起こる事になると思われるが、(文字数制限)……って、はッ!制限の文字数ではなかった……だとΣ(゜゜)
いやぁ、本当に便利なんですよ「文字数制限」って。ネタに詰まったり、話しの流れをぶった斬る時なんかに……げふんごふんばふんぶふんッ。
どうやら心の声が漏れてしまったようだ。真摯に物語を紡いでる身として、ネタに詰まるワケなんて、ないじゃあないですかぁ!イヤだなぁ、ホントに。あははははは〜。
さて、それでは気を取り直して、物語を紡いでいくとしよう――
「おかみさんッ!まだなんですかッ!ランデス君はまだ見付からないんですかッ!」
それはイシュタルが「魔の酒場亭」の従業員になった翌日の事。昨日、やらかしたカモ……と、考えた結果、その日の夜営業が終わるまでは、火の粉が降り掛からないように盛大に逃げに回ったディアは、営業後に「おかみ」に詰め寄っていた。
まぁ、イシュタルが従業員になった当日の夜営業は、そのイシュタルがやらかしにやらかしまくったお陰で散々な結果になっており、ディアが多少なりともやらかしたところで目立つ事もなかった。
だからこそディアは、鼻息荒く「おかみ」に詰め寄る事が出来たとも言えるだろう。
「まださね。アイツが「星間移動」を使ってくれれば居場所の特定も容易なんだけどねぇ」
「それじゃあランデス君は、このセレスティア大陸にいるってコトですかぁ?」
普通の考え方ではこうなる。この惑星に地図は無い。だからこそ普通は、セレスティア大陸以外の大陸を知らない。
いくら高位高次元生命体であったとしても、「獣」の巣窟たる海路や空路は想定する事がないのだから――




