ep507 演義(Character limit)
「それで……だ。アンタはウチの従業員になったんだ。話しを聞かせてもらうよ?アンタ、アルカディア達をどこにやったんだい?」
「アルカディア?あぁ、あの変態超人種の転生者のコトで宜しくて?あたしは何も知らなくってよ」
イシュタルの発言には矛盾がある。そこを見抜けない「おかみ」ではない。かと言って、泳がせるつもりもない。
しかし、エンキに対して話しを広げるつもりもないようだ。
「何も知らないって言うなら、なんでアイツがド変態だって知ってるのさね!話しの辻褄が合わないじゃないかい?」
「あたしは「変態」だとは言ったけど、「ド変態」とは言ってないのではなくて?まぁ確かに「変態」より、「ド変態」の方がしっくり来るから、それでいい事にしても宜しくってよ」
会話とはキャッチボールであるとされる事がしばしばある。だがそれを今回は投球練習に喩えてみるとしよう。
すると、こうだ。
二人の会話を聞いている限り、イシュタルは「おかみ」からストレートの指示を受けたにも拘わらず、アンダースローシンカーで投げ返している。
いや、むしろナックルかもしれないが、それはそれ。これはこれ。
※なんで投球練習に喩えたのかは内緒
「あたしは、運良くこの箱庭に通じる転移門を見付けられたから、あたしのモノを盗んだヤツを懲らしめようと思ってココに来たと言えば宜しくて?」
エレから聞いた話しとは多少の食い違いがあるが、概ねその通りの内容だった。だが「おかみ」が聞きたいのはカブってる情報ではなく、その先の話しだ。
「そんなコトはどうだっていいのさね。あたしゃ、その先が聞きたいのさ。どこでアルカディアと知り合って、何故に二人を誘拐したのか……だよ」
「二人?誘拐?あたしは、そんなコトをしてなくってよ!確かにあのド変態を使えば、盗っ人を誘き出せると考えたコトもあったけど、アイツ……その強くって、あたしじゃ勝てなくって……その……だから……ぴえぇぇぇん」
それは「おかみ」の想定外の更に斜め上を行く解答だった。そしてこの場に居合わせたイシュは、イシュタルを不憫に思ったのだろう。それはアルカディア被害者としての過去の自分と、イシュタルを重ねたのかもしれない。
「アンタは「異界の神」なんだろう?いくらアイツが超人種とは言ってもアルカディアに負けるとは思えないんだが?」
「あたしだって、あたしだって……全力を出せれば負けなくってよ!でも、傍若無人な姉に武装を全て奪われたのだから、仕方なくってよ!」
さて、話しがややこしく込み合って来たのと、イシュタルが余りにも自分に都合のいいような解釈でしか話していないので、分かり易く解説といこう――
イシュタルはエレシュキガルと姉妹でありながら因縁がある。それはもう深く深く、マリアナ海溝よりも深いかもしれない。
しかし時は全てを解決するが如しで、エレシュキガルがその因縁をもう気にしていないのは、過去の発言から分かるようなモノだが、イシュタルとしてはそうもいかない。
それは姉妹で一切のコミュニケーションを図っていないのが原因だと思われるが、因縁が深過ぎたばかりに積極的に話し掛けられないのかもしれない。
だから「天上の女主人」は再び過ちを犯したのである――
エレシュキガルは「冥界の女王」であり、二人が住む世界はまるで違う。従って、「天上の女主人」が「冥界」に降りる際には「冥界」の法律である「冥界の女王」に反旗を翻せないように、全てを奪われる。
従って、全ての武装を奪われながらもイシュタルは、それでも「冥界」に忍び込み、マウントを取る為に姉の弱味を探そうとしたのだ。
その矢先、幸運な事に「箱庭」へと通ずる転移門を発見した。
斯くしてやって来た「箱庭」でイシュタルは、アルカディアと出会ってしまったのである――
アルカディアが転生者だと知ったイシュタルは、この「箱庭」には「高位高次元生命体」という生命体がいるコトを知る事になる。
そして、自分もその被害者だという事にやっと気付いたのだ。
更に遣り場のない憤りは八つ当たり的な感じで、情報をくれたアルカディアに対してケンカを売る事にした。しかもその挙句に負け、アルカディアの変態性をその身に焼き付けられたと言えるだろう。
こうなってしまった以上、イシュタルはこの「箱庭」にいるであろう姉に、恥を忍んで助けを求めるしか手立てが残されていなかった。
だから、エレシュキガルの残滓を追い求め、エレと出会った――
「じゃあなんだい?アルカディア達を攫っていないなら、アルカディアとミレイアはどこに行ったって言うのさね」
「ミレイア?それはアルカディアの傍にいたチビっ子で宜しくて?それなら、あたしに欲情したアルカディアの事を凄く睨んで恨めしそうにしていてよ?」
どうやら「おかみ」には話しの全貌が見えて来たようである。だがそうなると前epの「波乱の予感」が、コレと結び付く可能性が不明瞭になるが、(文字数制限)




