ep502 五味(Paradise World)
「場所はッ!場所はどこなのですかッ!」
それがユーベンブロイにとって一番大事な事になっていた。相手の情報やら、アルカディア達の無事やらは二の次三の次だった。
もしもセレスティア大陸内で「異界の神」同士がバトっていれば、少なからずアーレにも被害が出るだろう。そうなれば、アメリアに危害が及ぶ可能性は否定出来ない。
それはユーベンブロイが最も避けたい内容であり、忌避すべき事だ。
「場所は――」
ツクヨミが告げた場所……それを聞いたユーベンブロイの顔は、曇るどころの騒ぎではなかったのは明白である――
「いいですか?行きますよ?」
「はい、お願いします。ツクヨミ様」
斯くしてユーベンブロイとツクヨミは、「異界の神」が隠れているアーレへと一路、大至急で向かったのだった。
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その日の夜も「魔の酒場亭」の客入りは順調だった。客の目当ては当然のこと“SSSランク”である。しかしこの店は居酒屋だ。如何にイシュが“SSSランク”だろうとも、そういったサービスは行っていないし、露出が高過ぎる衣装を着ているワケでもない。
しかし店に来るオトコ共からすれば、万が一、億が一にでも口説き落とせたならば、この世の楽園に足を踏み入れると言っても過言ではない至福が待っているとも言える、千載一遇のチャンスを掴もうと必死だった。
だからこそ足繁く通い、顔だけでなく名前を覚えてもらい、あわよくば的な展開を狙っているのだろう。
因って、もしもこの場にタリアがいた場合、一躍人気者間違い無しだろうが、それはそれ。これはこれ。
……オトコって、本当にバカだと思う。だからこそ、ファンネームが「ゴミ」なのも分かるというモノだし、「ビーム」を撃ちたくなる理由も分からなくはない。
※異論は認める。そして、ビームの対象は「ゴミ」ではなく、「ロリコン」である事は最初から認めている。いや、「ロリコン」だから「ゴミ」なのか、「ゴミ」だから「ロリコン」なのか……うむ!むしろ異論を求める!!
げふんげふん。さて、これがハードボイルド系の話しであれば、カランカランと入り口に付けられた鐘の音が鳴り響く頃合いだろう。
そして、何も知らない給仕が「いらっしゃいませ〜」と声を掛け、席へと案内するのがセオリーだ。
だが、ハードボイルド的な展開を求めるのであれば、入って来た客は席に獲物がいた場合、即座に自身の得物を抜き、その命を狙うのもまたセオリーというヤツである――
※個人の感想です
――ばんッ
「いらっしゃいませ〜。お客様はおひとりさまで宜しかったですかぁ?」
「あ、あたしは「おひとりさま」じゃなくってよ!ちゃんと配偶者も子供だっているし、そんな寂しい運命なんて背負ってなくってよ!そもそも、あたしの配偶者は、イケメンって有名で、この辺りにまで名前が鳴り響いているのではなくて?」
何も言うことはない。いや、何も言えるコトかがない。もしも何か言えるコトがあるとすれば、コントじゃないんだからッ!……と、ツッコミを入れるくらいだが、そもそもツッコんだら負けのような気もする今日この頃。
「え……えっとぉ、そうしたら奥のテーブル席へどうぞ〜」
どうやら対応したディアは、悩んだ挙句にスルースキル全開で臨んだようだ。まぁ、「無敵の人」相手は下手にツッコんだり、関わったりするのがダメだと言うのが鉄則というヤツなのだろう。
だからこそ「ダンナは〜」辺りから助けを求める視線を周囲に送っていたが、それに気付く者は誰一人としていなかった――
「おかみさぁん、なんかヘンなお客さんが来ましたぁ。どうしましょうぅぅぅ」
既にお分かりだと思うが……要するに、来店客の接客をしたのはディアだったという事だ。この店の看板娘たるイシュもウルスラグも、客から頻繁に声を掛けられる手前、店にやって来たばかりの客を席へと案内する役目までは手が追いつかない。
拠って、ニッチな客層にしか人気がないディアに対して必然的に回ってくるお役目である。
ちなみに、アマテラは厨房で暴れている事がほとんどであり、「おかみ」がドリンカー兼厨房となっている。そして、ディアがいう「ヘンな客」が来た時、「おかみ」は厨房でアマテラと共に暴れている真っ最中だった。
「ヘンな客ぅ?この店に来る客なんざ、大体ヘンな客だろうさね!ほら、一番テーブルの注文上がったよ!持ってっとくれ!」
接客業とは思えない大概な暴言である。しかし、この「魔の酒場亭」の夜営業に来る客層の九割以上が男性客で、ソレらは総じて鼻の下を伸ばしながらやって来る。
まぁ、そんな欲望につけ込んでお金を稼いでいるのが現状なので、「おかみ」は絶対に客の前では言わないセリフと言える。拠ってドリンカーの時には発しない暴言でも、厨房にいる時は話は別……という話しだろうが、そもそも今の段階で重要なのはそんな事ではない。
なんで、前半パートと後半パートがこんなにも温度差があるのかという点である――




