ep497 通常兵装(Treasure Box)
【――無機着装承認確認 ――ベース素体、魔力製素体・ユーベンブロイ ――強化機体、グランドデストロイヤー ――グランドデストロイヤー、換装形態。各種パーツパージ、オールクリア】
周囲には無数の「空獣」がいる。以前は飛竜種の巨大な群れだけが見られたが、一度燼滅させられたコトで、飛竜種以外の種も縄張りを主張し始めたのだろう。
年月が齎す多様性とは、新たな生態系の繁栄を誘引するだけではなく、頂点捕食者の存在まで書き換える要素を持っているのかもしれない。
拠って、飛獣種を始め、飛獣亜種、はたまた翼竜種など、様々な「空獣」達が日夜覇を競っていると言っても過言ではない環境なのだ。それはまさに「空獣の宝石箱やぁ〜」……などと、言っている場合ではない。ごほごほ。
従ってそんな中に単騎で乗り込んだランデスは、早々に人型を解除すると自身の魂をグランドデストロイヤーから分離。そのままの流れで魔力製素体へと魂を定着させた。
その間、放置される事になったグランドデストロイヤーに対して「空獣」が群がっていたが、以前ディアが話していたようにグランドデストロイヤーの外装が傷付くことはなかった――
【魔力製素体・ユーベンブロイ換装完了―― 未承認兵装ニツキ、少々オ待チ下サイ。 ――解析完了。兵装名、ユーベントロイヤー。兵装、「上弦の月弓」、「下弦の月讀」。極大兵装、「極大火力魔力式レールガン」――】
グランドデストロイヤーを兵装として纏ったユーベンブロイの兵装だが、これは偏にツクヨミの加護の影響が大きい。そもそもグランドデストロイヤーは自動車であって兵器ではない。だからこそ本来は兵装足り得ない。
だが、その中に眠る膨大な魔力を撃ち出す事を主たる目的としている為、兵装足り得るだけだ。従って通常兵装としての性質は全て、ユーベンブロイが与えられた加護由来のモノである。
しかしその一方で、グランドデストロイヤーとホムンクルスの親和性が高いからこそ、兵装として換装されるグランドデストロイヤー以外の、ユーベンブロイ由来の加護を、通常兵装に持って来る辺り、トンデモ設定と言わざるを得ない。
要するに「ご都合権現」の権能がいい仕事をしたとしか言いようがない――
※換装合体の最中に「空獣」が空気を読まずに襲って来てはいるが、その点は敢えて無視して話しを進めている
ちなみに、魔力製素体の身体にバラバラになったグランドデストロイヤーのパーツが取り憑いているようなその姿は、まるでどこぞのロボット生命体を彷彿とさせる。
トランスフォーメーション的な“棍棒”と“ボルゾイ”を足して二で割ったような名前というか、「最良で主要な」みたいな「名詞はどこ?」みたいな横文字名前のキャラのようでもある。
ま……まぁ、喩えが悪かった可能性は否めない――
「コレがボク?それじゃあ、性能試験……と、行きますかッ!」
“ユーベントロイヤー”となった一人の生命体に対し、周囲に蔓延る数百の「空獣」。
「空獣」は「空獣」で、自分達の縄張りを犯した闖入者に対して、日頃の領域を巡る狂騒関係度外視で向かっていく。
「先ずは上弦の月弓、下弦の月讀出ませいッ!」
ユーベントロイヤーの声に応じ、シュルシュルと音を立てながらその手に現れたのは、曲刀の「上弦」と、直刀の「下弦」。以前ロプトの攻撃を受けた時の刃と比べると、「上弦」こそ似ているが別物のようである。
そして二振りの剣を手にユーベントロイヤーは斬り結んでいく。
「やはり良いですね。生前から今に至るまで“剣術”は習って来ませんでしたが、剣が動き方を教えてくれているようです。 ――ッ?!」
――ぼわぁッ
目の前の飛獣種を曲刀で撫で斬り、飛獣亜種を直刀で突き刺す。流れるような動きで「空獣」達を屠っていくユーベントロイヤーの動きは急に止まった。
それは“吐息”が吐かれたからであり、ソレは斬り裂かれたモノ達を炭へと変えていく。
どうやらここには、「共に戦う仲間」という概念が存在していないようだ――
「遠距離からの吐息ですか。厄介ですね。 ――ッ!?なるほど!二振りの剣にそのような使い方が!」
剣術の知識が無いと話していたユーベントロイヤーに“剣”からその知識が流れ込んでくる。不思議な感覚だが、彼がそれに猜疑心を抱く事はない。
そして二振りの剣が教えてくれた事は、新たな使用法だった――
――カシュン
「望月の月人」
それは幾重にも風斬り音を掻き鳴らして飛来し、今も遠距離からタイミングを見計らっている姑息な「獣」に対して奇襲を掛ける“魔力矢”だった。
そう、二振りの剣を合体させたユーベントロイヤーのその手には、一張りの和弓が握られていたのである。しかしその和弓には弦がない。だが弦があるハズの場所には確かに指に応じる“何か”があり、弾けば矢が放たれていく。
更には“両剣”として振るえば至近距離の敵をも薙ぎ払う事が出来る。これは即ち、全距離対応型の武器と言えるだろう――




