ep495 かしまし(Respect Ui)
「おかみさん大変ですッ!大変です大変です!大変なんですーーーーーッ!」
「まったく朝から喧しい娘だねぇ。一体全体どうしたって言うんだい?ランデスが家出でもしたっていうのかい?」
最近のディアの登場シーンはいつも姦しい気がする。女が三人で「姦しい」ハズなのに、ディア一人でこの騒ぎならディアが三人集まったら、どうなってしまうのだろう。いや、それは怖い。
まぁ、ディアはこんなキャラではなかったハズなのだが……。
さて、突然のディアの喧騒から始まった朝の光景だが、「おかみ」のボケは少し前なら通用しないボケなので、その時ならボケとして有用であったコトだろう。
ただし、ランデスが人型を取れるようになってしまった今となっては、完全なるボケには該当しないと言える。
いや、そんな事はどうでもいい。どうでもよいが過ぎる。
「――ッ?! お、おかみ……さん?なんで分かったんですかぁ?!超能力ですか?エスパーなんですか?「ろりこんさん」っていう人間さん達を浄化する事が出来る「しぐれびぃむ」っていうのを撃てるんですかッ?!」
ディアの発言には意図的なナニカを感じなくはないが、それはそれ。これはこれ。だから、くれぐれも、「こんロリ〜」とか、「助かる〜ゥ」とか「ママ」などと言ってはいけないだろう。
流石にそればっかりは、こちらとしても保証出来ないが、「刑務所ファンミーティング」なるモノに出たいなら……いや、なんでもない。げふんげふん。
「(へぇ漢を見せたねぇ)ランデスは、クルマなんだから倉庫区画にいたりはしないのかい?」
「わたしが起きたら手紙が置いてあったんですぅ。深さ……じゃなかった、探さないで下さい的な内容でしたぁ!ぴえん」
先ず、ディアの高度が過ぎるボケは放っておくとしよう。
しかし一方で、その言葉に「おかみ」は非常に悩ましかった。
あの時、ランデスは言葉を濁していた。だからこそ、手立てがあるのを「おかみ」は感じ取らなかったワケではない。拠って、ランデス一人に全てを押し付けてしまう形になった……が、その事を悩ましく思っているワケではない。
少なからず、この度の一件に関しては「異界の神」が絡んでいる可能性が非常に高い。そして、「魔の酒場亭」の全戦力を以ってしても勝てる見込みは限りなく低い。そうなるともしも何かあった時に援軍を出す意味もないと言える。だからこそ、戦力不足に悩んでいる……というワケでもない。
ディアは乗務員だ。それはランデスというクルマがあればこそ。逆にランデスが失くなってしまった時に、人力車を引いて観光案内をする事も、獣車の御者を務める事も、況してや新たな召喚獣を喚び出す事も叶わない。
その事が「おかみ」を非常に悩ませていた。要するにがめつい「おかみ」故に、「魔の酒場亭」の半分以上の収益が失われる事を危惧したのである。
「それじゃあ、ランデスの行方は探しておくさね。だから、アンタはいつでも出られるように準備をしておきな。ただ――」
「ただ?」
ランデスを「おかみ」が探すと話した事からディアの表情は明るさを取り戻したかに見えたが、その次の一言で見事にフリーズしたのだった。
「アンタはこの店の従業員なんだ。仕事をしないヤツに賃金は払えないんだから、アンタは今夜から夜営業の給仕として店に立ちな」
「ふえぇぇ。分かりましたぁ……」
ディア狙いの客層はニッチでコアなマイノリティである。これは偏に今までのディアの塩対応が原因なのだが、基本的に給仕として店に立つ事もないので、本当にマイノリティが過ぎるのだ。
しかし「おかみ」は、そんなマイノリティ層からも踏んだk……いや、そうではなく、貢がせ少しでも収益を上げようと画策したのだろう。
※「魔の酒場亭」はキャバクラではありません。夜は健全な「居酒屋」です
斯くして、非専任から専任給仕ディア爆誕の瞬間であった――
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「それで、別れは済ませて来たのですか?」
「はい。面と向かって直接話そうモンなら、アメリアに全力全開で止められそうなので、手紙を書いて来ました」
この予想は正しい。だが、ランデスが認めた手紙は、ランデスの猛る想いを書いたラブレターのような内容だったにも拘わらず、「深さないで〜」みたいなボケに使われてしまった辺り、報われない。
まぁ、これは偏に恋だの愛だのを理解していないディアだからこそ、意味を為し得なかったと言っても過言ではないだろう。
「それで、ボクは勝てますか?」
ランデスは無い物ねだりをする子供ではない。故に、ツクヨミから的確なアドバイスを貰いたかったのだろう。
しかしその一方で、「第四の天才」の思考回路では、その答えを見出せなかったのも事実である。
「貴方は無機天使種の技を使えるのでしょう?あの、魔法に片足を突っ込んだ魔術であれば、不可能ではないと考えますが?」
ツクヨミが出したアドバイスを聞いたランデスの表情は、にわかに強張っていったのだった――




