ep490 イイ感じ(Bad face)
「にわかには信じられない話しだねぇ……。だがあの時、アンタと一緒にいたヒト種の女、確かにあの娘からは、尋常ならざる力を感じたのは事実さね」
結局のところランデスは、これ以上黙っているのが不可能と判断し、自身がディアの息子のユーベンブロイだという事も含めて包み隠さず「おかみ」に話す事にした。
だが、「ユーベンブロイである事を、ディアには話さないで欲しい」との口止めだけは念入りにしていた。
その一方で、自分が「カデノコウジ タカミヤ」だったという転生元の情報は控えている。
※「おかみ」はユーベンブロイが転生者であるとは知っているが、それは「ディアフィルター」経由の情報であり信憑性を疑っている
「だが……アンタとあのヒト種の娘があの時、未来の世界線から来たって言うのを信じられると思うのかい?」
「それを証明する術はありません。もう既にあれから数年経ってるワケですし。ボクが知っていた未来のその先の現在ですから。でも歴史が改竄された事で、起こらなかった事象について朧気ながら覚えている事もあります」
「それが、アルカディアの“ドローン”ってヤツなのかい?」
コクッ――
カレラは過去を変えた事で未来に於いて起こらない事象は、ランデスの記憶より失われる……と、謳っていた気がするのだが、これもまた偏に「ご都合権現」の権能がイイ感じに働いた結果かもしれない。
「それで、その“ドローン”ってのを使って、アルカディアはディアを襲おうとしてたっていうのかい?」
「ドローンは専ら偵察……情報を得たりする事に使われる事が多いです。攻撃手段をコレが持ってる可能性は否めませんが……」
ランデスはアルカディアの“変態性”を熟知している。だがそれは、メルボランチア探訪を経て磨きに磨き抜かれた“変態性”だとも考えていた。だからこそ、エンキ=エアから始まる「異界の神」からの侵略が起こっていないこの世界線では、アルカディアの“変態性”は磨かれていない可能性がある。
更に都合の悪い事に、その侵略が起きなかった以上、アルカディアと「魔の酒場亭」との関わりは「イシュの苦難」と呼ばれる一ヶ月以外にほぼほぼ無い。
※「〜ディアプレゼンツ〜・異世界見学ツアー」イベントは発生している。依ってアルカディアは「専用装備」である「ツンデレチャーム」を保有している
ギルドであればエレを始めとしてディアとエンリも絡んではいるが、そもそも「全女の敵」と評されるド変態に対して、積極的に関わろうとする強者は、どこかの養殖系天然娘以外にはいない。
しかしそれも、仕事であれば……との条件が付くというモノだ。
※養殖系天然娘以外でアルカディアに対して嫌悪感を抱かない者は、こちらの世界線ではミレイアしかいない。要するに傲慢且つ傍若無人なエンリですら、アルカディアの事を毛嫌いしている事になる
「アルカディアは「超人種」の肉体を持つ転生者だったねぇ……以前、ディアと一緒に「箱庭」を回って、理解を得られたと思っていたが……。はぁ……「魔の酒場亭」と敵対する気にでもなったのかねぇ。厄介な相手だよホントに……」
「アルカディアが何を考えているのか、ボクもそれは分かりません。ただ、ディアの寝室にドローンが侵入して来た事でボクはこの姿になったんです」
ランデスはディアの身に危険が迫った時に備えていた。故に人型へと変貌を遂げたという事になる。
従ってディアとしては、「寝耳に水」状態だった事は間違いが無いが、日頃よりランデスの声を聞いていたからこそ、人型のランデスをランデスだと認識出来たという結論にもなるだろう――
「まぁ、大体の事情は分かったさね。それじゃあ、こちらから、遠回しにギルドに調査を送ってみるさ。 ――それで、あたしゃ聞きたいんだが、アンタはまた走れるのかい?」
「えぇ。それは可能です。ディアの魔力を消費しますが、自動車の姿に変身する事は容易ですから」
「おかみ」の懸念事項は、この「魔の酒場亭」の収益の半分を稼いでいる大口ハイヤード契約が、失われるコトだったと言っても過言ではない。だからこそランデスに確認したのだろう。
※現状でウラノからハイヤード契約が齎される事は無い。それは「テラ・アルバフォーミング」が順調にいってるからだ。しかし、ランデスにご執心のヘスティは、事あるごとに「魔の酒場亭」にやって来ては散財してくれている。要するに“太客”というヤツである
「それなら問題ないさね」……と、「おかみ」は応じていたが、ヘスティに対して人型のランデスをお披露目した時、どうなってしまうのかという事に対して、並々ならぬ好奇心を感じた反面、ヘスティがランデスに対する興味を失い“太客”ではなくなってしまう可能性も垣間見えた事で、非常に頭を悩ませる事になった……と、いうのはそれはそれ。これはこれ……だが、その「おかみ」の表情は、口角を上げ、悪っるい顔をしていたと、付け加えておこう――




