ep46 想い(Conversation text)
「なぁ……ディア……少し話しがあるんだがいいかい?」
「とうしたんですか、おかみさん?急に改まって?」
「いや、少し聞きたくなったからさ……。アンタは……この町が好きかい?」
「どうなんでしょ?わたしは「好き」とか分からないんですよねぇ……」
「じゃあ、聞き方を変えるとするよ。アンタはこの町にずっといたいかい?」
「それでしたら、モチロン!」
「この町が無くなったらイヤかい?」
「そんな事を考えると悲しくなります。初めてのお友達も出来たばっかなんですから!」
「……近々この町は滅ぶかもしれない。だがアンタは前以って逃げる事が出来る。この町に留まる理由が無いなら、その方がアンタの為かもしれないよ?」
「えっ……?この町……無くなっちゃうんですか?何でですか?この町に住んでる人間さんは……、おかみさんやエレさんはどうなるんですかッ!」
「そうならないようにする為に、エレと二人で戦うつもりさね。でも、エレだって勝てないと分かっていて死にに行く程、バカな娘じゃない。エレは戦いに来ないかもしれない。そうしたら一人でも迎え撃つつもりさね」
「おかみさん一人で?エレさんと二人で?それなら……それならッ、わたしも戦います!おかみさんはさっき言いました。初めて出来た友達を大事にしろって!だったら、わたしも戦いますッ!この町が無くなるのは絶対にイヤですからッ!」
「死ぬかもしれないよ?アンタとランデスなら、他の町に行っても、仕事のしようはいくらでもある。でもこの町に残って死んだら終わりなんだよ?それでも、この町の為に戦ってくれるって言うのかい?」
「はいッ!!」
「そうか……アンタもバカな娘だねぇ……」
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「こんのぉ、バカ飼い主!!一体いつまでほっつき歩いてんのさッ!あたしはとっとと幾つもの国を滅ぼして来たってのに、バカ飼い主は何をしてたんさ!」
「やぁ、飼い犬。それは偉かったね。褒めてあげるよ、よしよし」
「わ……分かればいいのよ、分かれば。――で、ソレは何?バカ飼い主の新たな性癖?全裸の女を侍らせる趣味なんかあったの?そっち系の趣味なら、あたしは断るからね。止めはしないけど、あたしは絶対に誘わないで!」
「あぁ?あぁ、コイツはニゴウ。さぁニゴウ、ちゃんとイシュに挨拶をしなよ。キミのセンパイ飼い犬なんだからさ」
「あたしはイシュだッ!イチゴウだなんて変な呼び方をすんな!このバカ飼い主ッ!!」
「イチゴウセンパイ。妾はニゴウでありんす。エン様の忠実な下僕でありんすぇ。よろしゅうたのんますぇ」
「エン……コレ……アンタの権能?あたし……コイツ気持ちが悪いんだけど?――キッ。……アンタはこうやって下僕を、これから仕込んでいくつもり?それなら、あたしは今後の事を考え直すけど?」
「ヤだなぁ、イシュ。全てはキミのせいじゃないか」
「なっ?!あたしのせい?ふざけんなッ!あたしが一体何をしたってのさ!」
「ほら、そういうトコ。キミが飼い主たるワタシに対して常に噛み付こうとするから、怖い思いをしなくても済むように調教する手段を考えた結果さ。いい考えでしょ?我ながらグッドアイディ〜ア〜!!」
「エン様、素敵ありんす。わんわんッ!へっへっへ」
「ニゴウだっけ……アンタ……全裸でそんなコトして、恥ずかしげもないワケ?……で、バカ飼い主は、あたしにもこうさせたい……と?」
「もし素の状態でやってくれるなら、本格的な調教はちょっとだけ考え直してあげるよ?調教し過ぎて羞恥心も何も失くなったら、嗜虐心を唆られないしね。羞恥で圧し潰されそうなイシュの顔を見てみたいからさぁ!どう?やる?やってくれる?」
「……。そうか……。ならアンタとの契約は「返上」させてもらうしかないね」
「それは「認めない」って言ったら?」
「アンタの依り代をブッ壊してオサラバするだけに決まってんだろがいッ!!」
「ニゴウ、やりな」
――シュバンッ
「う……そ……そんな……あたしがこんなワケも分からないヤツに……な……ぜ?」
「なぁに、簡単なコトさ。キミの権能は「金」。ニゴウの権能は「陽」。エレちゃんの「冥」ならニゴウには効くけど、キミの力は効かない。まぁ、キミの権能はワタシの「風」になら届いたかもしれないけどね」
「フザケ……んな。それじゃ、あたし対策で……拾ってきたって……言うのか……よ」
「おバカな飼い犬にしては、大正解!!ぱちぱちぱちぱちッ」
――パチパチパチ
「じゃあ……今からその反抗的な目が出来ないようにしてあげるよ……イシュ。そうだ!これは忠告。早めに従属しないと、キミの今ある権能は全て壊れちゃうし、高位高次元生命体としての自我も破壊されちゃうから、無駄な抵抗は諦めるコトを推奨しとくよ。――それじゃ……畏怖の光輝・その意のままに――」




