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メタバースマルチバース 〜ユニバースディ〜  作者: 硝酸塩硫化水素
神々の遊び

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ep45 友人(Kanzen-ni Kuuki-ga Yomenai-onna Dear-toujou)

――ギィッ


「おや?エレかい?まだディアは帰って来てないが……特に異常は無かったかい?」


「おかみさん……アタシじゃ勝てない……アイツには……エンリには……絶対に……」


「――ッ!?何があったって言うんだい?」



――戦う気が失せたならいいよ。見逃してあげる。今日は()()()様子見だけのつもりだったし。ほら行くよ、ニゴウ――


 エレはエンから呆れ顔で見逃され、無事に「魔の酒場亭」に戻る事が出来たが、精神的にはズタボロだった……。拠ってエレは、エンに対する完全な敗北感で打ちひしがれていたと言えるのだろう。


「そうかい……遂にアイツがここ(アーレ)に乗り込んで来たってのかい……」


「おかみさん、アタシらはアイツらに勝てるのか?」


「エンリはもう一人のコトを「二号」と呼んだって言ったね?それなら向こうには、あと一人いる事になる。そうなると二対三……正直勝てる見込みは……全てが理想的に運んだ上で良くて五分五分……ってところかねぇ……」


「おかみさんは、アイツ(エンリ)に勝てるのか?」


「全力で戦って勝てるかどうか……まぁ、そんな事になればその前に、惑星(世界)がブッ壊れるだろうけどねぇ」


 それはエレの想定通りの解答だった。だがそれが却って、生半可な期待を持たせられるよりはマシ……程度には気持ちを切り替える事が出来たと言える。


「逃げたいなら、逃げてもいいんだよ?アンタ(エレ)アイツ(エンリ)と因縁があるワケじゃあないし、アンタには追い掛けてる相手がいるんだろぅ?」


「そんなコト……いや、少し一人にさせて欲しいんだけど……い」


――ばんッ

「おかみさんッ!ただいま戻りましたあぁぁぁッ!聞いて下さい聞いて下さい聞いて下さーーーいッ!!あ……れ?エレさん、どうしたんですかぁ?顔色悪いですよ?お腹痛いんですか?体調不良ですか?体調管理は自己責任ですよ、えっへん」


 K(完全に)K(空気が)Y(読めない女)D(ディア登場)の瞬間だった。そんなディアにエレはいつもの不機嫌な顔から表情を一変させ、()()()()()を浮かべ、ディアを凍り付かせてから「魔の酒場亭」を後にした。

 その足取りは非常にゆったりとしたモノだった……。


――ガクガクブルブルガクブルル

「おおお、おかみさん、エエエ、エレさん、どどど、どうしたんですか?情緒不安定ですか?女の子の日ですか?」


「エレの身体はもうウン百歳……とっくに……いや、そうじゃない……。で、エレの事はいいから、アンタは何を聞いて欲しいんだい?そんな事より先ず、何も()()()()()()()だろうねぇ?」


「ヤだなぁ、おかみさん!わたしは出来るコですよ、えっへん。()()()()()()()……あ……あっと、えへへ。ちょっとした事はありましたけど、オールオッケーモーマンタイです!」


「はぁ……。それで、何を聞いて欲しいんだい?」


「何でしたっけ?わたし、何か言いましたっけ?」


 「おかみ」は呆れていた。ディアが何かを()()()()のはいつものコトだが、恐らくクレームに繋がるような事は無かったのだろう。それはそれで安心していた。

 ……が、ディアのボケに今はツッコミを入れる気力も、コケる気概にもなれなかったと言える。なので、「じゃあ、()()()()()()()()()()()()?」と冷たく呆れた口調で言ったところ、いつもとは違う「おかみ」の言い方にディアは戸惑った様子で、「わたし、友達が出来ましたぁ!!」と返すに留まっていた。


「友達?一体誰だい?」


「今日乗せたお客さんで、人間さんのセリアリテさんですッ!わたしに初めてお友達が出来ましたッ!」


「何をどうやって客と友達になったのかは知らないが、アンタがそれで良かったのなら、おめでとさん。初めての友達を大事にするんだよ」


 「人間ではないディアに人間の友達が出来た」それは、「おかみ」にとっては喜ばしい事ではあった。ディアはそもそも価値観が、人間とかなりズレている。だから誰に対しても適度な壁を構築し、その内側から歩み寄ろうとはしない様子だった。

 「魔の酒場亭」の二人にはそれなりに歩み寄っている感じはあるが、客や町ですれ違う他人は会った事があっても会話した事があっても、()()()()()()()。自ら歩み寄ろうとはしないし、歩み寄られたら壁を突き付けて弾き返す……くらいの感じがしていた。

 故に()()()()()成長とも言える、ディアの心境の変化を喜ぶべきだったのだろう。

 ……だが、「おかみ」にとってはエレから齎されたエンリの情報で頭が一杯になっており、ディアの成長に対して素直に喜べなかったのである。

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