ep44 首輪(Slutty goddess)
「やっと追い詰めたぜ……今度は絶対に逃がさねぇ」
「まぁ、怖いでありんすねぇ。そんなに鬼の形相では、オトコにモテませんぇ?」
エレは全裸で逃げ惑う怪しげな女を、やっとの思いで裏路地の壁際に追い詰める事に成功した。
しかし女は追い詰められても尚、悠々とした態度でエレを挑発している。この状況にエレは少しばかり違和感を憶えていた……。
「(そういえば、コイツ……狙いは何だ?まさか、初めからアタシをここに誘うつもりだったのか?)うっさいわ!オトコなんざアタシには要らねぇんだよ」
「それはそれは……。そんなにオトコが好きそうな、いいカラダ付きをしてるのに、ちょ〜ッと勿体無いんじゃない?少しは快楽に溺れてみるのもいいモンだよ?それに……」
――ッ?!
「(いつの間に……このアタシが気付けなかった……だと。一体コイツ何者だ?)オマエ達、どこの高位高次元生命体だッ!」
エレは突如として現れた二人目……エンの存在には流石に驚いていた。怪しげな女の力量は、エレからしたらそんなに強くは感じられたなかったが、エンの内在する魔力は、「おかみ」と大差ないように感じられた。故にその存在が高位高次元生命体である事は直ぐに分かった。
そしてエレの背後から現れたエンは、悠々とその横を通り過ぎ、怪しげな女の横に立つ。その間、エレは言葉を発して威嚇は出来ても動く事は何一つとして出来なかった……。
「キミがティアの所のおもちゃだよね?」
「――ッ!?その名前を?……そうか前におかみさんから聞いた事がある……オマエがエンリ・ルールブレイカー……か」
「今日はキミへの挨拶と、ディアちゃんとやらの様子見がてら寄っただけさ。相手がして欲しいなら、ワタシじゃなくてコイツ。ニゴウに相手をさせるけど……こんな所で殺り合いたいかい?」
エレは背中に流れる一筋の冷や汗を感じていた。そして、額には大量の脂汗。その表情は曇っている。ニゴウがエンリより弱かろうと相手は高位高次元生命体。町の外に広がる平原ならいざ知らず、こんな町中で戦えば自分は無事でも、アーレの城下町そのものが消えてなくなる恐れがあって、それは「無事」とは言わない。そこにエンリまで参戦されれば、自分もアーレの城下町と心中する事になるのは明白だった。
「エン様……妾はニゴウではないでありんすぇ?妾はアマテラ。アマテラ・スカイウォーカーでありんすぇ……」
「キミ……ワタシに口答えする気?その廓詞のキャラ設定以外にも、色々と追加して調教しないとダメみたいだね?キミは飼い犬二号。だからアマテラなんて大層な名前は没収。たった今からニゴウだ!いいね、ニゴウ!」
「わ……わんッ!妾はニゴウでありんす。エン様の忠実な飼い犬ニゴウでありんす。へっへっへっへっ、わんッ」
エンがアマテラ改めニゴウに命令した瞬間、ニゴウの首元で怪しげに光る首輪と、そこから垂れ下がる鎖がエレの瞳には映っていた。そして、エレは首輪と鎖がエンの権能であると理解したのである。
「(これはだいぶマズい……。高位高次元生命体を支配する事が出来る権能なんて……流石に反則だろ。それにアタシは絶対にあんな姿になりたくない)エンリ・ルールブレイカー……分かった。……今日は様子見なんだろ?アタシはこれ以上、今日はアンタらには関わらない。だからそっちも退いてくれないか?」
命令が飛ばされたニゴウは恥ずかしむ事も惜しむ事もなく、盛大に股を開き犬が行う「ちんちん」の芸と同じ事をしていた。そしてその口からはヨダレを垂らし、媚びるような瞳をエンに向けている。
尚、ニゴウが全裸だった事は忘れていた方が良いと思われるが、それはそれ。これはこれ。
その姿を見たエレは流石に引いた。しかしアレがそこまで強い強制権を持つ権能なら、囚われれば否が応でも自分があの姿になる可能性がある。それだけは絶対にあってはいけない。人間としても高位高次元生命体としても尊厳を失い、恥辱に塗れた姿を自分から晒すような事は自分の信条に反する。
故に、戦わない方向で調整しようと全振りしたのである。




